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情報発信日:2004-09-30
2003年12月に発信した「欧州WEEEとRoHS指令について」で概要をお知らせしましたが、WEEE指令によるリサイクル義務の発生が来年2005年8月、われわれに直接関係する可能性の高いRoHS指令による有害物質規制の発効が再来年2006年7月と迫り、これら指令の内容の理解及び各企業の具体的な対応も明確になりつつあります。そこで、WEEE&RoHS指令に対する理解と具体的な対応準備について、何回かに分割してレポートしたいと思います。
2001年10月、クリスマスに向けてオランダに輸出しようとした日本のS社ゲーム機の附属機器から、同国の国内法が定める基準以上のカドミウムが含まれていることが判明したため、輸入が認められないという事件が起こりました。
これにより、S社はオランダに輸出する予定だったゲーム機の売上120億円、営業利益60億円の損失を出したと試算しました。税関での発覚だったため、回収費用負担及び罰金支払いの事態は避けられましたが、一時は「非関税障壁による日本の企業締め出しか」ということにまで発展しかねない状況に至りました。
その後、S社は各国の国内法による有害物質規制法を調査し、最も厳しい規制値を閾値として自主規制基準を策定しました(下表)。
これが電気電子業界の事実上のグローバルスタンダードとなりつつあった矢先に、WEEE&RoHS指令が急浮上してきました。
WEEE&RoHS指令における規制6物質は、まさにS社が自主的に使用制限を行なった6物質そのものであり、WEEE&RoHS指令の基はS社が作ったということにもなるかと思われます。
事実上、WEEE&RoHS指令発令の発端になったS社を筆頭に、S社と取引のある大手家電メーカM社や、世界有数のカメラメーカC社などが、具体的な対応状況では世界で最も進んでいるといわれていますが、逆にS社と取引関係にない家電メーカは対応が遅れている様子で、同じ業界でも温度差があるようです。
今や世界の工場として発展が著しい中国では、急激な経済成長にともない一部において環境問題が深刻化していることと、欧州の影響をかなり受けていることから、欧州WEEE&RoHS指令のほとんどコピーだとされる中国版WEEE&RoHSの策定を急いでいるとの情報があります。日本の対中国貿易金額がいまや米国と逆転するのも時間の問題とされる、隣国中国での当該法律の成立や公布時期が関心事となりますが、中国版においては欧州のように「○○年○月○日をもって6物質を規制する」というものではなく、「現状を100として、期限は切らず段階的に削減しましょう」という緩やかなものになる見通しです。
米国はとくにEU指令に対応することなく、独自に環境関係の法整備を進めています。ただし、米国の法律は州法と連邦法があり、州法が連邦法にまで拡大適用されるケースや判例中心で運用されるなど、理解するのに難しい面がありますが、カリフォルニア州において発ガン性物質など約800種類の有害物質指定を行なっており、罰則も大きなものがあるため注意が必要です。
お膝元のEU各国の対応がいちばん遅れているといわれています。指令による国内法整備期限がすでに過ぎているにもかかわらず、指令自体に曖昧な部分が多く、実際の法律を作る作業が難航しているようです。したがって、EU加盟国内の企業においては「WEEE&RoHS指令ってなに?」という状態のところも多く、国内法が制定されてから対応するという待機状態の企業が多いようです。
EU各国の国内法整備が遅れているのは事実のようですが、WEEE指令によるリサイクル義務の発生、RoHS指令による有害物質規制発効の予定は下記のとおりとなっており、多少の遅れはあるかもしれませんが、これらに関係が深いと思われる各企業は対応の準備を早急に進める必要があると思われますので、後報によりこの辺をお伝えしたいと思います。