ホーム > 環境について > 環境関連情報 > 地球温暖化懐疑論も出始めた温室効果ガスの行方
情報発信日:2013-12-24
2013年11月11日(月)から11月23日(土)にかけてポーランドのワルシャワで国連気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)及び京都議定書第9回締約国会議(COP/MOP9)が開催されました。外務省及び環境省によりますと、今回のCOP19は「2020年以降の枠組みについて、締約国会議(COP)は、全ての国に対し、自主的に決定する約束草案(intended nationally determined contribution) のための国内準備をして、2015年にフランスのパリで開催予定のCOP21に十分先立ち約束草案を示すことを招請するとともに、ADP(ダーバン・プラットフォーム特別作業部会)に対し、約束草案を示す際に提供する情報をCOP20で特定することを求めることを決定するなど、議論の前進につながる成果が得られ、COP21におけるすべての国が参加する将来枠組みの合意に向けた準備を整えるという我が国の目標を達成することができた」と評価しています。 少しわかりにくいので簡単にいうと、COP21においてポスト京都議定書以降の新しい枠組みの合意が予定されているが、COP19はこれをゴールとした3年間の1年目として位置づけられ、その基礎作りができたということのようです。
しかし、「温室効果ガス濃度の上昇によって地球は温暖化する」ということが今や定説になってはいますが、ここ数年世界各地、特に北半球が冬において歴史的な豪雪や寒波に見舞われることも多く、さらには「21世紀に入ってからは、世界の温室効果ガス濃度は上昇しているにも関わらず平均気温は必ずしも上昇傾向にはない」とする見方があったり、太陽の活動が近年になく停滞期に入ってきたとする見方が出てきたり、特に最近は「地球は本当に温暖化して行くのか」と疑問を唱える学者も少なからず出てきています。
国連気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)において、この辺の議論がされたのかどうかの詳細はわかりませんが、もし将来地球が温暖化するよりも逆に寒冷化に向かうとしたら、さらに大きな危機に直面する可能性がありますので、最近起こっている事実と学説について、この辺の問題をまとめてみました。
独立行政法人国立環境研究所地球環境研究センターによると「地球は太陽から受け取ったと同じエネルギーを宇宙に返そうとしますが、大気中の水蒸気、二酸化炭素、メタンなどがその放出エネルギーの一部を遮ることにより、地球の表面近くに温室効果が生まれ温暖な気温に保たれている。もし大気がなければ地表の気温は-19℃と計算できる」と説明しています。したがって、太陽から得るエネルギーと、これを放出するエネルギー量がどちらかに偏ることにより、地球は現在よりも気温が高くなったり、逆に低くなったりする可能性を持っているといえます。
このような状況において、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change: 気象変動に関する政府間パネル)は「地球は二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガス濃度の上昇により温暖化に向かっており、このまま温室効果ガスの排出量の削減を行わず放置すれば2100年に地球の平均気温は最大で4.8度上がり、海面が最大で81センチ上昇する」と述べ、今やこれが定説のようになっていますが、その根拠の一つが図1に示すC.D. Keelingによる「気温とCO2濃度の経年変化」というデータです。
たしかに二酸化炭素の濃度変化と気温の変化には関連性があるように思えます。
しかし、このデータをよく観察すると、二酸化炭素濃度と気温の関係には、1年程度の「ズレ」があることがわかります。地球温暖化説を唱える人々は、「地球は巨大なので定常化するまでの時間がかかり遅れが出る」と説明しています。
二酸化炭素などの温室効果ガス濃度が上昇して、太陽から得るエネルギーと、地球が放出するエネルギーのバランスが崩れ、放出エネルギーが減少すれば地球の表面付近の温度は上昇していくのは事実だと思われます。
一方で、太陽の活動がより活発になり地球が得るエネルギーが増大すれば、温室効果ガスの濃度が上がらずとも気温が上昇します。気温が上昇し海水の温度が上昇すると、海水に溶解していた二酸化炭素が溶け出し、大気中の濃度が上昇するのも自然科学的には事実です。
図1の二酸化炭素濃度と気温の変化の「ズレ」に関して、「二酸化炭素濃度が上昇したことが原因で気温が上昇している」としているのが、二酸化炭素犯人論を唱える人々です。反対に、「気温が上昇しているから海水に溶けていた二酸化炭素が気化して濃度が上昇している」としているのが二酸化炭素犯人懐疑論を唱える人達で、「鶏が先か、卵が先か」の議論に似ているところがあります。
