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環境関連情報

2013年 省エネ法の一部改正について

建築材料等に係るトップランナー制度の創設など

情報発信日:2013-07-19

はじめに

経済産業省・資源エネルギー庁は2013年年7月8日付けで、「『エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)の一部を改正する等の法律案』は平成25年5月24日に可決・成立し、平成25年5月31日に法律第25号として公布されました」と発表しました。

今回の法律改正の目的と改正内容について、以下に要点を解説します。

 

省エネ法改正の背景

経済産業省・資源エネルギー庁によりますと、今回の法律改正の背景は「我が国経済の発展のためには、エネルギー需給の早期安定化が不可欠であり、供給体制の強化に万全を期す必要があります。その上で、需要サイドにおいては、持続可能な省エネを進めていく観点から省エネ法の改正を実施し、所要の措置を講じます」としています。

(解説)

東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故以来、我が国の他の原子力発電所は、そのほとんどが停止したままで、再稼働のめども立っていない状態にあり、電力やエネルギーの供給が依然として綱渡りの状況にあります。 現在の電力供給は量的には何とか足りている状態にはありますが、効率の悪い旧式の火力発電所や高コストの石油火力発電所をフル稼働させることで凌いでいる現在の状況は、本来の健全な状況とは言い難い状況です。 このような状況において、風力発電や太陽光発電など再生可能エネルギーの開発も急ピッチで行われていますが、一方では、電力やエネルギーを効率良く使うためのさらなる方向性も模索しなければならないと言えます。

 

今回の省エネ法一部改正(平成25年度)の要点

(1) 建築材料等に係るトップランナー制度の創設

経済産業省・資源エネルギー庁によると「これまでのトップランナー制度は、エネルギーを消費する機械器具が対象でした。今般、自らエネルギーを消費しなくても、住宅・ビルや他の機器等のエネルギーの消費効率の向上に資する製品を新にトップランナー制度の対象に追加します。具体的には、建築材料等(窓、断熱材等)を想定して.おり、これにより、企業の技術革新を促し、住宅・建築物の断熱性能の底上げを図ります」としています。

(解説)

従来は「自らエネルギーを消費する機器」が対象でしたが、今般の改正では「自らエネルギーを消費しなくてもエネルギー効率の向上を図る機器」も対象として追加されました。この考え方はEUにおけるEuP指令、「Proposal for a DIRECTIVE OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE CONCIL on establishing a framework for the setting of Eco-design requirements for Energy Using Products and amending Council Directive 92/42/EEC」であり、日本語では「エネルギー使用製品に対するエコデザイン要求事項の設定のための枠組みを設けることに関する欧州議会及び理事会指令提案」から、ErP指令(Eco-design requirements for energy related products)指令2009/125/EC(エネルギー関連製品のエコデザイン要件を設定する枠組みを確立する指令)へと一歩進んだ事と全く同じと言えます。

なお、トップランナー制度とは、エネルギーを消費する機器の製造または輸入販売する業者を対象に、現状における最高水準の機器を基準に、3〜10年程先をめどに目標基準を設定する高い省エネ基準(トップランナー基準)を満足することを要求し、目標年度に達すると国がその達成状況の報告を求め確認する制度です。この基準に達していない製品を販売し続ける企業は、社名と対象製品を公表する、あるいは罰金を科すなどのペナルティーを科すとするものです。現在、対象となるのは自動車やエアコン、冷蔵庫、ヒートポンプ給湯器など26機器ですが、今回の改正により、これに断熱材や窓などの建築材料を加えたものです。

従来は、自らエネルギーを消費する機器のみを対象にしていましたが、経済産業省では「建築材の省エネ性能が上がれば、住宅やビルでのエネルギー利用を低減できる」(資源エネルギー庁省エネルギー対策課)とみており、断熱材などは、日本企業が高い技術力を持っているため、さらなる技術革新を期待したいようです。

 

表1 省エネ法におけるトップランナー指定機器(出所:経済産業省)

(2) 電力ピークの需要家側における対策(工場、輸送等)

