2023年7月は観測史上最も暑い月となる見通し

～地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が到来～

2023年8月17日

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1.　はじめに

2023年7月27日、WMO（世界気象機関）が「今月の世界の月間平均気温が過去最高を更新する見通しとなった」と発表したのを受けて、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は記者会見を開き、「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が到来した」と警告し、同時に「気候変動の最悪の事態を回避することは、まだ可能だが全体の約80%を排出している主要20ヶ国・地域（G20）が結束して野心的で新たな排出削減目標を設定し直すことが重要だ」と述べたことを多くの報道機関が報じました。

また、WWA（World Weather Attribution）は、2023年7月25日付けで「2023年7月は、米国南西部、メキシコ、南ヨーロッパ、中国を含む北半球のいくつかの地域で極度の熱波が発生した」とする報告を行い、各地で45℃を超える記録的な高温が発生したことを伝えています。

2023年6月12日付け本コラム「地球の気温は今後5年間で新記録に達する見通し～WMO（世界気象機関）が警告～」において、「地球温暖化とエルニーニョ現象の発生により、今後5年間のうちに、パリ協定で目標としている1.5℃を超える可能性が高い」と述べましたが、まだエルニーニョ現象発生の報告がない現在においても、世界中に記録的な熱波が襲来し、日本や中国などのアジア地域においては年を追って強大化する台風、線状降水帯による集中豪雨、竜巻や突風などによる気象災害が顕著になりつつあります。

カーボンニュートラルに向けた脱炭素活動が「遅々として進んでいないと思われる状況」を考える中、今回も「気象変動の現状」をお伝えしたいと思います。

2.　WMO（国連世界気象機関）の発表

2023年7月31日付けでWMOホームページに掲載された「2023年7月は観測史上最も暑い月となる見通し」の内容の要約は以下のとおりです。

（1）7月の最初の3週間は過去最も高い気温であったため、7月をトータルすると記録上最も暑い月となる見込みである。（図1の赤い線で示したデータ。）そして第１週と第3週の世界の平均気温は産業革命前の水準を上回る摂氏1.5度の閾値を一時的に超えた（観測誤差の範囲内）。

1940 年 1 月 1 日から 2023 年 7 月 23 日までの世界の毎日の表面気温 (°C)
青い線は1940年代、赤色が2023年。今年を除き過去最高は2019年。
図1　1940年～2023年7月までの世界の毎日の世界平均表面気温（°C）
（出典：WMO/ERA5、クレジット: C3S/ECMWF）

（2）これらの高温は、北米、アジア、ヨーロッパの大部分での熱波に関連しており、カナダやギリシャなどの山火事発生の要因でもあり、人々の健康、環境、経済に大きな影響を与えている。
（3）グテーレス事務総長は「北米、アジア、アフリカ、ヨーロッパの広大な地域にとって、今は酷夏であり地球全体にとって災害と言えるほどです。その変化は我々の予測より驚くほど早いスピードで起こっています」と表現。
（4）WMOのペテリ・ターラス事務総長は、「7月に何百万人もの人々に影響を与えた異常気象は、残念ながら気候変動の厳しい現実であり、未来の予兆である」と表現。

図S3。 1940 年から 2023 年までの 7 月のすべての月における、7 月の最初の 23 日間の世界の平均表面気温。
図2　1940年から2023年までの7月の最初の23日間の世界平均表面気温
（出典：WMO/ERA5、クレジット: C3S/ECMWF）

（5）世界の平均海面温度が大きく上昇している。全球の外極海洋（南緯60度～北緯60度）の毎日の海面水温（SST）の平均値は、2023年4月以降、この時期としては記録的な値を維持している。最も注目すべきは、5月中旬頃から全球の海面水温がこの時期としては前例のないレベルとなっている（図3において赤い線で示した2023年の値が過去に比べて異常な高温を示している）。

1979 年 1 月 1 日から 2023 年 7 月 23 日までの各年の時系列としてプロットされた、南緯 60 度～北緯 60 度の領域にわたる毎日の世界の海面温度 (°C) の平均値
図3　1979年1月1日から2023年7月23日まで、南緯60 度から北緯60度の範囲で
年ごとに時系列としてプロットされた、毎日の世界の海面水温（°C）の平均値。
（出典：WMO /ERA5、クレジット: C3S/ECMWF）

