
化管法対象物質の見直し
対象物質の大幅変更
情報発信日:2008-05-22
化管法対象物質の見直し
厚生労働省、経済産業省、環境省の3省は合同で化管法(化学物質排出把握管理促進法)の対象物質の見直しを進めてきましたが、2008年4月28日までにこれまでの検討結果を報告案としてまとめて公表しました。
今回の見直しにあたっては、現状では化管法対象外である物質(約3,000物質)も候補物質として検討を行い、最新の各種情報やGHS(化学品分類・表示世界調和システム)との対応、PRTR制度施行により、現在までに得られたデータなどから対象物質の追加・削除などの対象物質見直しを行いました。
見直しを行った結果、現状で化管法の対象となっている物質は435物質ですが、新規に130物質を追加し、565物質が対象物質候補としてリストアップされました。
対象物質の内訳
化管法による対象物質は、想定される毒性の強さにより「第一種指定化学物質」「第二種指定化学物質」に分類され、第一種指定化学物質のなかでも発癌性、生殖毒性、変異原生がとくに強い物質を「特定第一種指定化学物質」として区分しています。今回は、新規に対象物質を追加したほかに、従来対象だった物質を「最新の有害性情報が対象物質選定基準に合致しない」などの理由により対象から除外する処置もとられ、詳細は以下のとおり。
※化審法で「第一種特定化学物質」「第二種特定化学物質」など類似用語を使用しているが混同しないように注意が必要。
新規に化管法対象となった物質
今回、下記の各種法令や各調査結果から選定した候補物質(約3,000)のうち、有害性や暴露情報が化管法の現行の物質選定基準に合致するものとして222物質が新規に追加されましたが、対象となった理由は以下のとおりです。
- 有害性の観点から現行基準に合致すると考えられる物質(環境省調査結果等)
- 化審法の「特定化学物質・監視化学物質」
- 監視化学物質・毒劇物取締法対象物質
- 労働安全衛生法(通知対象物質)
- ロッテルダム条約(PIC)対象物質
- 農薬取締法登録農薬
- 自治体条例対象物質
- 諸外国によるPRTR対象物質
- 現行化管法対象物質の代替物質(環境省調査結果)
- 内分泌かく乱作用を有することが推察される物質
特定第一種指定化学物質
今回対象から除外候補になった物質
今回新規に対象候補となった物質
- 1, 3ブタジエン
合成ゴム(SBR、NBR、BR、CR等)、樹脂(ABS樹脂、MBS樹脂)等の原料、ゴム、樹脂に残留することはないが発癌性が疑われている
- ホルムアルデヒド
フェノール樹脂、尿素樹脂などの原料、接着剤、塗料、防腐剤など建材に広く使用。発癌性を含め、急性、亜急性毒性があり、シックハウスの原因物質でもある
- 鉛化合物
鉛は金属鉛と使用される一方、種々の物質と化合物を形成し、アンチノック剤、顔料、塗料、爆薬など広く使用。神経系に対する毒性がある
- 2-ブロモプロパン
別名「臭化イソプロピル」。フロン代替有機溶剤として半導体製造用部品の洗浄などに多く使用。生殖毒性、神経毒性がある
従来からの継続
- 石綿
別名「アスベスト」。断熱材として建材などで広く使用されてきたが、吸入により中皮腫など発癌性あり
- エチレンオキシド
酸化エチレンとも言う。エチレングリコール、エタノールアミン、アクリロニトリルなどの有機合成原料、界面活性剤、殺虫剤、殺菌剤、顔料、滅菌ガスなど用途は広範。発癌性、催奇形性、急性毒性、麻酔性、可燃性がある
- カドミウム及びその化合物
顔料、塗料、蓄電池(ニッカド)電極、メッキ材、潤滑剤など、鉛と同様に広範な用途で使用。毒性は骨や関節に蓄積し、イタイイタイ病を発症。他に発癌性、肺気腫、腎障害など
- 六価クロム化合物
クロムは天然には三価の形で存在し、六価クロムは不安定な物質で有機物と接触すると安定な三価クロムになる。通常、六価クロムは三酸化クロムや二クロム酸カリウム、クロム酸カリウムなどがある。用途はメッキ材、顔料、塗料などで使用。発癌性のほか肝機能障害、皮膚炎、潰瘍など
- 塩化ビニル
塩化ビニル樹脂(PVC)の原料。発癌性物質、肝血管腫の原因物質
- ダイオキシン類
ポリ塩化ジベンソパラジオキシン(PCDD)やポリ塩化ビフェニル(PCDF)などの総称。塩素を含む塩化ビニル樹脂などを低温焼却すると発生する2, 3, 7, 8-テトラ-ジオキシン(TCDD)は発癌性、生殖毒性、免疫毒性があるといわれている
- ニッケル化合物
ガラスや陶器の着色材、電池電極、メッキ材、アルマイト着色剤、触媒、顔料など用途は広い。化合物の形態により発癌性の評価は異なるが国際ガン研究機関(IARC)では、ニッケル化合物を一つのグループとしてヒトに対する発癌性があるとしている
- 砒素及びその無機化合物
砒素及び無機化合物は、半導体、合金添加物、防腐剤、殺虫剤、触媒、農薬、殺鼠剤、顔料、染料、触媒など広範に利用。急性毒性が有名。ほかに肺や皮膚癌の原因物質の恐れがあるとされている
- ベリリウム及びその化合物
主な用途は合金や材料の添加剤として、半導体、セラミック、航空機、などの構造材料。人体への影響は接触性皮膚炎、皮膚潰瘍、気管支炎、急性肺炎など。またIARCにて発癌性も指摘
- ベンジリジン=トリクロリド
用途は医薬品、紫外線吸収剤、農薬、染料など。急性毒性のほか、発癌性、生殖毒性、長期反復暴露により肝臓、腎臓、甲状腺、呼吸器などに障害
- ベンゼン
染料、合成ゴム、合成洗剤、有機顔料、医薬品、香料、合成繊維、農薬、食品添加物など幅広い物質の合成原料として使用。ヒトへの影響は発癌性の他、リンパ腫、多発性骨髄腫、白血病など
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