経済産業省・資源エネルギー庁によりますと「需要家が、従来の省エネ対策に加え、蓄電池やエネルギー管理システム(BEMS・HEMS)、自家発電の活用等により、電力需要ピーク時の系統電力の使用を低減する取組を行った場合に、これをプラスに評価できる体系にします(具体的には、省エネ法の努力目標の算出方法を見直します)」としています。

(解説)

従来の省エネ法では、一定規模以上の工場や事業所に対し、毎年一律1%ずつのエネルギー効率改善を求めていますが、改正案では、ピーク時間帯に自家発電などを活用した場合、エネルギー使用量をより多く削減したと認定するとしてピーク時電力の削減を狙っています。

最近では、企業以外にも家庭内での消費電力も増加傾向にあり、かつ企業に比べて住宅やビルの省エネが遅れているとして、自家発電のほか、蓄電池や、センサーやIT(情報技術)の技術を活用して家庭内のエネルギー消費を管理する「HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)」の活用も増やしたいようです。

(3) 省エネ・リサイクル支援法の廃止

今回の省エネ法の改正により、平成5年より「低利融資、債務保証、中小企業への支援など」の優遇措置を実施して来た省エネ・リサイクル支援法(エネルギー等の使用の合理化及び資源の有効な利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法)の打ち切りは2013年5月31日に公布されました。

 

まとめ

東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故により、日本のエネルギー政策は大きな転換を余儀なくされていると言えます。原子力に頼らず、安全・安心でかつ経済面や環境面でも満足できるエネルギーを安定的に確保するのは容易なことではありませんので、新たなエネルギーを開発する一方で、従来にも増してエネルギーの効率的な利用や省エネを進める必要性が高くなっていると言えます。

このような状況において、従来は産業面での省エネやエネルギーの効率的な利用などが進められて来ましたが、昨今は住宅やビルなどの電化などが進んで来たため、産業利用と比較しても大きなエネルギー利用となって来ています。

そこで、国土交通省、経済産業省、環境省などが連動して「ゼロエネ住宅・省エネ住宅の普及支援」に乗り出して来ました。国土交通省では「ゼロエネ住宅・省エネ住宅の普及を支援するとともに、住宅・オフィス等のエネルギー性能の表示制度の充実に向けて取り組み、2020年までに、新築住宅等の段階的な省エネ基準適合義務化を実現する」としています。

具体的には、「省エネ性能に優れた住宅・建築物の誘導等」を行うため、「ゼロ・エネルギー住宅への支援」や「中小工務店向けの省エネ施工技術向上プログラムを実施等」の実施。

例えば、住宅への太陽光発電、太陽熱温水器、躯体の高断熱化・高気密化、通風・換気による春・秋など中間期の暖冷房負荷の低減、冬季の日射取得、夏季の日射遮蔽などを推進する。

また、省エネ性能の評価・表示の充実を行うため、外壁・窓などの断熱性能に加えて、照明・空調・給湯器などの高効率化、太陽光発電等の創エネについても総合的に評価する基準の策定、住宅性能表示性能などを活用したエネルギー性能の表示制度の構築を行うとしています。

さらに、省エネ基準適合の義務化を進めるため国土交通省、経済産業省、環境省が共同で設置した「低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議」において、工程表を作成しています。

これによりますと、2020年度までに、①ゼロエネ住宅の標準化、ゼロエネビルの実現、②既存住宅の省エネリフォーム(現在の2倍程度)を進めるとしています。

公共建築物・施設も率先して低炭素化・ゼロエネ化のため、国の一般事務庁舎整備に当たっても適合する低炭素基準を策定し、官庁施設のゼロ・エネルギー化を目指したモデル事業の実施、直轄国道におけるLED道路照明灯の導入などに取組むとしています。

エネルギーはいったん使えば、熱と二酸化炭素になり消えてしまいます。今後は極力少ないエネルギーを効率良く使う工夫がさらに求められて行くと思われますので、日々の暮らしの中で各個人が自主的に省エネを考えて行くことが重要だと言えます。

引用・参照情報

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