ホーム > 環境について > 環境関連情報 > 「改正RoHS指令における含有制限物質の見直し検討」の最終報告

環境関連情報

「改正RoHS指令における含有制限物質の見直し検討」の最終報告

24物質が次期使用制限物質候補リストに収載

情報発信日:2014-4-28

はじめに

RoHS指令の改正案は2008年12月に欧州議会、理事会に提出されて以降、2年以上も修正が繰り返された結果、2011年5月に合意に至り、2011年7月1日に2011/65/EUとしてrecast版(日本では「改正RoHS指令」または「RoHS指令2」などと呼ばれています)がEU官報に公布されました。

この時点において、含有制限物質に追加はなく改正前と同じ6物質(鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、PBD、PBDE)でしたが、改正RoHS指令の第6条(Article6)にある「附属書(annex)II収載の含有制限物質の見直し: Review and amendment of list of restricted substances in Annex II」に従い3年以内に見直すとし、この作業はオーストリア環境省に委託されていましたが、2014年2月5日作成の「最終報告書」が公表されました。

 

改正RoHS指令の概要とおさらい

2012年6月6日に経済産業省が実施した「第4回改正RoHS指令関連工業会合同勉強会資料; 改正RoHS指令のおさらい」を引用して、改正前RoHS指令(2002/95/EC)と改正RoHS指令(2011/65/EU)の比較を行い、改正の要点を再確認したいと思います。

最終報告書の概要

(1) はじめに

電気・電気機器(EEE: Electrical and electronic equipment)に使用され、そこに含まれる有機及び無機化学物質は増加してきています。そして、これらの物質の一部は人間の健康や環境に危険をもたらす性質を有する場合があります。このため、RoHS指令(2002/95/EC)において、電気・電子機器の鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル(PBB)とポリ臭化ジフェニル(PBDE)の使用が2006年以降禁止または制限されるようになりました。

2011年に指令(RoHS2)の改正が実施されました。それは、RoHS指令を(電気・電子製品の)技術的及び科学的な進歩に適合させて状況を指定することが主な目的です。このことは、指令の附属書IIで制限されている物質のリストの見直しも含まれています。これは特に廃電気・電子機器の管理に関わる労働者に対する特別な関心事で、彼らの健康と環境に関する危険の防止を目指すものです。

RoHS指令の第6条は制限物質リストの見直しを欧州員会に要求する規定です。

条件は
・まずは2014年7月22日までに見直す
・それ以降は定期的に、メンバーの提案に従って実施する

RoHS2の第6条1項は附属書IIの制限物質のリストの見直しが「完全な評価(thorough assessment)」に基づくことを義務付けています。さらに条項は、危険物質の見直しと改正はREACH規則(登録、評価、認可、規制による化学物質の制限; EC,No1907/2006)の方式にそって行うことを義務づけています。

見直しは、この法律(REACH規則)に関して一般に公開されている知識を利用します。

制限物質リストの見直し及び協議は利害関係のある経済関係者、リサイクル業者、処理業者、環境関連組織、従業員、消費者協会関係者などによるプロジェクトにて行います。

(2) 本プロジェクトの狙い

2012年に欧州委員会環境長官は以下2つの主要な目的でこの研究を開始しました。

・RoHS2の頭書10と第6条(1)と第6条(2)の基準に基づく物質を特定して、評価するための方法論の開発

・RoHS2の頭書10による将来の規制の為に物質を評価し指定すること

上記の目的を達成するため、利害関係者による協力と協議会が組織されました。利害関係者による選任されたグループの間で公開のインターネット上で会議と協議が行われました。

(3) プロジェクトの主な結果

プロジェクトの主な結果は以下の通り。

・「RoHS指令の附属書IIによる制限物質リストに追加する物質の識別及び評価の為の方法論」のマニュアルの開発

・電気電子機器で使用される物質の目録

・RoHS指令の基で「潜在的に規制対象とされるべき」と思われる物質で詳細な評価を行うために優先順に並べられたリストの作成

・RoHS2の頭書10に従った初めてのレビューを行うために、所定の物質を制限するべきか否かについて詳細な評価と推薦を行うために優先順位を付ける

(3)-1 RoHS指令下で制限された物質(附属書Ⅱ)のリストへ登録される物質の識別と評価のための方法論

開発される方法は、以下の3つから成ります。

・物質の識別

・物質の事前評価

・物質の詳細な評価

(3)-2 電気・電子機器で使用される物質のリスト

電気・電子機器に使用される物質の最終リストは738種類です。うち31種類は既に制限されており、また27種類の物質は「使用可能」「わからない」または「使用しそうにない」物質でした。

