ECHAがPFAS規制案を公開　#1

～2023年3月22日より6ヶ月間の協議が開始～

2023年3月14日

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1.　はじめに

ECHA（欧州化学品庁）は、2023年1月13日付で5ヶ国（EU加盟4ヶ国：デンマーク、ドイツ、オランダ、スウェーデン及び非加盟のノルウェー）当局より提出されていた約10,000種類にも及ぶPFAS（パーフルオロアルキル物質及びポリフルオロアルキル物質）規制案の内容を、2023年2月7日付けでウェブサイト上に公開しました。

このPFASには当工業会会員企業の製品にも関係の深い、PTFE、PVDFなどのフッ素樹脂、及び、FKMなどのフッ素ゴムも規制対象候補として含まれています。また、これらのフッ素樹脂やフッ素ゴムの原料物質、添加剤、重合開始剤、分解物なども候補物質として含まれている可能性がありますので、状況によっては原料メーカーや加工メーカーとも連携して対応する予定です。

次の予定としては、2023年3月22日より6ヶ月間、ウェブ上での公開協議が行われ、利害関係者には意見を提出する機会が与えられますが、実際にはECHAが意見をまとめた後、加盟国の投票、EU委員会、EU理事会の審議などを経るため、REACH規則として成立するまでには数年を要すると思われます。さらに制限発効後、1年半の移行期間が設けられ、代替品がない場合には状況により5年または12年の猶予期間が設定されています。ECHAは「EU の歴史の中で提案された最も広範な制限の1つです」と述べており、社会経済的な影響と環境的な影響のバランスをどのように考えるのか、実際には多くの議論がなされることが予想されます。

この提案書は本文が約200ページ、附属書及び補遺が10編あり、全部で1,500～1,600ページから構成されており、また草案ですので、全文について和訳して解読しても「労多くして益少なし」と思われます。そこで本コラムでは、とりあえず今回ECHAが発表したニュースと説明文の要約について記し、以降公開協議の進捗などについて、都度お知らせするようにして行きたいと思います。

2.　ECHAのニュース（要約）（出典：ECHA publishes PFAS restriction proposal）

ECHAがPFAS制限案を発行
（1）提案されている約10,000のパーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質（PFAS）の制限の詳細は、現在 ECHA のウェブサイトで入手できます。ECHA の科学委員会は、人間と環境へのリスク、および社会への影響という観点から、この提案の評価を開始する予定です。
（2）この提案の目的は、デンマーク、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの当局によって作成され、2023年1月13日にECHAに提出されました。この提案は、環境へのPFAS排出を削減し、製品とプロセスを人々にとってより安全にすることです。
（3）提案の範囲内のすべてのPFASは、環境中で非常に難分解性です。それらの放出が最小限に抑えられない場合、人、植物、動物はより多く暴露され、制限を行わない場合、人の健康と環境に悪影響を与えるレベルに達します。当局は、対策が講じられない限り、今後30年間で約440万トンのPFASが環境に放出されると推定しています。

以降の予定
（1）ECHAの科学委員会が、2023年3月22日より6 ケ月間の協議が開始する予定で、「人々の健康と環境へのリスク」と「社会経済的な影響」の両面から協議を行い、協議中に受け取った利害関係者からのコメントも含めて意見をまとめて行きます。
（2）意見が採択されると、欧州委員会に送られ、欧州委員会はEU加盟国とともに潜在的な制限について決定します。
（3）2023年4月5日にオンライン説明会が開催され、制限プロセスについて説明し、相談への参加に関心のある方を支援します。

2023/3/22　提案された規制の協議は、ECHA の委員会による適合性チェックの後に開始されます。
2023/4/5　制限プロセスを説明し、関心のある人がウェブ協議に参加できるようにします。
2023/3　ECHA のリスク評価委員会（RAC）によるリスクの評価。
2023/3　ECHA の社会経済分析委員会（SEAC）による提案の社会への影響の評価。これには、SEAC の意見書草案の60日間の協議が含まれます。

科学委員会の評価は、委員会で意見を採用した時点で終了します。

（4）科学委員会は、REACH委員会での議論のために、EU加盟国の立法提案を準備します。最終的に、加盟国は規制について投票します。規制が採択される前に、欧州議会および理事会によって精査されます。
（5）提案の詳しい説明“Registry of restriction intentions until outcome”は以下のとおり。

3.　ECHAの発表した提案の詳しい説明文（要約）（引用：Registry of restriction intentions until outcome）

結果が出るまでの期間における制限意図の登録
（1）この文にはECHAが受け取った意図と附属書XVによる制限提案がリスト化されています。
（2）事前通知により、利害関係者は後でコメントするための計画と準備をすることができます。
（3）利害関係者は、制限意図の通知から、制限協議を通じて提案の進捗状況をフォローすることができます。
（4）利害関係者は、制限提案の準備中および協議中に関連情報を提出することをお勧めします。意図に記載されている範囲に対する免除を動機付けるための情報は、関係書類の準備段階で受け取るのに特に役立ちます。

