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情報発信日:2011-03-23
2009年4月7日付け当コラム世界の水資源と水危機(その1)において、「現在地球の人口は67億人を超えましたが世界の水資源は70億人分しかなく、しかも水資源の偏在によって既に4億5,000万人もの人々は十分な水を得ることができてない」ということについて述べました。
地球は「水の惑星」といわれ、宇宙から見ても青く大量の水に覆われて見えますが実際はどうなのでしょう?
世界の水資源に関するデータは推計が難しいため、色々なデータがありますがUNESCO(国際連合教育科学文化機関)が2003年に発表した資料を国土交通省が要約した資料(表1)を参考に話を進めてみたいと思います。
これによると、地球全体の水の量は138,600万km3ありますが、そのうちの実に97.5%が海水や塩分の混ざった塩水であり、農業用水や生活用水など我々の生活に直接利用できない水であることがわかります。さらに、残りの淡水の68.7%は氷河など、30.1%が地下水であり、利用が難しい、ないしは利用が制限される水であり、我々が容易に利用できる水は湖沼水の淡水と河川水を合せた全体の0.3%程の約10万km3と計算されます。それでも我々が利用可能な淡水の量は、一人あたりにすれば10万km3÷67億人=1億5,000万m3、仮に1日あたりにしても41万m3/人もある計算になります。こんなにあって、なぜ不足するのでしょうか?
地球の全体に占める陸と海の面積日はほぼ1:3で、陸地への降雨量は年間110,000km3(一人あたり1億8,000m3/年)ありますが、地下浸透と蒸発分を除く水資源賦存(ふぞん)量 (注)は42,600km3 /年(一人あたり7,100m3/年)と計算されます。(1970年の数値と比較すると12,900m3/年で急速に減少しています。)
注:水資源賦存(ふぞん)量とは降水量から蒸発量を差し引いた人間が理論上量利用出来る最大量。
それでも、7,100m3/年・人=19m3/日・人と十分な数字に見えますが、雨季と乾季の存在、地球上の乾燥地帯と多雨地帯の存在など降雨量が偏在していることにより、貴重な水資源が使われる前に海に流れ込んでしまうため、100%利用することが困難になります。特に日本のように細長い島国では河川の流域が短いため利用率は極めて少なくなります。
以下にFAO(国連食糧農業機関)「AQUASTAT」のデータ等を利用して国土交通省が作成した資料を示します。
平成19年度の国土交通省水資源部の報告書によると、「我が国は、世界でも有数の多雨地帯であるモンスーンアジアの東端に位置し、年平均降水量は1,718mm(昭和46年から平成12年の全国約1,300地点の資料をもとに国土交通省水資源部で算出)で、世界(陸域)の年平均降水量約810mm(FAO=国連食料農業機関「AQUASTAT」をもとに国土交通省水資源部で算出)の約2倍となっている。一方、これに国土面積を乗じ全人口で除した一人あたり年降水総量でみると、我が国は約5,100m3/人・年となり、世界の一人あたり年降水総量約16,800m3/人・年の3分の1程度となっている。(以下略)」
一人あたりの水資源賦存量を海外と比較すると、世界平均である約8,600m3/人・年に対して、我が国は約3,300m3/人・年と2分の1以下である。さらに、我が国は地形が急峻で河川の流路延長が短く、降雨は梅雨期や台風期に集中するため、水資源賦存量のうちかなりの部分が洪水となり、水資源として利用されないまま海に流出する」としており、日本の水資源賦存量は世界156カ国中91位であるうえに利用率も20%と高くはなく、決して水資源に恵まれた国とはいえないことがわかります。
UNESCOが発表した「World Water Resources at the Beginning of the 21st Century」(図1、図2)によると、1995 年(平成7年)における世界の水使用量は約3,750km3/年となっており、用途別では、農業用水が約7割と最も多く、工業用水が約2割、生活用水が約1割となっています。地域別では、アジアが最も多く、続いて北米が約2割、欧州が約1割となっています。
水使用量の増加では、1995年(平成7年)は、1950年(昭和25年)の約2.7 倍となっています。特に生活用水の増加は約6.7 倍と急増しています。また、2025年(平成37年)の水使用量は、1995年(平成7年)の約1.4 倍になると予想されており、生活用水は約1.8倍と最も増加すると報告されています。
これは、アジアにおける人口の急激な増加とそれに伴う食糧増産のために水需要が急激に増加してきており、図3に示す通り、世界の水需要が危機的状況にあることが理解されると思います。
日本の食料自給率はかなり以前より約40%と先進国の中ではかなり低い水準で推移しており、たびたびその危うさが指摘されてはいますが、改善される傾向が見られていません。前述してきたように、水の用途の70%は農業に使用され、世界の人口、特にアジア地域での人口の増加に伴い食料増産のための水の使用量が急増しています。しかし、冒頭でも述べたように、また図3を見てもわかる通り、今後は水不足がより深刻な状況になると予想されています。
そのような状況になった場合、現状では日本への食料輸出を行っている国々が輸出を継続してくれる保証はあるのでしょうか? かなり怪しくなるのではと危惧されます。その場合には、自国の食料自給率を上げる必要がありますが、東京大学生産技術研究所の沖大幹教授が提唱している「仮想水」という概念を使って、日本の食料事情を調べてみたいと思います。
仮想水とは、日本が輸入する食料や工業製品を生産するために、外国で使用された水の量を輸入したと仮定して計算した量で、これを計算することによって自国の水の需給バランスを調べることができます。実際に種々の食料を生産するのにどの位の水が使用されるか見てみましょう。
この計算によると、牛丼1杯を作るためには日本人の一般家庭で消費される10日分に当たる、何と約9m3もの水が必要になるそうです。
この数値を使って日本における、農作物・畜産物・工業製品に対する仮想水の収支を計算してみます。
以上のことから、日本は食料の輸入に伴い約1,000億m3/年もの仮想水を輸入している計算になります。これは表2から実に日本の年間総水使用量834億m3/年を上回る量であり、極めて恐ろしいことであることに気づくと思います。
21世紀は水の時代であり、水をめぐって戦争さえ起きるといわれているなか、「日本は水資源が豊かな国だから関係がない」などと決して悠長なことを言っていられる状況にないことはおわかりいただけたかと思います。このような状況を世界はどのように切り抜けようとしているのでしょうか? いろいろ難しい問題はありますが最先端の造水技術の開発も進んできておりますので、次回はその辺の事情について述べたいと思います。