ホーム > 環境について > 環境関連情報 > 欧州REACH規則に対応するための企業の義務(2)
情報発信日:2009-01-30
REACH規則においては、すべての<物質>や、<「<調剤>に含まれる<物質>」に登録が義務づけられており、また高い懸念がある認可候補物質(SVHC)については届出の義務が課せられています。これら登録や届出を行った<物質>を製造または輸入する事業者をサプライチェーンのなかで川上事業者といいます。川上事業者より提供された<物質>は、川中事業者を経て、川下事業者により最終製品となりますが、このサプライチェーンのなかで川上事業者から川下事業者へ、また川下事業者から川上事業者へ適宜情報伝達を行うことがREACH規則では極めて重要な意味をもちます。最終製品にどのような<物質>がどの位含まれており、その製品が使用される過程において生体に対してどのような暴露シナリオが描かれているか、といった化学物質に対するリスク管理が強く求められているからです。
どのような情報伝達が求められているか、以下諸情報をもとに整理してみました。
1)以下のEU指令によって危険性の基準を満たす<物質>または<調剤>
※<物質>については、2010年までは現行の上記67/548/EECの危険有害性の分類が適用され、それ以降はEU GHSの危険有害性分類規則が適用されると見込まれます。
※<調剤>への適用はそれから4年ないし、5年後となると見込まれています。
2)REACH規則付属書XIII『難分解性、生物蓄積性、毒性物質及び極めて難分解性で高い生物蓄積性を有する物質の特定のための基準』に定められている基準のPBT物質『難分解性性・生体蓄積性・有毒性の物質』またはvPvB物質『非常に高残留性・高生体蓄積性物質』に該当する場合
※附属書XIV『認可の対象となる物質のリスト』に公表
上記「情報伝達が必要な<物質>または<調剤>」の、1)、または、2)に該当する場合はREACH規則に規定された安全データシートを川下事業者への最初の納品時に提供しなくてはなりません。
※安全データシートはEU域内で該当<物質>を製造または輸入する国の公用語によって記載され、年間10トン以上の場合にはさらに暴露シナリオを安全データシートに添付することが義務づけられます。
安全データシートが必要で無い場合でも最低限以下の情報提供が求められます。
川下事業者は川上事業者からの一方的に情報を受け取るだけでなく、川上事業者が<物質>の登録に必要な情報(使用量、用途、暴露シナリオなど)を積極的に提供することによって、川上事業者が想定しない用途に当該<物質>が使用されることにともなうリスクをできるだけ回避することが重要だと考えられるからです。
したがって、川下事業者は川上事業者から伝達された安全データシートやその他の情報に、自らの用途が記載されていない場合には川上事業者(<物質>、<調剤>の製造者)に自身の用途を伝達して登録などを行ってもらう必要が生じます。用途登録がない場合には、その<物質>が使用できなくなる可能性があります。
2009年1月10日現在、附属書XIV『認可の対象となる物質のリスト』に最初に記載された物質は15物質ありますので、まずはこの物質の含有量の確認を行う必要があります。含有量の確認は自ら分析するよりは川上事業者に提供を求めるのが筋ということになります。
したがって、川上事業者は<成形品>中に認可候補物質(SVHC)が0.1wt%を超えて含有される場合は、川下事業者や消費者に対して下記の情報の伝達義務が生じます。
1)川下事業者に対して
当該成形品を安全に使用するための十分な情報 (最低限、当該物質名称)
2)消費者に対して
当該成形品を安全に使用するための十分な情報 (最低限、当該物質名称)、要求があった場合45日以内に無償で提供する義務
したがって、上記1)、および、2)で伝達する情報は、川上事業者からきた情報を物質ごとに把握し、正しく伝達する必要があります。川上事業者からこない情報は、情報として伝達することはできないためで、REACHでは「No Data No Market」といっていますが、データ提供できない川上事業者はサプライチェーンから必然的に淘汰されてゆくことになりますので、この情報伝達の仕組みを作ることが極めて重要となります。
成形品に含まれる認可対象物質(SVHC)に関する伝達のための情報形式は、「成形品に含まれる物質に関する要求事項についてのガイダンス(Guidance on requirements for substances in articles」(PDF 508KB)、および、「川下ユーザーのためのガイダンス(Guidance for downstream users)」(PDF 180KB)に表形式で例示されていますが、JAMP(アーティクルマネジメント推進協議会)が推奨するMSDSplusなどの推奨統一フォーマットを利用するのがよいかと思います。
以上述べてきましたが、ハザード管理といわれるRoHS指令に対してREACH規則はリスク管理といわれ、使用される化学物質は使い方によって「毒にも薬にもなる」という考えが根底にはあるため、サプライチェーンの川上と川下の間で<物質>の性状、安全な使用方法などについて相互に十分なコミュニケーションを取ることによってリスクを回避することが求められているといってよいかと思います。そういう意味では従来の官による許認可制とはやや異なる法規制といえるかもしれません。