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環境関連情報

東京都スーパーエコタウン

究極のリサイクル追及の町

情報発信日:2009-12-18

廃棄物処理問題

先日テレビを見ていたら、ある途上国(太平洋の美しい小さな島国)で、ゴミを捨てる場所が島のかなりの部分を占める様になり、衛生問題や環境問題で苦慮しているというニュースが放映されていました。その他の途上国においても、ゴミ捨て場で貧しい子供たちがお金になりそうな廃棄物を拾っている映像を時々見ます。 日本においても何年か前まで、東京都における廃棄物の「埋立地が無くなる」という問題が新聞やテレビで話題になっていましたが、最近ではあまり話題に上りませんが、どうなっているのでしょうか。身近なところでは、ゴミの有料化や分別化が進んでいますが、この事だけでゴミの大幅な減量化が行われたのでしょうか。

今回、廃棄物のリサイクル工場が並ぶ東京都スーパーエコタウンを見学する機会があり、大幅なゴミの減量化に取り組む現場を見て来ましたので、ご紹介したいと思います。

東京都スーパーエコタウン

東京都スーパーエコタウンは京浜急行の平和島駅から車で20分ほどの、丁度運河を隔て羽田空港の向かいに位置し、頭上を大きな旅客機が飛ぶ大田区城南島と中央防波堤内側埋立地にあります。東京都環境局のホームページによりますと、事業概要は「廃棄物問題の解決と新たな環境産業の立地を促進し、循環型社会への変革を推進することを目的に、国の都市再生プロジェクトの一環として、東京臨海部の都有地において、民間事業者等が主体となり廃棄物処理・リサイクル施設の整備を進めるものです。」と書いてあります。現在は中央防波堤内側埋立地で2社(ガス化溶融など発電施設、PCB廃棄物処理施設)、城南島で7社(建設混合廃棄物リサイクル施設2社、廃情報機器類リサイクル施設2社、がれき類・汚泥リサイクル施設1社、食品廃棄物リサイクル施設2社)が稼動しています。訪れる前は、悪臭や騒音なども覚悟して出掛けましたが、城南島海浜公園も隣接しており、今回訪問した2社はいずれも近代的な工場という印象でした。

<産業廃棄物のリサイクル>

最初に見学したのは主に電化製品や自動販売機、自動券売機、その他の電気電子機器などの産業廃棄物のリサイクル工場でした。説明では、機械的な分別が困難な冷媒や電線などを手作業で取り除いた後、

  1. 大型の粉砕機に入れて小さな破片に破砕
  2. 大型の掃除機の様な装置で重さの軽いプラスチックや紙類を分別プラスチックや紙類は隣接するガス化溶融炉にてガス化され、発電に利用
  3. 残った金属類やセラミックなどを振動式の分別装置により比較的軽いアルミニウムなどを分別
  4. 磁力により鉄類を分別(磁性が有るが鉄でない、ステンレスやニッケル類は目視で分別)
  5. 最後に残ったレアメタルなどは或る方法によって分別(この辺はノウハウの様です)金属以外は建設資材などに利用され、金属類は再生資源として精錬所に送りリサイクルに廻される

鉄、アルミニウム以外の金属資源の分別精度向上が今後の検討課題と説明を受けましたが、現状でもかなりの割合でリサイクルされている様子が見て取れました。

<生ゴミのリサイクル>

過去において生ゴミのリサイクルといえば、家畜用の飼料や微生物に分解させて肥料化(コンポスト)するのが普通でしたが、今回見学したのは、生ゴミを微生物によって分解し発生したメタンガスにより発電をするというリサイクルでした。

生ゴミを家畜の飼料にするには、ゴミに混入して来るプラスチック類や竹串、楊枝、割り箸、紙ナプキンなどを分別する必要が有りますが完全に分別する事が難しく、家畜の健康上の問題が発生するため、管理のしっかりした食品工場などの生ゴミに限定されることが障害となるそうです。肥料化する場合においては、現状では化学肥料が発達しているため、有機肥料は過剰供給になることが障害となるそうです。この為、従来はこれら生ゴミの多くは焼却処分していたそうですが、水分が多いために廃熱を有効利用してもエネルギー収支は損失の方が大きく、問題点が有ったそうです。

この様な状況で考え出されたのが、下水の汚泥処理と同様に嫌気性微生物を用いてメタンガスを発生させ、そのメタンガス(都市ガスの主成分と同じ)を原料とした燃料電池または直接燃焼させてのガスタービン発電によりリサイクルする手法だそうです。汚泥が発生するのが欠点のようですが、全発電量の60%の電力で工場は稼動しているそうですので、エネルギー収支は単純焼却に比べてプラスになっているようです。利点は生ゴミ以外の異物の混入や水分が障害にならないことです。

環境負荷低減とCOP15

2009年12月7日から18日までデンマークの首都コペンハーゲンにおいて、国連気候変動枠組み条約第15回締結国会議(COP15)が開催され、会期中は、2013年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組み(ポスト京都議定書)についての話し合いが行われました。(この原稿を書いている時点は会期中ですが、現時点では温室効果ガス削減目標値を巡って、先進諸国と途上国の利害が激しくぶつかり、妥協点が見つからない状況で難航しています。)

京都議定書により温室効果ガス排出量削減に責任を持つ先進諸国の排出量は世界全体の28%程度と言われていますので、温室効果ガス排出大国である米国、中国及びインドなどが条約に加わらないと、意義が薄くなると思われますが、米国や中国が温室効果ガス排出削減に消極的かというと、種々の情報によると、「責任を持たされる枠組みには反対」していますが、自主的に「かなり真剣に環境改善や温室効果ガス削減」に取り組んでいる様子が伺えます。

余談になりますが、何故米国や中国がCOP15には反対するけれど、自主的な環境改善や温室効果ガス低減に取り組んでいるのでしょうか。

これは、多くの投資を行っても温室効果ガス排出量の要因となるエネルギーに対する効率的な利用や資源の有効活用に対する努力を行わないと、コスト面で国際競争に勝てなくなるからです。一般に企業における環境負荷低減活動は「経済的な収支はマイナス」と捉えられるケースもありますが、最近では東京スーパーエコタウンでの生ゴミ発電の様に視点の変更や技術の開発の進化、更には会社の信用度の向上、予想される法規制や税制への自主的な事前対応などの観点も含めて考えると「経済収支がプラス」との見方が増えてきており、更にはエネルギーや資源消費量の削減によるコスト削減にも繋がるため、環境経営に力を入れる企業が増えてきているかと思います。

従来は、「ゴミ」と言う言葉は役立たずの厄介ものを意味しましたが、単に廃棄するだけではなく、見方を変えることやアイデア、技術開発によって、資源やエネルギーへのリサイクルが可能になるという事実が目の前にあるということではないでしょうか。

東京スーパーエコタウンにおけるリサイクル事業はまだまだ小規模ですが、この様な日本の環境技術を世界的に展開すればゴミ処理問題の解決だけでなく、省エネ、省資源による温室効果ガスの排出削減に大きく貢献できるのではないかと思いながら、夕暮れの空から次々と着陸して来る旅客機を背に城南島を後にしました。 時々見学会を開いているようですので、機会が有りましたら皆様も是非、一度見学されると良いと思います。

参考文献及び引用先

注意

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