環境配慮設計と環境ラベル

2018年5月28日

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～当工業会の環境ラベルが環境省HPに～

はじめに

2018年2月22日付けで、当工業会の「環境配慮バルブ登録制度」のラベルマーク及び制度概要が環境省のホームページに登録・掲載されました。

これによって、当工業会の「環境配慮バルブ登録制度」が、国際標準化機構（ISO）が「環境表示に関する国際規格」として国際的にルール化している3つのタイプのうち、「事業者等の自己宣言による環境主張」であるISO 14021タイプII環境ラベル表示（我が国ではJIS Q 14021）に準拠していることが環境省からも認められたものと言えます。

当工業会環境配慮バルブ登録制度のラベルマーク

今後は、会員の皆様もさまざまな機会を通して当工業会及び会員のステークホルダーに広く認知活動を展開して頂くと同時に、この機会に当該制度のますますの活用をお願いしたいと思います。

さて、過去にも本コラムで「環境ラベル」については説明しておりますが、今回はこの機会に当工業会において「環境配慮バルブ登録制度」を設けた背景となる「環境配慮設計」や「環境ラベル制度」などについて、再度会員の皆ようにご理解を頂くために、おさらいをしてみたいと思います。

環境配慮設計

<背景>

過去において、工場からの排水や排気ガス、廃棄物に含まれた有害物質が原因となり引き起こされた水質、大気、土壌等の汚染は近隣の住民などに健康被害をもたらしました。この環境汚染問題は「公害」と呼ばれました。

これを防止するために工場などから排出される汚染物質に対するさまざまな規制が行われました。生産事業者などは排水や排ガスの処理装置を設置してこの規制に対応してきました。このように製造工程の最終段階で対策を行うことを「エンド・オブ・パイプ」と呼びます。

しかし、1990年代に入ると、大量生産・大量消費によるエネルギーや資源の枯渇、大量の廃棄物、温室効果ガスによる気象変動、生物多様性の危機など地球全体に及ぶ環境問題が提起されるようになってきました。

さらに2000年代に入ると、再生可能エネルギーの利用や廃棄物の再資源化を中心とした「循環型社会」や「低炭素社会」への転換が求められるようになってきました。また有害化学物質の利用制限を行う動きも加速度的に進んできています。

このような流れの中で対応策の1つとして国際標準化機構（ISO）が経済活動での環境配慮を定めた規格シリーズ（ISO14000シリーズ）に環境適合設計（DfE：Design for Environment）を定めました。この環境配慮設計とは製品のライフサイクル（原料調達から製品の製造、運搬、使用、廃棄・リサイクルまで）やサプライチェーン全般に渡り環境に配慮さいたモノ作りを求めるものとなっています。

<技術的手法>

製品が環境にどの程度の負荷を与えるかは、その製品の設計の良し悪しによりほぼ決定してしまうとはいえ、環境に配慮した設計が極めて重要になってきています。環境配慮設計を行う場合、一般的に例えば、次のような項目に留意します。

素材・材料レベル

・使用材料の量を出来るだけ少なくする

・可能な限り同一素材を使う

・再資源化のために分解しやすくする

・再生可能材料を使用する

・有害化学物質を含む材料を出来るだけ使わない

・希少資源を使わない／減量する

部品レベル

・部品数を出来るだけ減らす/軽量化を図る

・規格化・標準化・共通化を図る

・分解し易い結合方法を使う

製品レベル

・使用時の省エネ化を図る

・部品点数の削減

・長寿命化

※当会の環境配慮設計の考え方については「バルブ製品アセスメントガイドライン」をご参照ください。

<環境配慮設計を行うメリット>

環境配慮設計には、使用材料の重量をできるだけ減らす、部品点数を減らす、部品を規格化・共通化する、部品の組立て・分解の簡易化などコストダウンと共通する項目が多く見られます。さらに、国や自治体が環境に配慮した製品を優先的に購入することを定めた「グリーン購入法」や、大手民間企業が積極的に進める「グリーン調達」などにおいて、優位性を持つ事ができます。また、このような製品を多く持つことによって、投資家や金融機関、顧客などに対する企業のブランドイメージを高める事ができます。

