EUのエコデザイン規則が施行

～従来のエコデザイン指令との違いは～

2024年10月11日

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I.　はじめに

EU委員会は2024年7月18日付で「持続可能な製品のためのエコデザイン規則（ESPR）」を発効したとする発表を行いました。「エコデザイン規則（ESPR）（EU） 2024/1781」が施行されたこと及びこの規則は、従来の「エコデザイン指令」を廃止し、適用対象をエネルギー関連製品だけではなく、ほぼ全ての製品に拡大していること、そしてこの規則が「より環境的に持続可能な循環型製品に対する欧州委員会のアプローチの基礎となるものであることを示しました。

エコデザイン指令に関しては、本コラム2009年9月24日付け「EUにおける環境配慮設計指令（EuP）動向#6-使用機器のエコ・デザインに関する指令‐」に記しましたが、2005年7月に「EU域内で流通するエネルギー多消費製品に対して、環境に配慮した設計を要求する「エネルギー消費型製品（Energy Using Products／EuP）のエコ・デザインに関する枠組み指令」、通称「環境配慮設計指令（EuP指令）案」が「エコデザイン指令（2005/32/EC）」として採択されたのが始まりです。今回は「エネルギーを消費する製品」だけではなく、ほぼ全ての製品を対象にし、「指令」から「規則」へとより強い環境法規制として再生されたようですので、概要についてお知らせします。

II.　「2005年エコデザイン指令」と「2024年エコデザイン規則」の違い

「2005年エコデザイン指令」と「2024年エコデザイン規則」の違い
注）エコデザイン規則は、枠組みを定めたものであり、実装については、今後順次示される予定なので、逐次確認をする必要があります。

III.　エコデザイン規則

以下、1～7はEcodesign for Sustainable Products Regulation Making sustainable products in the EU the norm、EU委員会からの引用です。

1.　概要

2024年7月18日に発効した持続可能な製品のためのエコデザイン規則（ESPR）は、より環境的に持続可能で循環的な製品に対する欧州委員会のアプローチの基礎となります。

製品とその使用方法は、環境に大きな影響を与える可能性があります。したがって、EU での消費は、気候変動と汚染の大きな原因となる可能性があります。

エコデザイン規則は、 2020年循環経済行動計画の目標を達成するための中核となる一連の措置の一部です。これらは、EUが環境と気候の目標を達成し、材料使用の循環率を2倍にし、2030年までにエネルギー効率目標を達成することに貢献します。

2.　目的

ESPR（“Ecodesign for Sustainable Products Regulation”以下「エコデザイン規則」と略）は、 EU 市場に投入される製品の循環性、エネルギー性能、その他の環境持続可能性の側面を大幅に改善することを目指しています。

そうすることで、地球をより良く保護し、より持続可能なビジネスモデルを促進し、EU経済全体の競争力と回復力を強化するための大きな一歩が踏み出されることになります。

持続可能な製品は、次の特性の1つ以上を示す可能性があります。

エネルギー消費が少ない
長持ちする
簡単に修理できる
部品は簡単に分解でき、再利用できる
懸念物質の含有量が少ない
簡単にリサイクルできる
リサイクル素材を多く含む
ライフサイクル全体に渡って炭素と環境への影響が少ない

3.　法律

エコデザイン規則は、従来のエコデザイン指令 2009/125/ECに代わるもので、特定の製品グループにエコデザイン要件を設定するための枠組みを確立します。

これにより、ほぼすべてのカテゴリーの物理的商品（規則178/2002で定義されている食品や飼料などの一部の例外を除く）に対して、「エコデザイン要件」と呼ばれるパフォーマンスと情報の条件を設定できるようになります。これには以下が含まれます。

製品の耐久性、再利用性、アップグレード性、修理性を向上させる
製品のエネルギー効率と資源効率を高める
循環性を阻害する物質の存在に対処する
リサイクルコンテンツを増やす
製品の再製造とリサイクルを容易にする
炭素と環境フットプリントに関するルールを設定する
製品の持続可能性に関する情報の入手可能性を向上させる

十分な共通特性を共有する製品グループの場合、フレームワークでは水平ルールを設定できます。
エコデザイン規則には、他にもいくつかの新しい措置が含まれています。

4.　関連事項

4-1．デジタル製品パスポート
エコデザイン規則は、製品、部品、材料のデジタルIDカードであるデジタル製品パスポート（DPP）を導入します。これは、製品の持続可能性をサポートし、製品の循環性を促進し、法令順守を強化するための関連情報を保存するためです。

この情報は電子的にアクセス可能となり、消費者、製造者、当局が持続可能性、循環性、規制遵守に関してより情報に基づいた決定を下すことが容易になります。これにより、税関当局は輸入製品のDPPの存在と真正性を自動的にチェック出来るようになります。

4-2．売れ残った消費者向け製品の破棄に対処するための規則
EU では売れ残った製品の多くがそのまま破棄されており、これは貴重な資源を無駄にする行為です。エコデザイン規則は EU で初めて、売れ残った繊維製品や履物の破棄を禁止し、証拠によって必要であると示された場合には他の分野でも同様の禁止措置を導入することで、この行為に対処するための措置を導入します。

