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情報発信日:2015-7-21
2014年4月28日付けの本コラム「改正RoHS指令における含有制限物質の見直し検討」の最終報告 24物質が次期使用制限物質候補リストに収載で述べた「改正RoHS指令における含有制限物質追加候補24物質」のうち、4物質の追加及び制限濃度が2015年6月4日付けのEU官報「COMMISSIN DELEGATED DIRECTIVE (EU) 2015/863」において公表されました。これにより附属書II(制限物質)に記載された、RoHS指令の含有制限物質は10物質となりました。
今回は、附属書IIに追加された4物質を中心に、今回のEU官報に記載された関連事項について解説します。
今回附属書II(制限物質)に追加された4物質は、「使用制限物質候補物質及び優先順位」(参照:「改正RoHS指令における含有制限物質の見直し検討」の最終報告 24物質が次期使用制限物質候補リストに収載)で示した24物質のうち、第1優先順位(8物質)の候補となっていた中のフタル酸エステル4物質です。
| 1 | 物質名(英名) | 4 phthalates Di-(2-ethylhexyl) phthalate | 
| 物質名(略号) | DEHPまたはDOP | |
| 物質名(和名) | フタル酸ビス(2-エチルヘキシル) | |
| CAS登録番号 | 117-81-7 | |
| 制限濃度 | 0.1 % | |
| 主な用途 | 最も多く使われているのはポリ塩化ビニル(PVC)用可塑剤。その他、油圧油やコンデンサーの誘電体、サイリュームの溶媒等にも使用。 | |
| 備考 | ・現在、大量生産されている。  | |
| 2 | 物質名(英名) | Di-n-butyl phthalate | 
| 物質名(略号) | DBP | |
| 物質名(和名) | フタル酸ジブチル  | |
| CAS登録番号 | 84-74-2 | |
| 制限濃度 | 0.1 % | |
| 主な用途 | 広く利用されている可塑剤。接着剤や印刷インクの添加剤としても利用される。 | |
| その他 | ・REACH規則における制限物質及び高懸念物質候補リスト収載。  | |
| 3 | 物質名(英名) | Butyl benzyl phthalate | 
| 物質名(略号) | BBP | |
| 物質名(和名) | フタル酸ブチルベンジル  | |
| CAS登録番号 | 85-68-7 | |
| 制限濃度 | 0.1 % | |
| 主な用途 | ポリサルファイド系樹脂の可塑剤。建築用のポリサルファイド系シーリング材(シール材、コーキング材、シーラント)。セラミックバインダーやアクリル系塗料の可塑剤。 | |
| その他 | ・REACH規則における制限物質及び高懸念物質候補リスト収載。 | |
| 4 | 物質名(英名) | Diisobutyl phthalate | 
| 物質名(略号) | DiBP | |
| 物質名(和名) | フタル酸ジイソブチル  | |
| CAS登録番号 | 84-69-5 | |
| 制限濃度 | 0.1 % | |
| 主な用途 | 無臭の熱および光に安定な可塑剤。セルロイド、ネイルポリッシュ、爆発物、塗料製造などで利用。メタクリル酸メチルと併せて利用する。 | |
| その他 | ・REACH規則における高懸念物質候補リスト収載 | 
今回の制限物質追加は、現行のRoHS指令(Directive 2011/65/EU)の前文10「指令の附属書は特にREACH規則の附属書XIVおよびXVIIを考慮し、定期的に見直しを行うべきこと、特にHBCDD、DEHP、BBPおよびDBPの使用による人の健康と環境に対するリスクを最優先に考慮するよう」記載されており、これを考慮して行われたものと思われます。
従って、今回の附属書IIへの追加4物質は、REACH規則における附属書XVII記載物質(制限物質)及び/または附属書XIV(高懸念物質の認可対象候補物質リスト)に既に収載されている物質です。
フタル酸エステル系の可塑剤は、過去50年以上に渡りポリ塩化ビニルなどの可塑剤などに多く使用されて来ています。数十年前より人体に対する影響が懸念される物質として幾度となく議論されて来た物質ですが、EUのREACH規則において、乳幼児が口に入れたりする可能性の有る玩具などで使用制限物質に規定され、同時に高懸念物質の認可対象候補物質としてのリストアップもされています。
国内においては、ダイオキシン問題以降、可塑剤よりも脱ポリ塩化ビニルの動きがあり、可塑剤の使用量は減少傾向にあるようですが、依然かなりの量が生産されています。
 
(出典:可塑剤工業会)
 
(出典:可塑剤工業会)
用途としては、床材や壁紙などの建築資材が約1/3を占めています。その他、RoHS関係では電線被覆材として使用されていますので、注意が必要です。 フタル酸エステル系可塑剤を使用制限することに対して、EUは「代替品がある」としていますが、国内ではDIC株式会社(旧・大日本インキ株式会社)などが、フタル酸エステル系以外の代替可塑剤を開発済のようです。
(1) 2015年6月4日付けのEU官報「COMMISSIN DELEGATED DIRECTIVE (EU) 2015/863」において、改正RoHS指令の附属書II(含有制限物質)に以下4物質を追加しました。含有制限濃度はいずれも0.1%以下。 
  ・フタル酸ビス(2-エチルヘキシル) 、略称DEHPまたはDOP、CAS登録番号:117-81-7。 
  ・フタル酸ジブチル、略称:DBP、CAS登録番号:84-74-2。 
  ・フタル酸ブチルベンジル、略称:BBP、CAS登録番号:85-68-7。 
  ・フタル酸ジイソブチル、略称:DiBP、CAS登録番号:84-69-5。 
(2) 上記4物質は主にポリ塩化ビニル(PVC)の可塑剤として使用され、現在も量産されています。
(3) 可塑剤の添加量としては、通常1〜40%程度必要ですので、実質的に可塑剤としての使用は不可能になります。
(4) 上記4物質はいずれも、既にREACH規則における附属書XVII記載物質(制限物質)及び/または附属書XIV(高懸念物質の認可対象候補物質リスト)に収載されている物質です。
(5) このEU官報に記載された内容は、「指令」ですので、直ちに効力を発揮するものではありませんが、官報には「本指令は、EU官報の刊行の20日後に発効する(本EU官報は2015年6月4日に刊行されているので、発効日は2015年6月24日である)。加盟国は遅くとも2016年12月31までに本指令に準拠するために必要な法令、規則および行政規則を採択し、発行しなければならない」と記載されています。
6) 以後の物質の追加は、2014年4月28日付けの本コラム「改正RoHS指令における含有制限物質の見直し検討」の最終報告 24物質が次期使用制限物質候補リストに収載に記載のリストに沿って、行われるものと思われます。