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環境関連情報

クリプトスポリジウム対策

安全な水道水を目指して

情報発信日:2006-08-31

クリプトスポリジウムとは

クリプトスポリジウムとは専門的にいうと「胞子虫類のコクシジウム目に属する寄生性原虫」と定義されます。簡単にいうと「動物の体内に寄生する原虫」のことです。近年の調査によると、このクリプトスポリジウムが水道水の水源である河川や湖沼などいたる場所で検出されるようになってきています。

「水道水には殺菌剤として塩素が入っているし、浄水場でちゃんと処理されているのでは?」と疑問に思われる方が多いと思いますが、問題なのは「クリプトスポリジウムは従来の浄水場での処理では完全に取除くことができないばかりか、殺菌剤の塩素でも死滅せず、水道の蛇口まで到達してしまう」ということです。

さらに厄介なことには、クリプトスポリジウムは宿主(動物)の体外、つまり自然環境においては、オーシストといわれる頑強な殻の中に閉じこもった状態で存在し増殖することはありませんが、塩素や他の殺菌剤にも耐性があり、簡単には死滅しないのです。しかし、一旦家畜やヒトの体内に口から入り込むと、胃や腸等の消化管の中でオーシストの中味のスポロゾイドとよばれる部分が飛び出してきて、消化管粘膜表面の微絨毛(腸の表面の微細な襞の様な部分)に浸入寄生して無性増殖を始めます。無性増殖ですから1匹でも入り込めば感染の危険性があるといえます。

感染源は「牛、馬、豚等の家畜や犬、猫、ねずみなどの哺乳動物」で、これらの動物が補虫宿主であるほかに「オーシストを排泄する患者(人間)」と考えられます。

クリプトスポリジウムの実際の被害

過去、クリプトスポリジウムによる被害が多く報告されていますが、代表的な例を紹介します。

米国ウィスコンシン州ミルウォーキーの事故

英国Swindon-Oxfordshireの事故

日本の事故例

クリプトスポリジウム感染防止法

クリプトスポリジウム感染症を防止する有効な手段として、現在では以下2つの方法が有効と認められています。

膜ろ過法

大きさが5μm程度であるクリプトスポリジウムのオーシストに対して、これよりも小さな孔径を有する精密ろ過膜や限外ろ過膜を用いてろ過し、オーシストを除去する方法です。このことにより、膜が破損しない限り、オーシストは100%除去され、また原水の濁度やその他水質にも影響を与えないことより、現在国際的には膜ろ過法が唯一クリプトスポリジウムの事故を防止できる方法とされています。わが国でも2000年2月に厚生労働省より水道施設の技術基準を定める省令のなかで膜ろ過法が推奨されています。

現在、国内において約1,500ケ所あるとされる浄水場のうち、膜ろ過装置を導入または計画決定した浄水場は、2005年末現在でまだ550ケ所ほどですが、着実に大中規模施設での採用例も増えてきています。

紫外線照射法

膜ろ過法に比べて精度は落ちるといわれていますが、膜ろ過の導入に比べて安価であり、「ある程度の効果は認められる」として厚生労働省は2006年8月4日に開催された厚生科学審議会生活環境水道部会で報告を行いました。結果は近く厚生労働省健康局水道課のホームページで発表される予定です。

情報源・出典・参考情報

注意

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