CLP規則の附属書VIのインデックス番号	（1）PFAS類とは以下に定義される：少なくとも1つの完全フッ素化メチル(CF3-)またはメチレン(-CF2-)炭素原子を含む物質（H/Cl/Br/Iはそれに結合していません）。（2）次の構造要素のみを含む物質は、提案された制限の範囲から除外されます。 CF3-X or X-CF2-X’ 注1）X= -ORまたは-NRR ‘およびX =メチル(-CH3)、メチレン(-CH2-)、芳香族類、カルボニル類(-C(O)-)、-OR’’、-SR’’または–NR’’R’’’ 注2）R/R’/R’’/R’’’は水素(-H), メチル(-CH3), メチレン(-CH2-), 芳香族類またカルボニル類(-C(O)-).
制限範囲の詳細	制限はPFASの製造、上市、使用の禁止
制限の理由	PFAS類は、難分解性の物質であるため、不可逆的な環境への曝露と蓄積を引き起こします。水の溶解度と可動性のために、表面、地下水と飲料水と土壌の汚染がEUだけでなく、世界的にも発生し続けます。環境に放出された場合PFAS類を除去することは非常に困難で莫大なコストがかかることが証明されています。さらに、一部のPFASは、人間の健康と環境の両方に関して、有毒および／または生体蓄積物質とされています。制限を行わなければ、それらの濃度は増加し続け、それらの毒性と汚染の影響は元に戻すことが困難になります。
提案書及び附属書 ※この附属書XV制限関係書類は、協議の対象となる前に、ECHAの委員会（RACおよびSAC）による適合チェックの対象となります。	（1）　附属書A（全302ページ、製造と用途）（2）　附属書B（全699ページ、ハザードとリスクの情報）（3）　附属書C（現在は内容なし、基準値）（4）　附属書D（現在は内容なし、組合全体としての行動の正当化）（5）　附属書E（全534ページ、インパクト評価）（6）　附属書F（全17ページ、仮定、不確実性および感度）（7）　附属書G（全11ページ、利害関係者情報）（8）　付録E（エクセルファイル、用途別にPFASを分類）（9）　付録G1（全51ページ、スウェーデン提出、PFA制限のオプションの分析をサポートする証拠を呼びかけ）（10）　付録G2（全150ページ、スゥエーデン提出、PFAS規制の2回目の利害関係者協議）（11）　附属書XV報告書（全211ページ、この資料が本文です。）

まとめ

（1）2023年2月7日付けで5ヶ国共同提案のPFAS類規制案がECHA（欧州化学品庁）のウェブサイト上に公開された。
（2）提案の規制対象候補物質は約10,000種類にも及び当工業会会員の製品に深く関わりのあるフッ素樹脂やフッ素ゴムなども規制対象候補物質に該当する。さらにこれらの物質の原料、添加物、重合開始剤、分解物なども規制対象候補になる可能性もある。
（3）提案に対する協議は2003年3月22日から6ヶ月間の公開オンライン協議で行われ、希望する利害関係者も参加し、資料を提供することができる。参加希望者は2023年4月5日のオンライン説明会で参加表明できる。
（4）提案の協議は、ECHAのリスク評価委員会（RAC）と社会経済分析委員会（SEAC）が個別にリスク面と社会経済面の両面から実施する。
（5）ECHAにおける意見集約後は、REACH委員会、EU委員会、EU理事会などの協議を経てEU加盟国の賛否投票など、結論が出るまでに相当な年月が見込まれる。さらに、提案では規制対象物質に対し代替物質の開発期間等を考慮し、移行期間1年半、代替物質の有無により5年または12年の猶予期間が提案されており、実際のREACH規則による規制が実施されるまでには相当な期間を要するものと思われる。
（6）ただし、PFOA、PFOSなど「代替品がすでにある、大量に使用されている、毒性がハッキリしている」など緊急性の高い物質は個別に先行規制が進行している。
（7）提案は、あくまでも草案であり、協議の過程でかなりの修正が施される可能性は高いと推定される。
（8）提案の本文である附属書XV報告書は211ページあるが、冒頭の12ページほどに“Summary”として要約されており、さらに実際の規制提案は4ページ程の表にまとめられているので、興味のある場合は一読されたい。

引用・参考資料

ECHA publishes PFAS restriction proposal　（ECHA、2023-2-7）
Registry of restriction intentions until outcome　（ECHA、2023-2-7）
欧州化学物質庁、欧州各国がPFASの規制案を提出と発表　（環境展望台／国立環境研究所、2023-1-13）
ＥＵ、ＰＦＡＳ禁止案　「欧州最大級の規制」へ　（沖縄タイムス、2023-2-11）
ＥＵが「永遠に残る化学物質」禁止案、業界に代替物確保求める　（ロイター通信、2023-2-7）
ECHA、5つの国家当局からPFAS規制案を受領 | EU | 国際規制情報　（TÜV、2023.1-14）
ECHAがPFAS制限に関する案を公表　（個人ブログ）
ECHAのPFAS制限に関する案の構成と大枠　（個人ブログ）

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ECHAがPFAS規制案を公開 #1

～2023年3月22日より6ヶ月間の協議が開始～

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