ホーム > 環境について > 環境関連情報 > 循環型経済/社会の形成に向けて #2
情報発信日:2016-12-22
オランダ政府は2016年9月14日付けで、ホームページにおいて、「2050年までに全ての廃棄物を再資源化するための『国家原料協定』に対して、国内の民間事業体、政府機関及びNGO等が合意した」と発表しました。「これを達成するため、『環境に配慮した設計』を行い製品に使用する資源量の削減、長寿命化、廃棄物の再資源化などを進め100%循環型経済の構築を目指す」としています。
また、ドイツ政府は2016年8月11日付けで、ホームページにおいて、「家庭ゴミのリサイクル率向上のための有価廃棄物の分別回収法案」を公開しました。特に、包装容器のデザイン(形状や材質など)のリサイクルのしやすさを考慮することを求めているようです。
このように、廃棄物を「出来るだけ低エネルギーかつ温室効果ガス排出量を抑えて再資源化し再利用しよう」とする動きは世界的な大きな流れとして、気候変動防止の目的とも連動するものといえます。
これらの状況において、筆者が我が国における廃棄物の処理・再資源化に関する最新の施設を見学する機会を得ましたので、これら廃棄物の処置・再資源化技術の現状を紹介したいと思います。
我が国において、江戸時代には完全リサイクルがなされており、「ゴミはゼロ」の完全な循環型社会が形成されていたと言われています。
その後も明治、大正、昭和30年代頃までは、金属類やボロ布、ガラスなどは廃品回収業者が回収し、生ごみは庭に穴を掘って埋め、排泄物まで農業用肥料と利用していたため、ごみ処理問題が顕在化することはありませんでした。
しかし、昭和40年代に入り高度成長経済、大量生産・大量消費の時代に入ると、急激に大量のゴミが発生するようになりました。特に、プラスチック製の製品や部品、包装材料が多く出回るようになってきたことや、建設ラッシュによる建築関係の廃材などが廃棄物を増やす原因となりました。
当初、これらの廃棄物の多くは埋立て処分されました。しかし、これら廃棄物からの浸出水による地下水汚染、悪臭、ハエ、蚊、ゴキブリ、ネズミなどの発生に加え、処分場が短期間で満杯になり、新規の処分場建設がままならなくなりました。
全量埋め立て処分ではゴミ処理が賄えなくなり、可燃ごみと不燃ごみを分別収集し、可燃ごみは清掃工場で単純焼却。不燃ごみだけを埋立て処分することとしました。しかし、当初はプラスチックの焼却は念頭になかったため、プラスチック焼却のための火力により焼却炉が損傷したり、ダイオキシンに代表される有毒・有害ガスが発生したり、などの問題が生じ、プラスチック類を不燃ごみとしたため、埋め立て処分場の延命にはさほど効果はありませんでした。
20世紀末頃より、エネルギーや資源の枯渇及び地球温暖化など地球環境問題が顕在化してきたことで、大量生産・大量消費時代は終焉を迎え、廃棄物を再資源化する動きが活発になってきました。
この動きは、容器包装リサイクル法、家電リサイクル法、小型家電リサイクル法、建設リサイクル法、食品リサイクル法、自動車リサイクル法、パソコンリサイクル法等相次いで制定される各種リサイクル法にも後押しされ、産業廃棄物を除く、家庭や商業施設などから出る一般廃棄物は、古紙、飲料缶、ガラス瓶、ボロ布、PETボトル、金属類、小型家電などに分別収集が行われ、それぞれ再資源化が図られるようになってきました。
このことにより、可燃ごみは、生ごみ、汚れたプラスチック、紙くずなどとなり、不燃ごみも陶磁器と割れたガラスなど限られたものとなりました。
さらに、陶磁器やガラスも粉砕され再資源化されるに至り、近年ごみの量は急速に減少するようになってきました。
一般家庭や商業施設(自治体により、家庭ごみ以外は収集しない場合もある)より排出される廃棄物は、概ね
・古紙(自治体により、一般紙、新聞紙、雑誌、ラミネート紙、牛乳パック等に詳細分類を要求するケースが多い)
・缶類(アルミ缶、鉄系缶)
・ガラス瓶
・ボロ布、古衣類
・PETボトル、食品トレー、きれいなプラスチック類
・金属類
・小型家電
・粗大ごみ
・有害ゴミ(電池、体温計、蛍光管等)
・草木、剪定枝など木質系ごみ
・上記に該当しない、可燃ごみ(主に生ごみ、汚れたプラスチック、汚れた紙など)
・上記に該当しない、不燃ごみ(割れた陶磁器、ガラス、石や砂など)
などに分類され自治体または民間業者により回収されます。
分別収集された「資源ごみ」の多くは自治体から民間業者に委託されて、再資源化されます。その手法については、省略します。
現状では、分別し再資源化が難しい生ごみ、汚れた紙類や汚れたプラスチックは「可燃ごみ」として収集され、ガラス片や陶器類及び複合材料からなる廃遺物は「不燃ごみ」として収集されます。
可燃ごみ及び不燃ごみの多くは自治体または地域の清掃工場に集められ、場合によっては手作業により分類され、焼却されます。この「焼却により生じた熱」は、廃熱として温水プールへ供給されたり、タービンに供給されて発電が行なわれたり、場合によっては余剰電気の売電が行われます。
焼却によって生じた「焼却残渣」及び金属以外のガラスや陶磁器片、砂、泥などの混合物は粉砕され、最終処分場へ移送されます。
最終処分場では、場合によって焼却灰はセメントの原料として再資源化します。最終的に、砂、泥、ガラスや陶磁器片は粉砕して埋設されますが、現状では極僅かです。
現在、高度成長期〜大量生産大量消費時代に比べて、廃棄物の再資源化は大幅に進み、埋立て廃棄物も限りなくゼロに向かっています。
また、可燃ごみもサーマルリサイクルと呼ばれる焼却によって生じた熱はエネルギーとして回収され、焼却残渣もセメントの材料として再資源化されるなど、かつてのゴミ問題は大幅に解決されて来ています。
しかし、一方で可燃ごみを燃やすため、あるいは、焼却残渣をセメント化するにも多くの化石燃料を熱源として使用している実態があります。生ごみなど、「自燃(じねん)」が可能であれば、ある意味「バイオマス」となりますが、水分を多く含むため、廃プラスチックや重油などの助燃剤が必要とします。
冒頭でも触れたとおり、今後、廃棄物の100%再資源化を目指すという方向に進むのは確実ですが、再資源化に当たっては、地球温暖化防止の動きとも連動して「いかに温室効果ガスの排出を抑え、かつ低エネルギーで実施するか」ということが求められることになります。
筆者は今年より市の廃棄物減量等推進審議会の審議委員を仰せつかり、今回は清掃工場、リサイクルプラザ、最終処分場を見学する機会を得て、「廃棄物処理も随分と進化した」という驚きとともに、ゴミ処理に随分エネルギーを使っている実態も目にしました。
しかし、冒頭のオランダやドイツの施策から見て取れるように、今後はいかに「低エネルギーかつ出来るだけ少ない温室効果ガス排出量によって廃棄物の再資源化を進めるのか」ということが重要であることを再認識した次第です。