ホーム > 環境について > 環境関連情報 > 有害物質規制最前線#6 VOCとシックハウス症候群
情報発信日:2006-01-27
VOCとは揮発性有機化合物の総称で、大気を汚染する浮遊粒子状物質(SPM)や光化学オキシダント(Ox)の原因物質ともいわれています。2006年5月25日から施行される予定の改正大気汚染防止法により、塗装施設、洗浄機、印刷所など、大規模にVOCを扱う施設からの大気への排出に規制が行われる予定です。
一方、建設材料である床材、壁紙などに残留する微量なVOCによってアレルギー性疾患が引き起こされることが知られており、この疾患を総称して「シックハウス症候群」とよばれています。建設材料に含まれるVOCは合板、家具、接着剤、合成樹脂、塗料、断熱材や防カビ材、殺虫剤など種々のものがあります。
2002年7月12日に「居室内における化学物質の発散に対する衛生上の措置」として建築基準法が改正されました。「法第28条の2」が加えられ、木質系の接着剤などに含まれるホルムアルデシド(ホルマリン)と有機リン系の防蟻剤として木造住宅の床下などに散布されるクロルピリホスの2物質の使用が規制されることが公布され、2003年7月1日から施行されています。
法第二十八条に次の一条を加える
(居室内における化学物質の発散に対する衛生上の措置)
法第二十八条の二
居室を有する建築物は、その居室内において政令で定める化学物質の発散による衛生上の支障がないよう、建築材料及び換気設備について政令で定める技術的基準に適合するものとしなければならない。
罰則:法第九十九条
ホルムアルデヒド発散建築材料は、その発散量の多少によって第1種から第3種に区分され、基準を超える第1種は使用禁止、第2種及び第3種に分類される建築材料を使用する場合は、規定の換気能力を有する設備の設置が義務づけられます。
クロルピリホスは、過去において防蟻剤として木造住宅の床下に使用されていましたが、改正建築基準法では使用が禁止されました。
2002年4月1日付で、厚生労働省はシックハウス症候群の原因と推定される13種類のVOC各々の室内濃度について、以下のとおり暫定目標値を定めました。
化学物質名 | おもな発生源 | 指針値 |
---|---|---|
ホルムアルデヒド | 合板、壁紙用接着剤、家具 | 0.08 ppm |
アセトアルデヒド | 建材、接着剤、合成樹脂、合成ゴム | 0.03 ppm |
トルエン | 内装材の施工用接着剤、家具用接着剤、塗料 | 0.07 ppm |
キシレン | 接着剤や塗料の希釈溶剤 | 0.20 ppm |
エチルベンゼン | 接着剤や塗料の希釈溶剤 | 0.88 ppm |
スチレン | 断熱材、浴室ユニット、家具、畳心材 | 0.05 ppm |
パラジクロロベンゼン | 衣類の防虫剤、トイレの芳香剤 | 0.04 ppm |
テトラデカン | 灯油、塗料の溶剤 | 0.04 ppm |
クロルピリホス | 防蟻剤 | 0.07 ppb |
フェノブカルブ | シロアリ駆除剤、害虫駆除用農薬 | 3.80 ppb |
ダイアジノン | 殺虫剤 | 0.02 ppb |
フタル酸ジ-n-ブチル | 塗料、接着剤 | 0.02 ppm |
フタル酸ジ-n-エチルヘキシル | 壁紙、床材、電線被覆 | 7.60 ppb |
また総揮発性有機化合物(T-VOC)について、400ug/㎥以下という暫定目標値も示されております。
以上のように、国土交通省及び厚生労働省はシックハウス症候群の原因物質としてのVOCの種類と濃度に関する規制や指針を示していますが、シックハウス症候群は化学物質アレルギーの一種ですので個人差があり、規制値や指針値をクリアしているから安心というものではありません。国土交通省は建築基準法ですべての建築物の新築において、ホルムアルデヒド使用建材・接着剤の使用制限や24時間換気装置設置の義務づけを行っていますが(平成15年7月1日施行)、揮発性有機化合物(VOC)が100%除去されているわけではありません。予防するためには、家具や塗料・薬剤等からも発生することに留意し、換気を十分行うとともに、新築時はもちろん、リフォーム時や家具の購入時等にVOCを測定してもらうとよいと思います。