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石綿(アスベスト)について

情報発信日:2005-09-23

石綿(アスベスト)問題

現在、石綿(アスベスト)による健康被害が大きな社会問題になっていますが、バルブや継手のパッキンやガスケットとして過去に使用されていた時代もありますので、この問題も含めて以下解説します。

石綿(アスベスト)とは

アスベストは鉱物学上、工業上及び環境大気中という観点から、それぞれ以下に示すように定義されています。

  1. 鉱物上の定義
    天然に産する鉱物群のうちで、高い抗張力と柔軟性をもつ絹糸状で光沢があり、繊維状の集合(asbestiform)をなすものの俗称である。
  2. 工業上の定義
    一般的には、繊維状の集合(asbestiform)をした鉱物を採掘、加工して得た工業原料をいう。
  3. 環境大気中の定義
    微少な繊維または繊維束の状態で浮遊するクリソタイル、アンソフィライト、アモサイト、トレモライト、アクチノライト及びクロシドライトをいう。また、国際労働機関(ILO)ならびに米国環境保護庁(EPA)等における定義では、以下の図に分類される6種類を指すとされている。

アスベストの主成分

アスベストは図に示すようにシリカ(Si)、マグネシウム(Mg)、酸素(O)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)など、配管に付着するスケールと同じような成分から構成されており、そのものが毒性をもつことはありません。

アスベストの毒性

アスベストの毒性は、その成分ではなく、その形状と通常の状態では半永久的に分解や変質しない性質によるものです。アスベストは天然の極細鉱物繊維であり、その径は最も細いクリソタイルで太さが約0.02〜0.03μm、平均でも1〜2μmであり、アスベスト以外の無機または有機繊維に比べ著しく細いのが特徴です。このため、人間が大気中から吸入すると繊維が肺胞壁に突き刺さったまま半永久的に留まることになり、健康を害することとなります。

アスベストによる健康影響

現在、アスベスト暴露に関連があるとして確認されている疾病は、石綿肺、肺がん、悪性中皮腫の3疾患に加え、良性胸膜疾患として、胸膜炎、びまん性胸膜肥厚、円形無気肺(または無気肺性偽腫瘍)および胸膜プラークがあります。これらはいずれも空気中に浮遊するアスベストを吸入することにより発生するもので、経口により吸収した場合の健康被害は確認されていません。

アスベストの性質と用途

アスベストは耐熱性、抗張力性、耐薬品性、絶縁性、耐摩耗性、防音性、保温性などに極めて優れた性質を有していること、および、軽量で天然材料として安価に入手できること、また加工が容易であることなどから、90%以上が建材製品に使用されており、押出しセメント板、住宅屋根スレート、繊維強化セメント板など広く壁材、屋根材、外装材、内装材などに使用されています。建材以外では、ジョイントシートやシール材としてバルブや継手などの配管機器のガスケットや漏洩防止用のグランドパッキン用途、電気絶縁板、ブレーキライニンズ材、接着剤や塗料の充填剤など多くの用途に使用されています。

わが国のアスベスト使用量

わが国は、消費量のほとんどを輸入に頼っていますが、年間の輸入量は、1960年代に急激に増加し、1974年の35万トンを最高に、1970年代および1980年代は25万トンから35万トンの高水準で推移してきました。1990年代に入り年々減少して行き、2003年は2万5千トンで、前年の43%減、ピーク時の93%減と大幅に減少しています。バルブや継手などのパッキンやガスケットに使用されている量は多く見込んでも全体の1%程度に留まると見込まれます。(東京都環境局資料より)

バルブや継手に使用されている石綿パッキン・ガスケットの環境影響

前述しましたが、石綿が人体への健康被害をもたらすのは、吸入によって取り込まれる一定のサイズの石綿繊維です。

したがって、空気中に飛散することがない状態では人体への影響はありません。パッキンやガスケットのようにある程度の密閉空間に置かれ、かつ、プラスチック、ゴム、セメント等で石綿繊維を固定してあるため、分解や切断等の加工をしないかぎり、空中に飛散する可能性は少なく、人体の健康に影響を及ぼすことはほとんどないといえます。

給水器具に使用されている石綿パッキン・ガスケットの健康への影

給水器具などに使用されており、経口により人体に取り込まれた場合の安全性については、以下2点の根拠により問題はないとする厚生労働省の見解(日本水道新聞2005年7月28日付、および、2005年7月13日付で厚生労働省健康局水道課が各都道府県宛に送付した『水道管に使用されている石綿セメント管について』)に従います。

1.「平成4年に改正した水道水質基準の検討時にアスベスト(石綿)の毒性を評価したが、アスベストは呼吸器からの吸入に比べ経口摂取に伴う毒性は極めて小さく、また水道水中のアスベストの存在量は問題となるレベルにないことから水質基準の設定を行わないとした。」としていること

2.「世界保健機関(WHO)が策定・公表している飲料水水質ガイドラインにおいても、飲料水中のアスベストについては『健康影響の観点からガイドライン値を定める必要はない』と結論できる。」としていること

石綿使用製品の分解及び廃棄の注意について

過去において、バルブや管継手などに用いられたアスベストを含有するパッキンやガスケット類は、その量が少ないこと、および、ゴム、プラスチックなどで固定されており非飛散性であることから、環境省が平成17年3月30日付で各都道府県宛に出した「非飛散性アスベスト廃棄物の取り扱いに関する技術指針」においても、「これらの用途については、使用量が少なく、また、使用形態が多岐に渡り、一律に指針化することが困難なことから、本指針の対象外とするが、廃棄物処理にあたっては、アスベストが飛散することのないよう取り扱う必要がある」と記載されています。

メンテナンスや廃棄等を目的として解体する場合は、飛散しないように水などをかけて湿潤状態にしたうえで、防塵マスク着用などの防護処置を施して取り除き、廃棄処理は破れにくいプラスチック袋等に入れて、必要に応じて「石綿含有廃棄物」等の表示を行い、産業廃棄物処理業者に処理を委託するのがよいと思われますが、各自治体により廃棄時の扱いが異なる場合がありますので、事前に地元の産業廃棄物処理業者または各自治体に問合せを行うことをおすすめします。

情報源・出典・参考情報

注意

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