欧州REACH規則に対応するための企業の義務(1)
高懸念物質(SVHC)含有物品への対応
情報発信日:2008-12-22
(注意)
- REACH規則はあくまでもEUにおける法律ですので、日本国内で物品を製造・販売する場合には一切関係ありませんが、直接または間接的に機器や装置に組み込まれた形でEU圏内に輸出される場合に規制の対象になります。
- ただし、その場合もREACH規則の規制を受ける対象事業者はEU圏内で輸入を行う法人になりますので、国内の事業者はEU圏内事業者の協力者として位置づけられます。
- しかし、EUに輸出される物品のデータに関しては製造者である国内事業者が所有していますので、REACH規則をよく理解したうえで主体的に動かないと対応がうまくいかない可能性が多分にあります。
高懸念物質(SVHC)を含有する物品を製造・販売しようとする場合の義務
REACH規則 附属書XIV
REACH規則に対応して物品を製造・販売する場合には、含有するすべての化学物質が用途や安全性に関して登録されている必要がありますが、そのなかでも「人間と環境に対して非常に重要ですぐには元に戻せない影響を及ぼす可能性がある物質」を「非常に懸念の高い物質(Substances of Very High Concern)」(以下SVHC)と定義し、この物質として特定された場合には一般の物質と区分され、REACH規則の附属書XIVのリストに逐次追加されてゆきます。
2008年10月29日現在、附属書XIVには15物質がリストアップされており、欧州化学品庁(以下ECHA)のウェブサイトで確認できます。
「非常に持続的に非常に生体蓄積性が高い物質 Very Persistent and Very Bioaccumulative Substances(vPvB物質)」「残留性・生体蓄積性・有毒性物質:残留性(分解しにくい)、生体蓄積性(体内に蓄積する)、及び、有毒性をもつ非常に高い懸念がある化学物質 Persistent, Bioaccumulative and Toxic Substances(PBT物質)」や「発癌性 carcinogenic(癌を発生させる)、変異原生 mutagenic(遺伝子に損傷を与える)、生殖毒性 reproductively-toxic(生殖能力の減少や胎児への障害を起こす)が強く懸念される物質 Carcinogenic, Mutagenic, or Toxic to Reproduction Substances(CMR物質)」としての可能性が高い場合には、SVHCとして特定されます。
SVHCとして附属書XIVにリストアップされた「物質」自身、または、その物質を含有する「調剤」や「成形品」を製造・販売しようとする場合には、ECHAに「届出」を行う必要性があります。
「SVHC自身」またはSVHCを含有する「調剤」および「成形品」の製造者の義務
ECHAはSVHCのリスト公開に伴い、事業者に対して「潜在的な義務」の確認を行うように求めています。事業者の負う「潜在的義務」については2008年11月4日に改正を行っていますので、これを基に「物質」「調剤」及び「成形品」、とくに当工業会会員に関係の深い「成形品」について詳しく整理してみました。
- SVHCの「物質」・・・SVHCと特定された「物質」自身を製造・販売しようとする場合
対象物質がSVHCとして附属書XIVにリストアップされた日から
→「物質」の供給者はサプライチェーンの下流の顧客に「安全データシート:SDS」を発給する義務が生じます。
- SVHCを含有する「調剤」・・・SVHCを成分に含む複合物質を製造・販売しようとする場合
対象物質がSVHCとして附属書XIVにリストアップされた日から
→調剤に少なくとも1種類以上のSVHCを含み、その物質の状態が気体でない場合は0.1重量%、気体の場合は0.2容量%以上含有する場合に、供給者はサプライチェーン下流の顧客の要求により「安全データシート:SDS」を発給する義務が生じます。
- SVHCを含有する「成形品」・・・SVHCを含む成形品を製造・販売しようとする場合
対象物質がSVHCとして附属書XIVにリストアップされた日から
→成形品中に少なくとも1種類以上のSVHCを含み、その濃度が0.1重量%以上の場合には、成形品の供給者はサブライチェーン下流の顧客が利用可能な「成形品を安全に使用するための十分な情報」を、顧客(消費者)から要求を受けた場合には45日以内に提供する義務を負います。この情報には最低でも「物質名」を含む「成形品の安全な使用を確実にするためのもの」である必要があります。
2011年から
→成形品中に少なくとも1種類以上のSVHCを含み、その濃度が0.1重量%以上で企業ごとに1トン/年以上の量を生産または輸入する場合は、ECHAに届出を行う義務を負います。
※2010年12月1日以前に対象物質がSVHCとして附属書XIVにリストアップされている物質については、2011年6月1日までに届け出を行わなければなりません。
※2010年12月1日以後に対象物質がSVHCとして附属書XIVにリストアップされた物質については、公表後6ヶ月以内に届け出を行わなければなりません
ただし、以下の場合には届出の必要はありません。
- 成形品の生産者及び輸入者が、成形品の使用期間中や廃棄以降に人や環境に対する暴露を排除できる場合。
- 同一サプライチェーンまたは他のサプライチェーンで、その用途についてはすでに届出がなされている場合。
引用・参照情報
注意
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