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環境省「環境報告書作成の為の手引き等」を公表

「記載事項等の手引き(第3版)」及び「信頼性向上の手引き(第2版)」の公表について

情報発信日:2014-11-24

はじめに

環境省によると、「環境報告書」とは「企業などの事業者が経営責任者の緒言、環境保全に関する方針・目標・計画、環境マネジメントに関する状況(環境マネジメントシステム、法規制遵守、環境保全技術開発等)、環境負荷の低減に向けた取組の状況(CO2排出量の削減、廃棄物の排出抑制等)等について取りまとめ、名称や報告を発信する媒体を問わず、定期的に公表するもの」と定義しています。

これらの環境報告書を作成し公表することは、環境への取組について、取引先、投資家、顧客などのステークホルダーに向けて社会的説明責任を果たし、かつ環境コミュニケーションを図ることによって事業者の環境保全に向けた取組の自主的改善を進めるとともに、社会からの信頼を勝ち得て行くために大いに役立つものといえます。

しかし各企業や団体が勝手に作成しても、読む立場からは「欲しい情報が抜けている」「評価に妥当性があるのか」「他の企業や団体との比較が難しい」などという意見があり、逆に作成する立場からは「どんな情報をどのように公開したらよいのか」という悩みもあったため、環境省は、環境報告書作成に当たっての実務的な手引きとして、「環境報告書(2003年度版)」と「事業者の環境パフォーマンス指標ガイドライン(2002年度版)」を統合し、「環境報告書ガイドライン(2007年度版)」を作成・公開しました。その後、国際的な動向を踏まえた改訂が行われ「環境報告書ガイドライン(2012年版)」が公表されました。

今回公表された第3版は、「環境報告書の作成に初めて取り組む事業者や、環境報告書の作成に取り組んで間もない事業者を対象に、環境報告書の記載事項等を分かりやすく解説した『環境報告書の記載事項等の手引き』を改訂しました」と目的が述べられ、また「『環境報告書に係る信頼性向上の手引き(第2版)』は、環境報告書に係る信頼性へのニーズが社会的に高まっていることを受け、内部管理の徹底の手法や第三者による審査の手法を新たに追加し、環境報告書を作成する事業者の視点から、環境報告書に係る信頼性向上の手法をより分かりやすく解説したものです」と述べています。

今回は公表された、「記載事項等の手引き(第3版)」及び「信頼性向上の手引き(第2版)」について、要点を解説したいと思います

 

今回公表された「手引き」の目的と趣旨

1.「環境報告書記載事項等の手引き(第3版)」の目的と趣旨

本コラムの2010年1月22日版「環境配慮促進法と環境報告書」で述べていますが、「環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律(平成16年法律第77号:通称『環境配慮促進法』)」には「公的事業を行う特定事業者を政令で指定して、環境報告書の作成・公表を義務づけているほか、大企業者(上場企業及び従業員500人以上の非上場企業)に対し、環境報告書等の作成・公表の努力義務」を定めています。また、同法に基づき、環境報告書に最低限記載すべき事項と考えられる「環境報告書の記載事項等」が告示されています。

しかし、対象となる事業者の中には、環境報告書の作成及び公表を初めて行う事業者、取組んで間もない事業者、十分なノウハウが蓄積されていない事業者も多く、冒頭で述べたように「記載項目の具体的な内容をどのように決定し、環境報告書をどのように作成すれば良いのか」を具体的にわかりやすく説明する手引きが必要となるといえます。 そこで、「環境報告書ガイドライン(2012年度版)」を補足する形で、記載事項等を詳細にかつ具体的にわかりやすくするために、今回「環境報告書記載事項等の手引き(第3版)」が作成されました。

また、生物多様性などの新たな項目の追加、記載例を特定事業者と一般事業者に分けるなど、環境報告書をより容易に作成できるように配慮がなされています。
(注) 特定事業者とは、主に独立行政法人等の国の行政と関係する公益事業体など。

 

2.「環境報告書の信頼性向上の手引き(第2版)」の目的と趣旨

上述の「環境配慮促進法」には、作成・公表される環境報告書に対して、特定事業者は記載事項等に従って作成されているか否かについて、自己評価を行うこと、または第三者の審査を受ける等、環境報告書の信頼性を高めるように努力する義務も定めています。民間企業に対しても、記載事項等に留意して環境報告書を作成すること等、環境報告書の信頼性を高める努力を行うよう定めています。

従来、環境省では「環境報告書の信頼性を高めるための自己評価の手引き」を2006年に公表していますが、事業者の中には環境報告書に対して信頼性を向上させるための知識や経験が少ない場合も多く、そのような事業者に対しては環境報告書の信頼性向上に関する基本的な考え方や評価手法について、より具体的かつわかりやすい説明が必要になるといえます。

そこで、環境報告書に対する信頼性向上の手法が多様化している現状も踏まえて、詳細かつわかりやすく解説を行った「環境報告書の信頼性向上の手引き(第2版)」が作成されました。

 

改正の主なポイント

1.環境報告書の記載事項等の手引き(第3版)

(1)「環境報告書ガイドライン(2012年度版)」を踏まえて、本手引き中の「告示の内容」と「環境報告ガイドラインによる『記載する情報・指標』の対応が明確になりました。