（6）世界の高温記録。
中国気象局によると、中国は7月16日に52.2℃という全国気温の新記録を樹立した（中国新疆省トルファン市）。7月30日、米国アリゾナ州フェニックス市は、日中の最高気温が31日連続で少なくとも110°F（43.3℃）以上となったと報告した。

3.　世界の異常気象（熱波）World Weather Attributio

WWA（World Weather Attribution）による2023年7月25日付け発表の要約は以下のとおりです。

（1）気候変動により、2023年7月に北米、ヨーロッパ、中国で猛暑が発生する可能性が大幅に高まる。
（2）米国のデスバレーと中国北西部で、7月16日に気温が50℃を超えた（CNN、2023）。
（3）中国の他の多くの気象観測所でも記録が達成され、7月16日には三宝で中国全土の高温記録が破られた。
（4）ヨーロッパでは、スペインのカタルーニャ州で史上最も暑い日が記録された。
（5）米国では、ネバダ州、コロラド州、ニューメキシコ州の一部が過去最高を記録し、アリゾナ州の一部、ケイマン諸島、アリゾナ州フェニックスの夜間気温が史上最高となり、90F/32.2℃を下回らなかった期間の最長記録を更新した。
（6）図4～図6において、2023年7月1日～18日までの間、米国とメキシコ、南ヨーロッパとアフリカ、中国において、35℃を超える高温が記録されていることがわかる。また1950年～2023年の日中平均気温と比べて、高温側に異常が発生していることもわかる。

図4　（左）米国とメキシコにおける2023年7月1日～18日の1日の平均最高気温、
（右）1950年～2023年平均と比べた2023年7月1日～18日の日中平均気温の異常値
（出典：World Weather Attribution）

図5　（左）南ヨーロッパと北アフリカにおける2023年7月12日～18日の1日の平均最高気温、
（右）1950年～2023年の平均と比べた2023年7月1日～18日の日中平均気温の異常値
（出典：World Weather Attribution）

図6　（左）中国における2023年7月12日～18日の1日の平均最高気温、
（右）1950年～2023年の平均と比べた2023年7月1日～18日の日中平均気温の異常値
（出典：World Weather Attribution）

4.　まとめ

（1）WMO（世界気象機関）は2023年7月の世界平均気温が過去最高となる見通しであると発表した。特に、第1週と第3週の世界の平均気温は産業革命前の水準より1.5 ℃の閾値を一時的に越えた（観測誤差の範囲内）。
（2）国連のアントニオ・グテーレス事務総長は「地球温暖化から地球沸騰の時代に移行した。しかし、温室効果ガスの80%を排出しているG20が野心的な排出量削減目標を設定することで、まだ間に合う」と述べた。
（3）WMOやWWA（World Weather Attribution）は、中国、アメリカとメキシコ、南ヨーロッパなどで45℃を越える高温を記録したと報じた。特に米国のデスバレーや中国内陸部では50℃を越えた。
（4）海水温の上昇が、この夏は異常値を示している。
（5）海水温の上昇とともに、日本においても、線状降水帯の多発や大型台風の襲来などによる記録的な豪雨や洪水、土砂流出による災害も増加傾向にあるが、これは世界的な現象である。
（6）気象変動による豪雨・洪水、土砂流出などにより気象災害も増加傾向にあるが、別の機会に述べたい。

引用・参考資料

July 2023 is set to be the hottest month on record　（WMO、2023-7-31）
Typhoons trigger destruction and record-breaking rainfall in China　（WMO、2023-8-2）
Climate change impacts increase in Asia　（WMO、2023-7-31）
Extreme heat in North America, Europe and China in July 2023 made much more likely by climate change　（World Weather Attribution, 2023-7-25）
地球の気温は今後5年間で新記録に達する見通し～WMO（世界気象機関）が警告～　（日本バルブ工業会、2023-6-12）

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