その上、例えばナノ物質を含むようなCASに分類されない物質も30以上あります。

(3)-3 RoHS指令の基で「潜在的に規制対象とされるべき」と思われる物質で詳細な評価を行うために優先順に並べられたリスト

優先リストは56種類の物質とそれらの全体的な優先分類から構成されます。それに加えて11の要素と以下の物質グループを含みます。

物質の名称と物質のカテゴリー、CAS及びEU番号、物質の現状のSVHC情報、CLP分類システムおよびREACH規則(2013年1月現在)の中での規定をベースにした人間の健康と環境に対する危険な特性に関する情報、物質と物質グループに関する情報がRoHS2の第6条(1)に規定されている3つの基準を満たすか比較して全体的な優先順位を物質に与えました。

(3)-4 HBCDD、DEHP、BBPとDBPの詳細な評価

第1優先順位8物質の内、HBCDD, DEHOP, BBP及びDBPの4種類の物質については、より詳細な評価を行いました。

(4) 一般的な結論と展望

1) 利害関係者によるプロジェクトにより技術的、科学的に有用な情報が提供できました。
2) RoHS2の第6条を適用して初めてこれを実行するに当たり、幾つかの基本的な視点の違いがあることが判明しました。
3) RoHSプロジェクトで要求される「完全な評価」がREACH規則における物質評価と同じ方法で実行されないことが委員会で明確になりました。
4) RoHSにおける物質評価の結果は科学をベースにした強固なものでなければなりません。しかし量的な影響評価は義務付けられません。特に、第6条(2)の規定では、評価において考慮される必要があります。
5) 今回、初めて方法を開発しプロジェクトで適用したことから、以下の事が結論付けられます。
・EUの市場に入ってきている電気電子機器に使用されている物質の実際の量に関する有効な情報は少ししかないので、電気電子機器に含まれる物質の量はもっともらしい範囲で推定しました。
・現状、欧州における廃電気電子機器の処理における有用な包括情報は多くありません。将来、物質評価をもっと詳しく行うためにはBATのデータが期待されます。破棄処理産業からの参考資料は現在改訂中です。これらのデータがないところで、最善の予想に基づく道筋を物質評価のために確立し利用しなければなりません。

RoHS指令の基で物質を特定し評価する場合は技術面を越えて 、今後RoHS2の附属書IIを改訂する時は 、以下の点を考慮することを提案します。

・委員会主導の定期的な改定作業は4年毎に行うべきです。これは、RoHS指令の適用除外に関して科学的、技術的進歩に適合するためです。
・規制物質のリスト更新に当たっては、廃電気電子機器に関わる期間において環境及び労働者に危険を及ぼすことがあるか否か、他の悪影響があるか否かなどを考慮して必要に応じて物質に優先順位を付けるべきです。
・電気電子機器に使用されるナノ材料による負の影響に関する最新情報を考慮する必要があります。
・優先規制物質は化学的な構造の類似点、毒物的特徴の類似点などを考慮して、それらを代表するグループや群で規制するべきです。
・詳細な評価によって危険性が確認されなかった場合でも、その使用量が増加している場合においては、将来の定期的に再評価するべきです。
・情報が入手出来なかったために、規制物質とし推奨できなかった物質についても、将来の定期的に再評価するべきです。
・委員会はEU加盟国の中で利害関係の強いNGO、コンサルタント、産業界などから最大12名による専門WGの設立を計画しています。専門WGはRoHS2附属書IIの改訂プロセスを担います。そして、専門WGの仕事はRoHS改訂作業をREACH規則の進捗及び他の化学物質規制(欧州化学品庁とその科学的な体制との情報交換を含む)との関係調整を行います。これは、扱う重要情報の不足解消のために戦略的に重要です。

 

まとめ

2011年7月1日に改正されたRoHS指令(RoHS2)の第6条の規定に従い、3年以内に附属書II収載の使用制限物質の追加収載物質に関する検討が行われることになっていますが、この作業はオーストリア環境省に委託され、関係者によるプロジェクトの検討によって、6段階の優先順位により24種類の次期候補物質がリストアップされました。これらの候補物質の中から、2014年6月30日までに、使用制限物質が選定され附属書IIに追加収載される予定ですが、第1優先物質8物質のうちフタル酸エステル類のDEHP, DBP, BBP及び臭素系難燃剤のHBCDDの4物質は追加収載が、既に決定しました。

なお、既に附属書IIに追加収載が決定している4物資の主な用途は以下の通りです。

・DEHP: (4 phthalates Di-(2-ethylhexyl) phthalate)、和名:フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)
(主な用途)塩化ビニル樹脂の可塑剤、油圧油、コンデンサーの誘電体、ケミカルライト用溶媒など
・DBP: Di-n-butyl phthalate、和名:フタル酸ジブチル
(主な用途)可塑剤、接着剤や印刷インキの添加剤など
・BBP: Butyl benzyl phthalate、和名:フタル酸ベンジルブチル
(主な用途)ポリサルファイド系樹脂の可塑剤、シーリング剤、コーキング剤、シーラント等
・HBCDD: Hexabromocyclododecane、和名:ヘキサブロモシクロドデカン
(主な用途)臭素系難燃剤

引用・参考資料

注意

情報一覧へ戻る