(2)告示で記載が求められる事項等について、その必要性や背景及び取組の重要性が解説されました。

(3)全ての事業者によって広く活用されることを念頭に、原則として特定事業者向けと一般事業者向けの記載例が示されました。

(4)生物多様性の保全と生物物資源の持続可能な利用状況についての項目が追加されました。

(5)製品等に係る環境配慮の情報開示が記載されました(環境負荷低減に資する製品・サービス等及び環境関連の新技術・研究開発の状況、エコ製品の基準など、エコ製品の品目・量、割合、金額など)。

2.環境報告書に係る信頼性向上の手引き(第2版)

従来の「自己評価の実施」に加え、「内部管理の徹底」と「第三者による審査」を新たに追加されました。 3

 

その他の参考となるガイドライン

 

1.環境省「環境会計ガイドライン2005年版」(環境省)

環境省が環境会計への取組を支援するために、環境会計に関する共通の枠組みを構築することを目的として、1999年の「環境保全コストの把握及び公表に関するガイドライン(中間取りまとめ)」以降、2000年に「環境会計システムの導入のためのガイドライン(2000年版)」を、2002年に「環境会計ガイドライン2002年版」、さらに、2005年にはその改訂版である「環境会計ガイドライン2005年版」を取りまとめ、公表しました。「環境会計ガイドライン2005年版」では、環境保全コストの項目の分類、環境保全効果の項目の体系化、環境保全対策に伴う経済効果の概念の解説及び環境会計の開示様式の体系化を行っています。開示の様式としては、環境会計の公表用フォーマット、公表用フォーマット附属明細表及び内部利用のための管理表を紹介しています。

 

2.環境省「エコアクション21ガイドライン2009年版」(環境省)

エコアクション21は、事業者が環境への取組を効果的、効率的に行うことを目的に、広範な企業、学校、公共機関等の全てを対象とし環境省が策定したガイドラインです。エコアクション21では、環境への目標を持ち、行動し、結果を取りまとめ、評価する環境経営システムを構築、運用、維持するとともに、社会との環境コミュニケーションを行うための方法を紹介しています。環境省は、特に情報・資金・人的資源に乏しい中堅・中小事業者における環境配慮への取組を促進するため、1996年にエコアクション21を策定し、以後数回の改訂を経てその普及を進めてきており、2009年に「エコアクション21ガイドライン2009年版」をとりまとめ、公表しました。「エコアクション21ガイドライン2009年版」は、ISO規格をベースとしつつ中小事業者等でも取組みやすい環境経営システムになっています。なお、「エコアクション21ガイドライン2009年版」に基づく認証・登録は、(一財)持続性推進機構が実施しています。 中小企業者の場合は、当該ガイドラインを参考に環境報告書の開示内容を加減することも可能です。

 

3.GRI「G4サステナビリティ・レポーティング・ガイドライン」(Global Reporting Initiative)

GRI(Global Reporting Initiative)は、世界の様々なセクター、国、地域を代表する専門家や組織が参加して、サステナビリティ報告の国際的な枠組みを策定・提供することを目指して活動するNPOです。現在では、UNEP(国連環境計画)、国連グローバルコンパクト、OECD(経済協力開発機構)等と戦略的パートナーシップを結び、幅広く活動を展開しています。GRIは、2000年に「サステナビリティ・レポーティング・ガイドライン」(GRIガイドライン)の初版を発行し、2002年に第二版、2006年に第三版、そして2013年には現行版である第四版を発行しています。同ガイドラインは、組織が透明性を高めて説明責任を果たし、環境、社会、経済面でのパフォーマンスや影響を報告するための枠組みを示したものです。

 

まとめ

(1)環境報告書とは、企業などの事業者が、経営責任者の緒言、環境保全に関する方針・目標・計画、環境マネジメントに関する状況(環境マネジメントシステム、法規制遵守、環境保全技術開発等)、環境負荷の低減に向けた取組の状況(CO2排出量の削減、廃棄物の排出抑制等)等について取りまとめ、名称や報告を発信する媒体を問わず、定期的に公表するものです。
(2)環境配慮促進法により、特定事業者(独立行政法人などの公的事業者)に環境報告書の作成・公表を義務づけるとともに大企業(上場企業及び従業員500人以上の非上場企業)に対して作成・公表の努力目標を求めています。
(3)環境報告書作成に当たり、環境省が環境報告書作成ガイドラインを作成・公表していますが、初めて環境報告書作成する場合や経験が浅い事業者に対して従来よりも具体的で丁寧な作成のための手引きが「環境報告書の記載事項等の手引き(第3版)」として作成・公開されました。
(4)また、作成された環境報告書の信頼性を高めるための自己評価の手法、内部管理法、第三者による評価などをまとめ、「環境報告書に係る信頼性向上の手引き(第2版)」として公表されました。
(5)環境報告書には、生物多様性や製品やサービスに対する環境負荷低減にも項目として追加されました。
(6)近年、大手企業では、環境的側面(環境保護)だけではなく、「企業が利益を上げ、将来においても持続的に顧客に製品を供給し続けられる可能性を現在において持っていること」や社会的な側面(従業員に対する取り組み、社会貢献活動)も含めた報告書として、サステナビリティ報告書を作成する場合が増えています。さらに踏み込んでサステナビリティと企業の社会的責任(CSR)とは切り離せない関係にあるため、CSR(Corporate Social Responsibility)報告書とする場合もあります。
(7)以前に比べて、環境報告書作成に当たっては極めて具体的でわかりやすく解説されていますので、もしまだ環境報告書の作成が出来ていない場合には、これを機会に是非環境報告書の作成にチャレンジすることをお勧めします。

引用・参照情報

注意

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