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情報発信日:2004-11-09
前回に続き、WEEE&RoHS指令についてレポートします。今回は、本指令に基づき加盟各国が国内法の整備をしなければならない期限である2004年8月13日を過ぎたにもかかわらず、国内法の整備が一向に進まない原因に触れてみたいと思います。これらの問題点を踏まえたうえで、対応準備を進めないと、準備が無駄に終わる可能性があると思われますので注意が必要です。
お膝元の欧州圏内からさえ「WEEE&RoHS指令はこれまで出てきた欧州指令で最も出来が悪い」という声が聞こえてくるほど、WEEE&RoHS指令はEU加盟国が国内法を整備する段階になってもさまざまな問題を抱えていることが浮き彫りになってきています。このため、指令による各国国内法整備期限である2004年8月13日を過ぎた現在、いまだに大半の加盟国における国内法整備は進んでいないのが現状です。期日までに国内法への反映ができない場合には、欧州委員会から督促状が回ってきて、最悪の場合には欧州裁判所に訴えられ罰金を支払うことになりますが、ELV(自動車廃棄処理指令)のように、とっくに国内法整備期限が過ぎているにもかかわらず、加盟15ヶ国中4ヶ国しか法整備ができていないという事実もあります。
加盟各国がRoHS指令に従い国内法を整備するうえでの問題点はいくつかあります。
指令の対象と「なるのか」「ならないのか」の判定基準が曖昧なために、境界領域の製品が数多く存在してしまう問題。
経済的な損失が大きい場合、現状技術では対応が不可能な製品、軍事的目的の製品など、規定及び申請により適用除外品として扱われる製品、材料などが数多く存在する問題。
使用禁止物質は製品全体の重量比で使用が制限されています。この場合、製品に使用される部品や材料に対して「均一な材料」を単位として分析するとされていますが、どこまでを均一とするのか、たとえばコンデンサー1つを例にとっても構成部材はリード線(芯線、ハンダメッキ)、シール、スリーブ、外筒、電極、電解液と少なくとも7つの均一材料から構成されていることになりますが、果たして7部材でよいのか? さらに詳細な構成品にまで分割する必要があるのか? また分析法はどの手法が標準なのかという問題があります。すなわち、使用禁止物質の分析については製品の構成部材をどこまで詳細に分割して、かつ、どの分析法でやればよいのかがまだ決まっていないということになります。したがって、たとえば「RoHS指令の対応準備」ということで事前に自社製品に対して指定物質が「含まれているのか」「含まれていないのか」の分析を行なっておいても、最終的に「製品の分析単位としてこれではダメ」「分析結果にしてもある分析法でOK」という結果が出ても、欧州で分析したら「NG」という結果が出る可能性があります。RoHS指令で使用禁止される6物質を分析すると、1点で大体7〜8万円かかります。コンデンサーが7部材から構成されているとすれば、40〜50万円の費用がかかる計算になりますので、現状ではあまり準備を急ぐと無駄な費用を発生させる危険性があるということになるかと思われます。
以上の問題を解決するための組織としてTACがあります。
TACは2つの目的をもっています。第一番目は、この2つの指令について科学的及び技術的な進歩にあわせて進めてゆくこと。第二番目が、この2つの指令の実施にあたって具体的な問題が生じた場合にこれを解決することです。TACの構成メンバーは加盟各国から政府関係者が1〜2名参加していますが、問題は業界の関係者が参加していないことです。このため、この委員会は最近までに10回以上開催されているにもかかわらず、上記の問題についてほとんど解決できていないようです。とくに、対象製品の境界が大変曖昧であり、容易に解決しそうにありません。
その他の問題として、メンテナンス部品や消耗品の扱いに関する問題があります。
消耗品を対象に入れるのか入れないのかの議論は、業界の利益を左右する問題で二転三転しています。また、上市時期の問題もあります。製品が製造されてから消費者の手に渡るまでにはタイムラグがありますが、どの時点をもって「上市」とするのか明確ではありません、もし消費者の手に渡る時点ということになると、メーカは相当前から適合品を生産しなければならないことになります。その他の事項についても、曖昧な部分を残したまま「指令」が先行してしまい、実施をしようという段階で多くの問題が噴出しており、各国の国内法整備が遅れているのが実情です。このため、EU加盟国の多くの企業は、自国の法律が成立してから対応を考えるという姿勢をとっているようです。