環境ラベル制度

　上述した「環境に配慮して設計した製品」であることを消費者やステークホルダーに広く認識してもらうため、カタログや製品本体または梱包に表示するマークを「環境ラベル」といいます。皆さんの身近にある商品を手に取って頂くと、このようなマークを見ることができるかも知れません。

図1　いろいろな環境ラベル（出典：環境省）

「環境に配慮して設計した製品」であることを主張するこれらのマークを、何の根拠もなく、自分勝手に濫用すると、悪質な場合には「景品表示法」により罰せられることがあります。また消費者から「色々なマークがあるけれど、どんな基準に従って、どのように評価したのかわからない」というようなクレームもあります。このため、環境表示を行う場合には、JIS（日本工業規格）に示される以下の3つの規格からいずれかを選択し、かつ環境省が示す「環境表示ガイドライン」に従って行うのが一般的な手順と言えます。

出典：　環境ラベル制度について　地球環境負荷低減のために　（日本バルブ工業会、2006年7月31日）

詳細は以下のJIS規格を参照してください。
・JIS Q 14020　環境ラベル及び宣言「一般原則」
・JIS Q 14024　環境ラベル及び宣言「タイプI 環境ラベル表示　原則及び手続き」
・JIS Q 14021　環境ラベル及び宣言「自己宣言による環境主張（タイプII環境ラベル表示）」
・JIS Q 14025　環境ラベル及び宣言「タイプIII　環境宣言　原則及び手順」
・JIS Q 17050-1　適合性評価「供給者適合宣言-第1部：一般要求事項」

【関連規格】
・JIS Q 14006　環境マネジメントシステム「エコデザインの導入のための指針」
・JIS C 9910　電気・電子製品の環境配慮設計
・JIS C 9914　オーデオ、ビデオ、情報及び通信技術機器「環境配慮設計」

上表で示した通り、タイプI及びタイプIIIは第三者が介在し、個別の製品ごとに高い認証費用が発生するため、世界的にみても実施されている例は少なく、大半の環境表示は自己宣言によるタイプIIによって行われています。

このタイプIIの自己宣言による環境表示は事業者が独自に定めた製品アセスメントマニュアルに従って行っても構いませんが、環境省が公表している「環境表示ガイドライン」には購入者に対する信頼性を高めるために、複数の事業者または工業会において自主的に取り決めた、評価項目・方法や評価基準を基に従って実施する方が望ましいと記載されており、今回本工業会が実施に踏み切った「環境配慮バルブ登録制度」はこれに則ったものであり、これが認められて環境省のHPに掲載されました。

国内外における環境配慮設計

海外においても環境配慮設計制度は広がりを見せており、EU域内においてはエネルギー消費量を大幅に抑えることを目的として「エネルギー使用製品に対する環境配慮設計指令（EuP指令2005/32/EC）」が告示され、その後、対象とする製品の適用範囲を拡大した「エネルギー関連製品に対する環境配慮設計指令（ErP指令2009/125/EC）」が2009年10月31日に告示され、同11月20日に発効しました。

さらに進んで、全ての製品や組織に対して「製品やサービスの環境負荷を一定の算定基準で数値化し、製品への表示の義務化等」が検討されており、「環境フットプリント制度」と言われています。環境フットプリント制度は一種のLCA（ライフ・サイクル・アセスメント）で、現状では製品の生涯における二酸化炭素の排出量だけを意味しており、LCA＝カーボンフットプリントとほぼ同義語として使われています。しかし、現在EUで検討されている環境フットプリントは、地球環境に影響を与えるのは二酸化炭素以外にもオゾン層破壊物質や生体に有害な物質、微粒子物質など14項目が対象として検討されています。また、製品だけでなく、組織的に事業活動を行う事業者も対象として検討されています。

国内においては、国の行政機関や独立行政法人などの機関及び地方自治体などが物品などを購入する場合には、環境に配慮した製品を優先的に購入するように求める「グリーン購入法」が定められています。

