日本の化学物質規制法
化審法、新たに3物質を「第1種監視化学物質」に指定
情報発信日:2007-04-06
化審法"化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律"とは
EUで新しい化学物質規制法であるREACH規則が2007年6月1日に施行されますが、わが国における化学物質規制法である化審法について述べてみたいと思います。
化審法はPCB問題を契機に昭和48年に制定され、新規化学物質の審査制度を設けるとともにPCBのような難分解性で、且つ、生物の体内に蓄積しやすく人体の健康を損なう恐れのある物質を、特定化学物質として規制するものとしてスタートしました。
過去2度の改正(昭和61年と平成15年)が行われ、体内に蓄積しないが長期毒性を有する化学物質や、動植物への影響、自然環境へ放出することにより影響を与える物質などを、特定化学物質や監視化学物質として指定し規制を行うことにしました。
化審法の目的
化審法の目的は、自然において分解し難く(難分解性)、且つ、人の健康を損なう恐れがある、または、動植物の生息や生育に支障を及ぼす可能性のある化学物質による環境汚染を防止することにあり、新規の化学物質を製造または輸入する場合には、事前にその物質の性状(分解性、蓄積性、人への毒性、生態への毒性など)を審査し、その性状に応じて製造・輸入・使用について必要な制限を行うもので、性状により規制の強さを6つに区分しています。
化審法の対象物質
化審法による規制
第1種特定化学物質
- 【定義】難分解性及び高蓄積性の性状を有し、且つ、人または高次捕食動物への長期毒性(継続的に摂取される場合には、人の健康または高次補食動物の生息・生育に支障を及ぼす恐れ)を有する化学物質で、PCB、DDT等が指定されている。なお、現在指定されているものはすべて、人への長期毒性の観点から指定されたものである。
- 【規制内容】製造及び輸入の許可制(事実上禁止)、特定の用途以外での使用の禁止、政令で指定した製品の輸入禁止、必要な場合の事業者に対する回収命令 等
第2種特定化学物質
- 【定義】難分解性の性状を有し、人または生活環境動植物への長期毒性を有し、相当広範な地域の環境において相当程度残留し、または、近くその状況に至ることが確実であると見込まれることにより、人の健康または生活環境動植物の生息もしくは生育に係るリスクがあると認められる化学物質。トリクロロエチレン等が指定されている。なお、現在指定されているものはすべて、人の健康へのリスクの観点から指定されたものである。
- 【規制内容】製造・輸入予定数量及び実績の届出義務、必要に応じて製造・輸入予定数量の変更命令、取扱いに係る技術上の指針の策定・勧告、表示の義務、取扱いに関する指導・助言 等
第1種監視化学物質
- 【定義】難分解性及び高蓄積性の性状を有する既存化学物質*で、第1種特定化学物質に該当するかどうか明らかでないもの。
*既存化学物質=昭和48年に化審法が公布された際に、現に業として製造または輸入されていた化学物質。約2万種、5万物質が「既存化学物質名簿」に収載されている。
- 【規制内容】製造・輸入実績数量の届出の義務、合計1t以上の化学物質については、物質名と製造・輸入実績数量を国が公表、取扱いに関する指導・助言。当該化学物質により環境の汚染が生じる恐れがあると見込まれる場合には、有害性調査の指示
第2種監視化学物質
- 【定義】高蓄積性ではないが、難分解性で、人への長期毒性の疑いを有する化学物質。クロロホルム等が指定されている。
- 【規制内容】製造・輸入実績数量の届出の義務、合計100t以上の化学物質については、物質名と製造・輸入実績数量を国が公表、取扱いに関する指導・助言。当該化学物質により環境が汚染され、人の健康へのリスクがあると見込まれる場合には、有害性調査の指示
第3種監視化学物質
- 【定義】高蓄積性ではないが、難分解性であり、生態毒性(動植物の生息または生育に支障を及ぼす恐れ)を有する化学物質。
- 【規制内容】製造・輸入実績数量の届出の義務、合計100t以上の化学物質については、物質名と製造・輸入実績数量を国が公表、取扱いに関する指導・助言。当該化学物質により環境が汚染され、生活環境動植物の生息または生育に係るリスクがあると見込まれる場合には、有害性調査の指示
新規化学物質に対する審査・判定など
- わが国で新規化学物質を製造または輸入しようとする者は、あらかじめ厚生労働大臣、経済産業大臣、環境大臣に届け出なければなりません。
- 3大臣は、当該化学物質に関する知見に基づき、第1種特定化学物質、監視化学物質または規制対象でない化学物質のいずれに該当するかを審査・判定し、届出者にその結果を通知することとされており、届出者はこの通知を受けた後でなければ、製造・輸入ができません。
- 通常は、下記の試験項目の結果を届出者が3大臣に提出し、国はこれをもとに審査・判定を行っています(高蓄積性の性状を有する場合等は試験項目が異なる場合があります)。
【試験項目】
- 微生物等による化学物質の分解度試験
自然的作用による化学的変化を生じにくいものであるかどうかを見極める試験
- 魚介類の体内における化学物質の濃縮度試験
生物の体内に蓄積されやすいものであるかどうか見極める試験
- 細菌を用いる復帰突然変異試験、ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験、ほ乳類を用いる28日間の反復投与毒性試験
継続的に摂取される場合には、人の健康を損なう恐れの疑いがあるものであるかどうかを見極める試験
- 藻類生長阻害試験、ミジンコ急性遊泳阻害試験、魚類急性毒性試験
動植物の生息または生育に支障を及ぼす恐れがあるものであるかどうか見極める試験
既存化学物質に関する規制
既存化学物質については、官民が連携して既存化学物質の安全性点検として収集した試験結果等に基づき、第1種特定化学物質、監視化学物質に該当する性状を有するかどうかを審査し、該当するものについては第1種特定化学物質または監視化学物質に指定し、公示しています。
情報源・出典・参考情報
注意
- 無断で本情報を二次使用すること及び転載することを禁じます。
- 本情報はおもに厚生労働省の上記「化審法ホームページ」より引用し、要約したものです。本情報を利用される場合は上記の引用先記述により確認をお願いします。
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