1. 概要
1-1. 適用除外の延長申請者
(1) Bourns Inc.
自動車用電子部品、回路保護、磁気および抵抗製品、センサーおよび制御装置のグローバルメーカー
(2) The Umbrella Project
世界の48の会社/事業組織/事業者団体(工業会)が連名で構成
1-2. 具体的な対象銅合金例
(1) 鉛真鍮(銅-亜鉛-鉛合金;標準の鉛含有量3.3%)
(2) 鉛青銅(銅-スズ-鉛合金)
(3) 有鉛洋白(銅-ニッケル-亜鉛-鉛合金)
(4) 有鉛銅ベリリウム(銅-ベリリウム-鉛合金)
1-3. 適用除外延長に反対する意見者
(1) 三菱マテリアル(株)
(2) スウェーデン化学庁
(3) ノルウェー環境庁
2. 適用除外延長申請理由
2-1. 鉛含有の必要性
鉛は切削加工時に潤滑剤として重要
切削工具の摩耗損傷、切削屑排出難、特殊工具必要、びびり、バリ、エッジの発生、材料の亀裂防止、被削性 向上など
2-1-1. 機械特性
耐食性を高め、応力緩和挙動または機械的変形に影響を与える。弛緩、腐食、潤滑性において代替品では対応できない。
2-1-2. 電気特性
エコブラスは有鉛真鍮よりも電気伝導率と熱伝導率が低い。
2-1-3. 経済性
切削屑などのリサイクルルートは決まっているが、鉛低含有銅合金は別途のリサイクルルートを作る必要があり経済性が悪い。
鉛低含有銅合金用の特殊工具、加工機械・設備などの新規投資は中小企業には困難。
2-1-4. 他の指令との整合性
廃自動車指令(ELV)2000/53 / EC(附属書IIに適用除外3として記載)には、「最大4重量%の鉛を含む銅合金」 という同じ表現で対応する適用除外申請が認められた。
2-1-5. その他
The Umbrella Projectのメンバーとしてスイス時計協会は一般的な加工では鉛フリー合金は加工が難しく、導電率も悪い。またムーブメントの耐久性で代替困難。その他、メンバーもマイクロサイズの加工公差、摺動性など個々の技術問題を主張。
3. 適用除外延長反対理由
3-1. 三菱マテリアルの主張(低鉛銅合金「エコブラス」で代替が可能)
(1) エコブラスはC36000と同等の機械加工性と生産性を備えている。
(2) 加工条件にもよるが、C36000製の部品と同等の表面品質と寸法精度を提供する。
(3) C36000よりも優れた表面粗さを提供する。
(4) 0.4〜10gの15個の小さな部品のテスト加工に関する情報を提供。旋削、穴あけ、ねじ切り、ローレット加工、および溝入れを行い、工具にわずかな損傷しかな
かったと結論。
(5) 電気伝導率改善にはエコブラスよりも導電率が高く、電気・電子部品に適用できる「グロブラス」も開発した。
3-2. スウェーデン化学庁、ノルウェー環境庁
鉛は「RACH規則における制限物質エントリNo.63」の対応するレベルに適合させる必要がある。
適用除外の対象や範囲を絞るべき。
※適用除外延長申請者と延長反対者の議論の経過やコンサルの意見などの協議経過は省略しますので、必要に応じて「最終報告書」の原文で確認してください。
4. RoHS指令における適用除外を正当化できる要件
RoHS指令第5条(1)(a)は、以下の基準の少なくとも1つが満たされた場合に適用除外を正当化できると規定しています。
(1) 設計変更または附属書IIに記載されている材料または物質を必要としない材料およびコンポーネントによるそれらの除去または置換は、科学的または技術的に実行不可能である。
(2) 代替品の信頼性は保証されていない。
(3) 代替によって引き起こされる環境、健康、および消費者の安全への悪影響の合計が、環境、健康、および消費者の安全への悪影響の合計を上回る可能性がある。
5. 結論
(1) 少なくとも一部のアプリケーションに使用できる代替品が利用可能である。
(2) 代替品(Ecobrassなど)を使用するには、機械加工プロセスを調整する必要がある。
(3) Ecobrassへの置換には、現在、特定のアプリケーションのみへの適用が可能と理解される。
(4) 電気的機能を備えた部品に関しては、鉛フリー銅合金(高亜鉛合金)が、単純な形状および伝達力を備えた部品に適用可能である。またグロブラスの試験をする必要がある。
(5) 代替材料を使用した場合に経済的な問題があることを理解。
(6) 電気電子製品において鉛含有銅合金は非常に広範囲な用途があり、今回の協議では代替品の適用範囲を絞り込む事が出来なかった。
(7) ELV(廃自動車)指令との整合性は考慮する必要がある。
6. 勧告
Exemption formulation(適用除外の定式):「最大4重量%の鉛を含む銅合金」
Duration(期間):すべてのカテゴリで2026年7月21日に有効期限が切れます
ただし、REACH規則の附属書XVII(制限物質)のエントリNo.63(鉛)を念頭に置いて、予防的な理由から、適用除外の文言に次のフレーズを追加することを勧告する。
(1) 「子供が口に入れる可能性のある物品」または「物品の接触可能な部分」には適用されないものとする。
(2) 一辺の長さが5cm未満の場合、またはそのサイズの取り外し可能または突出部分がある場合。
ただし、コーティングされているかどうかに関係なく、接触可能なコンポーネント/パーツからの鉛の放出速度が0を超えないことが証明できる場合を除く。
(3) 1時間あたり0.5μg/ cm2(0.05μg/ g / hに相当)、およびコーティングされた物品の場合、コーティングは、通常の少なくとも2年間、または 成形品の使用において合理的に予見可能な条件がある場合。
(4) この追加を適用除外の脚注として追加する。
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