また「消費者が環境配慮型製品の選択を容易にすることが出来る環境情報の提供方法及びその内容に関する検討」が継続して行われており、環境省の「環境表示ガイドライン」の制定もこの一環と言えます。

これに対応する制度としては業界・製品群に対するJISによる環境配慮設計化の道もあり、
・JIS C 9910 電気・電子製品の環境配慮設計
・JIS C 9914 オーデオ、ビデオ、情報及び通信技術機器「環境配慮設計」
等がありますので、バルブの環境配慮設計をJIS化する道も可能性があると言えます。

工業会単位では、(社)日本自動車工業会、(財)家電製品協会、(社)日本ガス石油機器工業会、キッチン・バス工業会、(社)電子情報技術産業協会などを始めとして、多くの工業会が製品アセスメントガイドラインを制定しています。

まとめ

過去において、工場からの排水や排気ガス、廃棄物に含まれた有害物質が原因となり引き起こされた水質、大気、土壌等の汚染は近隣の住民などに健康被害をもたらしました。この環境汚染問題は「公害」と呼ばれました。その後、規制が行われ、工場からの汚染物質の垂れ流しは種々の対応によって解消されてきました。

しかし、1990年代以降になると大量生産・大量消費によってエネルギーや資源の枯渇、大量の有害廃棄物、温室効果ガスによる気候変動、生物多様性の危機など地球規模での環境問題が次々に浮上してきました。

このような状況において、再生可能エネルギーの利用や廃棄物の再資源化などを中心とした「持続可能な開発」や「循環型社会」、「低炭素社会」と言った方向への転換が余儀なくされてきました。

このため、モノ作りにおいても、製品のライフサイクルやサプライチェーン全体を通して環境負荷の少ない製品が求められるようになって来ており、環境に配慮した設計が重要になってきました。

当工業会では、この状況を鑑み、環境に配慮したバルブとはどう在るべきかを検討し「バルブ製品アセスメントガイドライン」を定めるとともに、これに適合したバルブには環境に配慮した設計を施した証として当工業会独自のラベルマークを表示できる「環境配慮バルブ登録制度」をスタートさせました。

今回、この制度及びシンボルマークが環境省のホームページに登録されましたので、会員の皆様もこの機会に是非、環境省にも認められた「環境配慮バルブ登録制度」を大いに利用して頂きたいと思います。

また既に利用されている会員の方々には自社のHPを利用するなどして、代理店・販売店、ユーザー等にも積極的にこの制度のPRをして頂きたいと思います。

引用・参考資料

環境ラベル等データベス　（環境省）
環境ラベル等データベス「事業者団体等による取組」　（環境省）
環境表示ガイドライン　（環境省）
環境表示ガイドライン（改訂2版）　（環境省、2010年1月）
環境表示ガイドライン (平成25年3月版) 　（環境省、2013年3月）
循環型経営促進基盤整備事業「環境適合設計に関する情報提供基盤の整備」　(経済産業省、2006年3月)
環境配慮バルブ登録制度について　（日本バルブ工業会）
環境ラベル制度について　地球環境負荷低減のために　（日本バルブ工業会、2006年7月31日）
製品アセスメントガイドラインとは　その背景と周辺について　（日本バルブ工業会、2014年5月26日）
バルブ製品アセスメントガイドライン第3版　（日本バルブ工業会、2016年9月9日）
環境配慮設計規格、ガイドライン等の動向及び適合性評価手法に関する分析・検討　（経済産業省）
ISO/JIS Q 14020 環境ラベル及び宣言　一般原則　（日本規格協会）
ISO/JIS Q 14024 環境ラベル及び宣言　タイプⅠ環境ラベル表示　原則及び手続き　（日本規格協会）
ISO/JIS Q 14021環境ラベル及び宣言　自己宣言による環境主張（タイプⅡ環境ラベル）　（日本規格協会）
ISO/JIS Q 14025環境ラベル及び宣言　タイプⅢ環境宣言　原則及び手順　（日本規格協会）

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