この法律は、あらゆる製品分野の大企業、そして最終的には中規模企業に、廃棄する製品の数や重量、廃棄理由などの年間情報を自社のウェブサイトで開示することを義務付ける。

4-3．グリーン公共調達
EUの公的機関は、工事、物品、サービスの購入に約1.8兆ユーロを費やしています。

エコデザイン規則は、規制対象となる製品を購入する EU 当局に対して、義務的なグリーン公共調達基準を設定できるようにすることで、これらの資金をより持続可能な方向に導くのに役立ちます。

これにより、持続可能な製品に対する需要が大幅に高まり、企業がこの分野に投資する動機がさらに高まる可能性があります。

5.　実装

エコデザイン規則は枠組み法であり、具体的な製品規則は、時間の経過とともに段階的に製品ごとに、または同様の特性を持つ製品グループに基づいて水平的に決定されます。

このプロセスは、まず優先順位付けの作業から始まり、その後、一定期間内にエコデザイン規則に基づいて対処すべき製品と対策を定めた作業計画の公表が行われます。その後、包括的な計画、詳細な影響評価、利害関係者との定期的な協議に基づいて、製品規則の開発が開始されます。これは、エコデザインフォーラムを通じて行われます。

※エコデザインの実装の詳細は「Implementing the Ecodesign for Sustainable Products Regulation （EU委員会）」を参照下さい。

6.　2024エコデザイン規則の対象となる具体的な製品リスト

鉄、鉄鋼、アルミニウムなどの金属製品

これらの金属製品は、リサイクルや再利用の観点から重要です。

繊維製品

特に衣類と履物が対象となります。

家具

マットレスを含む家具が対象です。

タイヤ

自動車やその他の用途に使用されるタイヤが含まれます。

洗剤、塗料、潤滑剤、化学品

これらの化学製品も対象です。

エネルギー関連製品

家電製品や産業用機器などが含まれます。

情報通信技術製品とその他の電子機器

コンピュータやスマートフォンなどが対象です。

7.　適用除外

食品、飼料、医薬品、生きた植物や動物、他の法令で規制されている自動車などには適用されません（第1条2項）。
（筆者注）　EUにおいては水栓、接手、パイプなど水道用機材は主に飲料水指令（Directive （EU） 2020/2184）によって規制されています。この指令は、飲料水の品質を確保し、人々の健康を守るための基準を定めています。この指令には、飲料水と接触する材料に関する規定も含まれており、水栓やパイプなどの機材が安全であることを保証するための基準が設けられています。従って、二重規制となる可能性があるため、エコデザインの対象とはならない可能性がありますが、今後の実装状況を確認する必要があると思われます。

IV.　まとめ

（1）EU委員会は、2024年7月18日付でエネルギー多消費型製品に対する「エコデザイン指令 2009/125/EC」を廃止し、「エコデザイン規則（ESPR）（EU） 2024/1781」を発効したと発表した。
（2）従来のエコデザイン指令はエネルギーを多消費する製品を対象としたが、今回のエコデザイン規則はほぼ全ての製品を対象とし、また「指令」から「規則」へと、より強い法規制として再生された。
（3）「エコデザイン規則」）は、 EU 市場に投入される製品の循環性、エネルギー性能、その他の環境持続可能性の側面を大幅に改善することを目指している。
（4）そうすることで、地球をより良く保護し、より持続可能なビジネスモデルを促進し、EU経済全体の競争力と回復力を強化するための大きな一歩が踏み出されることになる。
（5）適用、実装については枠組みが示されただけであり、今後詳細が順次示されると思われるので、フォローが必要となる。
（6）他の法律により規制が行われており、二重規制の恐れがある場合は適用除外となる。水栓金具、接手、管など飲料水指令（Directive (EU) 2020/2184）により規制を受けている製品については、適用除外の可能性があるが、水道用以外のバルブや接手などの金属製製品は対象となる可能性が高い。今後の実装状況により確認する必要がある。

引用・参考資料

Regulation (EU) 2024/1781 of the European Parliament and of the Council of 13 June 2024 establishing a framework for the setting of ecodesign requirements for sustainable products, amending Directive (EU) 2020/1828 and Regulation (EU) 2023/1542 and repealing Directive 2009/125/EC　（EU官報、2024年6月13日）
欧州で始まった「製品の身分証明書」制度　『DPP』について　（NAGASEグループPLAPLAT）
Ecodesign for Sustainable Products Regulation　（EU委員会）
Sustainable products to become norm for consumers as new law enters into force　（EU委員会）
Implementing the Ecodesign for Sustainable Products Regulation　（EU委員会）
EUのエコデザイン規則、7月18日から施行　（JETROビジネス短信、2024年07月16日）
【EU】欧州委員会、新エコデザイン規則を採択。家電10品目で製品ライフサイクル長期化を義務化　（Sustainable Japan、2019年10月5日）
EUの新エコデザイン規則：持続可能な製品への大きな一歩　（Nemko）
EUにおける環境配慮設計指令（EuP）動向#6-エネルギー使用機器のエコ・デザインに関する指令‐　（日本バルブ工業会、2009年9月24日）

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