気象庁が図2により「1890年から2020年までの世界の年平均気温偏差」を示していますが、単純な統計処理では100年間で0.68℃のペースで気温が上昇していると見てとれます。
図3に1700年から2000年頃までの大気中の二酸化炭素濃度の経年変化を示します。図2と比べて表示期間が異なりますので単純に比較はできませんが、二酸化炭素の濃度上昇カーブは急激であるものの気温の方は上昇しているのは事実で、変化は一定に保たれているように見えます。
2012年3月26日付けの当コラム「2012年冬-最近の世界の異常気象-」において、「2012年1月1日から2月20日」までという短期間ではありますが、北半球及び南半球で発生し報道された異常気象48件について調査した結果を記しました。「干ばつ、豪雨・洪水、異常高温・暖冬」など温暖化の影響によると思われるもの22件、逆に「寒波・異常低温」など温暖化に逆行すると思われるものが26件とほぼ同数を占めています。日本でも2012年は記録的な豪雪と寒波に襲われたのは記憶に新しいところですし、また「本年も12月初めに北米を寒波が襲い、西海岸に有って温暖な気候のサンフランシスコで複数の凍死者が出た」とか、「エジプトで数十年振りとも100年振りとも言われる降雪があった」などと報じられ、この辺が地球温暖化懐疑論となっているようです。
2007年に英国BBCは2013年夏には北極の氷は消失すると報じていますが、北極の氷の面積は逆に年に29%も増加しています。 南極においては2012年冬に、日本の南極観測船『しらせ』が5mの氷と2mの積雪に阻まれ、数十年ぶりに昭和基地への接岸を断念するといった事態が生じました。
21世紀に入り、特にここ数年において、大雨・洪水、干ばつや大型台風の発生など地球温暖化による影響によるといわれる異常気象が多発する反面で寒波や大雪による異常気象が多発しています。
最近IPCCはこれらの現象について、温室効果ガスの排出量が増加した場合、単純に地球全ての地域で温暖化が起こるのではなく、気象が極端化して異常気象が起こりやすくなるのであって、北半球では現状よりも、むしろ寒冷化する場合もありうるとして、「温暖化」という言葉よりも「気象変動」という言葉を使うようになってきています。
理由は、地球の気温が上昇すると大気や海流の流れに変化が生じて従来とは異なる気象の影響が極端になると説明しています。また、北極や南極で氷が大量に溶けて、海に流入すると「淡水で且つ低温」であるために、海洋の深い部分に沈み、従来の海流の流れを変えてしまう可能性があり、例えば温暖なメキシコ湾流が回流してくるために高い緯度に位置しているにも関わらず、温暖な気候の欧州や北米は、海流の流れが変化することにより、寒冷化してしまう可能性があるとしています。この理論で、ここ数年の寒波を説明しようとしています。
地球温暖化懐疑派の人々は「確かに1980年代から1990年代半ばに掛けて地球の平均気温は0.3℃ほど上昇したというのは事実ですが、1997年をピークに気温の上昇は止まり、むしろ寒冷化に向かって今後は気温が低下傾向に入っている」と主張しています。
この現象は、図2の2000年以降の部分のデータを統計処理すると「気温の上昇は見られない」という結果になると主張しています。
これは、太陽の活動が過去200年で最も低調な状況にあり地球の気温は今後において温暖化よりも寒冷化に向かう可能性があるというものです。
このように、もはや「温室効果ガスの増加により地球が温暖化に向かっているのは疑いようがない」というのが定説になり、世界各国が温室効果ガス削減に向けての交渉が進められている中において、「寒冷化に向かうなんて馬鹿なことをいうな」的な風潮になってきています。
しかし、「温室効果ガスの存在をいうのであれば、メタンや二酸化炭素よりも一番の影響を与えるのは水蒸気であり、水蒸気に関する議論を行わないIPCCは不自然である」という主張も出てきています。しかし水蒸気量は気温と関係が深く、これも気温が上がったから水蒸気量が増えたのか、水蒸気量が増えたから気温が上がったのか、堂々巡りの議論になってしまう可能性があります。
地球が止まっていて太陽が動いているとする天動説が主流だった時代、太陽が止まっていて地球が動いているとする地動説を唱えたコペルニクスは「異端者」として扱われましたが、結果はコペルニクスの方が正解でした。
自然科学や自然現象において真実を追求する場合には、原点となる考え方が本当に正しいのか否かを疑ってかかるのと同時に反対意見をいう人の言葉に耳を貸し、両方の情報、特に一次情報まで遡って解読して自身で判断し意見をいうことが非常に大切だと思いますし、自然科学は少数意見だから誤りだとは限らないといえます。
この先、もしも地球が温暖化に向かわず、寒冷化に向かうとすれば、はるかに危機的な状況が訪れることになると予想されますので、原点に戻りもう一度慎重な議論をして欲しいと思います。