ホーム > 環境について > 環境関連情報 > 世界の水資源と水危機(その4)
情報発信日:2011-07-22
少し古くなりますが産業競争力懇談会(COCN)は2008年3月18日付けで「水処理と水資源の有効活用技術【急拡大する世界水ビジネス市場のアプローチ】」と題する大変に興味深いレポートを発表しました。
本コラムでも述べてきましたが「21世紀は水の世紀」とも呼ばれ、資源としての水に関して世界的に関心が高まるとともに、国家や地域の安全保障上においても「エネルギー・食料・水」は互いに関連し合う重要な問題との認識がますます高まってきています。すでに国境をまたぐ国際河川においては水源、上流の水利問題をめぐり下流域の国との間において争いが起きつつあるともいえます。
資源としての水はその「量」の確保はもちろん、途上国においては「安全で衛生的な水」といった「質」の問題も切実な問題になってきています。
そのような状況において、安価で上質な水の供給技術や汚水の浄化技術など、いわゆる水処理技術やこれに付随する「水ビジネス」が20世紀における自動車工業や電子工業を越える巨大ビジネスに成長すると期待されています。日本は水処理に関する個々の技術には非常に優れたものを持っていますが、施設の建設から始まり運営・管理まで含めた総合的な水ビジネスにおいては世界において出遅れており、「オールジャパン」の体制で今後の水ビジネスに取組む必要が求められてきています。
以上の点において、COCNの報告書は大変興味深いものであり、以下に当該報告書の概要について述べるとともに、多少の市場規模情報などについて述べたいと思います。
上記、COCNが提案する水ビジネスを具体的に進めるための産官学が参加する組織として、以下が設立されたので概要について記します。
経済産業省関連の独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託開発事業として、日立プラントテクノロジーの有する水処理技術と東レが有する分離膜技術を融合させ、世界における先進的な水処理技術の研究開発を推進することを目的として経済産業省が所管する技術研究組合法に基づいて設立されました。
日本国内における水処理装置・施設などの供給や管理・運営を行う「水ビジネス」は官公需要分野においては上下水道の普及率が高まり、新規需要が頭打ちとなり、また民需分野においても医療や電子工業における水処理施設も伸び悩み状態にありますが、世界的には人口の増加に伴う水需要の増加、産業の発達に伴う排水・汚水の増加など、量的面だけでなく質的面でも水に関する危機的な状況はますます深刻な状況が進みつつあり、安価に安全な水を大量に供給するビジネスは将来的にきわめて巨大で有望な産業に成長すると期待されています。
このような状況において、日本企業は個々には高い技術を有しながらも、欧米企業やアジア企業に対しても総合的な水ビジネス展開という面では遅れをとっていますが、上述したように国内の水処理関連企業だけでなく金融機関や商社、大学なども含めて、また研究機関や政府までが一丸となり世界の総合水ビジネス企業に対抗すべくスタートを切ったことは喜ばしいことだと思います。
日本で暮らしていると「水不足」という実感がなかなか得られませんが、海外から輸入されている食料の価格がジリジリと値を上げてきていること、水の用途の70%を農業が占めていることを考えると、これは決して水不足と無関係でないと思われます。