新エネルギー紹介#6
バイオマスエネルギー
情報発信日:2007-05-02
新エネルギー代替への背景
地球の温暖化防止を目的に2005年に発効した京都議定書に基づき、批准国においては二酸化炭素など温室効果ガスの排出量削減に向けた努力が続けられていますが、現在までのところ改善は認められず、悲観的な状況が続いているように思われます。
また、従来から使用している石油や天然ガスの採掘可能期間はあと数十年といわれ、代替エネルギーの開発が急がれています。
このような状況において、従来のエネルギーと比較して温室効果ガスの排出量が少なく、再生可能なエネルギーの開発が進められていますが、なかでも、従来技術の応用により簡単に転換が可能なバイオマスエネルギーの利用が盛んに検討されています。
バイオマスエネルギーとは
バイオマスエネルギーとは「トウモロコシ、サトウキビ、テンサイ、麦など」の食料作物、および、「木材チップ、わら、干し草等」セルロース系を主成分とする木材などの植物資源から転換されるエネルギーをいいます。
食糧作物系を資源とする場合は、生育が早く多くの量の確保できる可能性がありますが、本来は食糧に用いる資源であり、食糧不足に拍車をかけるので慎重な対応を求められています。一方の木質系では生育が遅いことが難点です。
なぜバイオエネルギーが地球に優しいのか?
バイオマスエネルギーも燃やせば化石燃料と同じように二酸化炭素を排出しますが、バイオマスエネルギーの原料となる植物はもともと太陽エネルギーと地上の炭酸ガスにより作られたために、排出された二酸化炭素もやがて水の循環と同様に生態系の循環によって再び植物として固定されるため、単純計算すれば「炭酸ガス濃度は増加せず一定である」という理論があり、これを「カーボンニュートラル」とよびます。
バイオマスエネルギーの使用形態
バイオマスエネルギーは薪炭のように単純に燃やすことで熱エネルギーとして取り出す以外に色々な取り出し方があるので紹介します。
燃やす(おもに木質系バイオマスで実施)
- 熱エネルギーへ変換
最も単純な利用の形態は、ストーブなどを燃やしてエネルギーを熱として取り出す方法で、用途は暖房や炊飯用の燃料などが考えられます。火力をコントロールするために古来からの薪炭や圧縮チップに加工して使用します。
- 電気エネルギーに変換
バイオマスを燃やすことで発生する熱により蒸気を発生させ、その蒸気によって発電機のタービンを回転させて電気エネルギーとして取り出す方法です。電気は発電機の種類により以下の二つに区分され、「バイオ発電」とよばれます。
- 直接燃焼(蒸気式タービン発電)
直接バイオマスだけを単独で燃やして蒸気をつくり、発電用タービンを回して電気を作る方式。単純だが発電効率は一般の火力発電の35%を大きく下回り10〜20%といわれています。
- 混合燃焼方式
従来からある火力発電所で、化石燃料にバイオマス燃料を混ぜて使用する方式。硫黄酸化物などの発生が少ないといわれています。
- コジェネレーション(電気及び熱エネルギーの両方に変換)
バイオマスを燃焼させて得た熱エネルギーによってつくった蒸気で発電機を回すだけでは、廃熱が出るなど熱エネルギーロスが大きく、エネルギー転換効率がよいとはいえません。このため、電気エネルギーを取り出すとともに廃熱などを合わせて熱エネルギーとしても取り出す方式です。
ガス化する(おもに木質系バイオマスで実施)
バイオマスを酸素の遮断状況で加熱する、いわゆる「蒸し焼き」状態にすると、「メタン、水素、一酸化炭素などの混合ガス」が発生します。これらのガスを燃焼させてガスタービン式発電機を動かし電気エネルギーを得る方法があり、一部実用化されています。方式としては以下の二つの方式があります。
- ガスタービン発電
発電効率は高いが、連続運転を基本としているため断続的な運転や小規模施設での適用はむずかしい。
- ガスエンジン発電
ガスタービン発電に比べて発電効率は落ちるが、断続運転が可能なため小規模施設での分散電源に適している。
液化する(木質系及び作物系)
最近話題のバイオエタノールに代表されるように、バイオマスを液化して使用する方式です。用途はガソリンに添加して内燃機関用に使用されます。
- バイオエタノール
現状ではトウモロコシやサトウキビなどが原料として用いられ、基本的には酒類をつくるのと同様に微生物などの作用により糖類をアルコールに転換することでアルコールを取り出し、これを液体燃料として使用する方式です。乾式のドライミルと酒類をつくるプロセスに近い湿式のウエットミルがあります。ブラジルがサトウキビを使用して世界1位の生産国、第2位がトウモロコシを利用した米国です。大気汚染防止を目的に国策としてバイオエタノール使用に優遇措置を取って拡大を狙っています。EUでもガソリンへの一定量添加を義務づけるなど拡大の方向です。日本では開発が遅れていますが2007年初頭に、木質系廃材を原料とする本格的なプラントが堺市で稼動を開始しました。
- バイオディーゼル
廃油を含む植物油や動物油などを原料にした一種のエステル。軽油に比べて燃焼による大気汚染物質排出が少ないため、軽油に混合してディーゼルエンジン用として使用されています。
- バイオメタノール
おもに木質系バイオマスを高温高圧で処理して得たメタンガスからメタノールを得る方法です。
バイオマスエネルギーの課題
一見、地球に優しいバイオマスエネルギーですが、トウモロコシ、サトウキビ、小麦などの食糧を原料にしている以上は「食糧を取るかエネルギーを取るか」の選択に迫られる限界が必ずくること、また生産や栽培、輸送などにかかる追加エネルギーの問題を考えると、必ずしも「いくらつくってもカーボンニュートラルのはず」とはいえないように思われます。米国で国策として急激に進む食糧のエネルギー転換は、地球規模の視点からは歪がみえて仕方がありません。
参考文献及び引用先
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