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環境関連情報

2030年温室効果ガス排出量26%削減への道 #2

「パリ協定」2016年11月に発効か?日本は出遅れ

情報発信日:2016-10-24

はじめに

1997年12月に京都で開催されたCOP3(第3回気候変動枠組条約締約国会議)において採択された「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」(通称:京都議定書)は、採択から実に7年以上を経過した2005年2月に発効するという難産でしたが、2015年末にパリで開催されたCOP21において採択された「パリ協定」は、各国の国内手続きの関係などから2018年頃の発効と予想されていましたが、「採択から1年を経ずして発効する」という異例の見通しとなったことを、2016年10月1日付けで、新聞各紙が報道しました。

このような状況において、我国では2016年10月3日現在通常国会が開催されており、伊勢志摩サミットで安倍首相が2016年度内の批准を約束したことから、一応審議課題とはなってはいるものの、審議日程は決まっていません。このままでは2016年11月7日からモロッコで開催されるCOP22(第22回気候変動枠組条約締約国会議)までにパリ協定が発効する可能性が高まり、同時にパリ協定の第1回締約国会合が開かれ、具体的な実施ルールの決定などの検討が開始されることになりそうです。しかし、これに間に合わなければ排出量世界第5位の日本は蚊帳の外となり存在感が薄れてしまう危険性が強まってきました。

そこで今回は、内閣府のアンケート調査でもまだ認知度が低いと思われる「パリ協定」のおさらいと、世界各国のパリ協定批准状況など最新情報をまとめてみたいと思います。

パリ協定の骨子と京都議定書との違い

内閣府の調査によると、地球温暖化、オゾン層破壊、熱帯雨林の減少など地球環境問題に興味があると答えた人は87.2%と高い数字を示しています。しかし、この対策を行う「パリ協定」について「知っているとする人」は59.6%と過半数を超えてはいますが、「内容まで知っている人」は僅か7.0%で、「名前を聞いた事がある人」が52.6%、「知らない」と答えた人が39.5%にも及び、認知度はまだまだ低いと言えます。

パリ協定の骨子について「おさらい」の意味で以下に示しました。

(1)世界共通の目標として、産業革命以前からの気温上昇を2℃未満に抑える。さらに、1.5℃未満になるよう努力する。
(2)出来るだけ早く世界の温室効果ガスの排出量を削減し、今世紀後半には排出量と吸収量を均衡させ実質排出量を「ゼロ」にする。
(3)全ての国に対して、削減目標の作成、提出、達成を義務化し、5年ごとに見直しをさせ後退させない(共通かつ柔軟な方法でその実施状況を報告し、レビューを受ける)。
(4)5年ごとに世界の削減進捗状況を検証し、温暖化被害軽減の目標を提示する。
(5)その他

パリ協定が京都議定書と異なり、温室効果ガス排出量削減目標を各国が自主的に定める点や罰則がないなど、京都議定書と比べると、条約としては条件が緩やで参加しやすいことが特徴と言えます。

パリ協定が2016年11月初旬に発効

上述のように、パリ協定は京都議定書に比べて、参加するハードルが低い事や、巨大台風やハリケーンの発生、大洪水と大干ばつの発生など地球温暖化防止が待ったなしの状況にあるなどの理由から、京都議定書では参加を拒否した排出量世界第1位の中国(20.09%)と、世界第2位のアメリカ(17.89%)が、パリ協定においては共に2016年9月3日には早々と批准を行い、既に批准済の国々もブラジル(12位)やタイ(20位)など59ヶ国(9.81%)に上っています(2016年10月10日現在)。

ここで環境先進圏を自負する欧州連合(EU、28ヶ国計で12.08%) も主導権確保のため2016年9月30日に開催されたEU環境相理事会で協定の批准を決め、国内手続きを終えた排出量第6位のドイツ(2.56%)や同19位のフランス(1.34%)など5ヶ国が先行して批准するなど異例の措置を取る事となりました。また世界3位のインド(4.10%)も10月2日に批准しました。

これによってパリ協定発効の要件である「参加国・地域の55%以上、排出量の55%以上」が満たされるため、2016年11月7日からモロッコで開かれるCOP22までに発効する可能性が高まり、同時にパリ協定の第1回締約国会合が開かれ、具体的なルールづくりなどの協議が開始される見通しとなりました。

参考までに、世界の国別二酸化炭素排出量(2013年)を示します。

注)温室効果ガスとは、二酸化炭素の他、メタン、一酸化二窒素、各種フロン、六フッ化硫黄、三フッ化窒素などを含めて言いますので、以下の資料は集計のしやすい二酸化炭素だけによります。

図1 世界の二酸化炭素排出量(出典:全国地球温暖化防止推進センター)

パリ協定の締結が遅れている主要国は、4位のロシア(7.53%)と5位の日本(3.79%)、その他計(24.71%)となります。

注)上記図1の排出量%と文中の数値が異なっていますが、図1は温室効果ガスのうち、二酸化炭素だけの数値、文中の数値は二酸化炭素を含む温室効果ガスの総量%を示します。

まとめ

(1) 地球温暖化防止のため温室効果ガス排出量削減を目的とした京都議定書は1997年12月の採択から実に7年以上を経過した2005年2月に発効するという難産でした。2015年パリで開催されたCOP21において採択された「パリ協定」は、各国の国内手続きの関係などから2018年頃の発効と予想されていましたが、「採択から1年を経ずして発効する」という異例の見通しとなったことを、2016年10月1日付けで、新聞各紙が報道しました。
(2) これは、パリ協定が京都議定書と比べて温室効果ガス排出量削減目標を各国が自主的に定める点や罰則がないなど、京都議定書と比べると、条約としては条件が緩やで参加しやすい事が特徴と言えます。
(3) このため、京都議定書では参加しなかった、排出量第1位の中国と第2位のアメリカが共に早期に批准を決めた事が、協定の発効を早めた最大の要因と言えます。
(4) このような状況において、排出量世界第5位の我国は国内手続きが遅れており、このままでは2016年11月7日からモロッコで開催されるCOP22と同時に開催が予想されている第1回締約国会議に参加出来ない可能性が高まっています。その場合に我国はパリ協定の初期における具体的な運用などの検討に加わる事が出来ないことになります。
(5) また、内閣府における世論調査においてもパリ協定に関する認知度は「知っているとする人」は59.6%と過半数を超えてはいますが、「内容まで知っている人」は僅か7.0%で、啓蒙活動も遅れていると言えます。
(6) 我国の国連への約束草案では2030年に26%削減と異次元の目標を掲げていますが、残された時間は14年と僅かです。パリ協定に罰則はないものの目標が達成出来なければ、「我国の国際的な信用は大きく低下することになる」ということを、理解しておく必要があると言えます。

引用・参考資料

注意

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