ホーム > 環境について > 環境関連情報 > 環境に関する法律「化管法」#1
情報発信日:2003-08-20
21世紀は環境の世紀といわれ、全世界が協調して地球環境の保護に取り組み始めています。1992年にリオデジャネイロで行われた地球サミット(国連環境開発会議)において採択された行動計画(アジェンダ21)において、日本では数万種類、全世界では10万種類といわれる化学物質の管理が重要であると認識され、1996年、OECD(経済開発協力機構)から加盟国に対して特定化学物質の管理に関して法制化することが勧告されました。これを受けて、わが国でも1999年7月13日に「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化管法)が制定されました。
この法律は企業の活動にも直接関係がある重要な法律だと思われますので紹介します。
この法律は、事業者が化学物質の排出量と移動量を自主管理するため、化学物質安全性データシート(MSDS - Material Safety Data Sheet)の交付の義務化と排出量等の届出を定めており、2000度中からMSDS交付の義務化、2001年度から排出量等の掌握が、2002年4月度からは排出量等の届出(PRTR)が開始されました。
これにともない、国は届出データの集計・公表などを行うほか、国際動向や科学的知見を踏まえつつ、環境調査・化学物質の安全性評価方法などの開発、情報提供、事業者に対する助言、国民の理解を深める活動などを行うことが定められています。また、地方公共団体も事業者に対する助言、国民の理解を深めるための活動などを行うことが定められています。
この法律に基づき行われるMSDS制度とPRTR制度のうち、今回はMSDS制度について説明します。
MSDS制度とは、事業者による化学物質の適切な管理の改善を促進するため、対象化学物質を含有する製品を他の事業者に譲渡または提供する際には、その化学物質の性状及び取扱いに関する情報(MSDS - Material Safety Data Sheet)を事前に提供することを義務づける制度です。
取引先の事業者からMSDSの提供を受けることにより、事業者は自らが使用する化学物質についての正しい情報を入手し、化学物質の適切な管理に役立てることができます。
各事業者が自ら取り扱う化学物質の適切な管理を行うためには、取り扱う原材料や資材等の有害性や取扱い上の注意等について正しい情報が得られることが必要です。しかし、外部から購入するものについては、その成分や有害性等を自ら知ることは容易ではありません。
このため、対象化学物質(またはそれを含有する製品)を事業者間で取引する際、その性状及び取扱いに関する情報の提供を義務づけることにより、外部から購入するものも含めて各事業者が化学物質の管理を行う上で十分な情報を入手できるようにしています。
これをMSDS制度と呼んでおり、2001年1月から実施されています。また、本法とは別の観点から、労働安全衛生法及び毒物及び劇物取締法において同様の制度が実施されています。
MSDSは、製品の製造・加工・流通にともない、順次提供されていくこととなります。
MSDS制度の対象となる化学物質は、法律上「第一種指定化学物質」及び「第二種指定化学物質」として定義されており、具体的な物質としては、人や生態系への有害性(オゾン層破壊性を含む)があり、環境中に広く存在する、または将来的に広く存在する可能性があると認められる物質として、政令で計435物質が指定されています。
MSDS制度の対象事業者は、第一種指定化学物質、第二種指定化学物質、またはそれらを含有する製品を他の事業者に対して取り引きする事業者すべてが対象となります。ただし、製品の場合は、一定の要件に該当するものは対象外となります。PRTR制度と異なり、MSDS制度には業種、取扱量、常用雇用者数等の裾切り要件はありません。
MSDS制度においては、第一種指定化学物質、第二種指定化学物質及びそれらを含有する製品について、MSDSの提供を行わなければなりません。
ただし、製品については、事業者による取扱いの過程で対象化学物質が環境中に排出される可能性が少ないと考えられる製品については、事業者の過度の負担を避ける観点から対象から除外することとしています。
次回は化管法のもうひとつの制度PRTR制度について説明します。