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環境関連情報

製品アセスメントガイドラインとは

その背景と周辺について

情報発信日:2014-05-26

はじめに

現在、当工業会ではバルブ製品アセスメントガイドライン第2版を公開していますが、その目的や背景について少し整理してみたいと思います。

今考えれば「狂気の沙汰」とも思えますが、1945年7月16日、米国が世界初の原子爆弾を大気圏で爆発させるという実験、いわゆる核実験を初めて行いました。その後、広島・長崎に原爆が投下され第二次世界大戦が終結しましたが、それ以降もアメリカ、英国、フランス、ソ連、中国などが2,279回にも及ぶ核実験(うち502回が大気圏内)を行いました。これは実に広島に投下された原爆の3万5千発分にも及ぶと言われています。「地球はいくら汚しても自然が浄化してくれる」と考えていた時代です。

1960年代以降、我国は経済の高度成長期を迎え、「大量生産・大量消費、モノは使い捨て」の時代に入りました。「資源は無限にある」と思っていた時代です。

しかし1990年代に入ると、石炭や石油などのエネルギーだけでなく鉱物資源にさえも枯渇の心配が出て来ましたし、空気も水も自然の浄化作用ではとても追いつかないほどの汚染が広がり、二酸化炭素まで、その排出量が問題になって来ています。

ここ僅か半世紀ほどで、地球の環境は極めて危機的な状況になりつつあると言っても過言ではないと思われます。そのような状況においては、種々の面で地球環境の負荷軽減を意識し、持続可能な発展を目指さなければならない時期に来ていると言えます。

モノ作りにおいては、製品の設計・製造から製品が寿命を迎え廃棄されるまでのライフサイクル全てを通じて環境に配慮したモノ作りが求められています。

製品が環境にどの程度の負荷を与えるかは、その製品の設計の良し悪しによりほぼ決定してしまうと言え、環境に配慮した設計が極めて重要になって来ます。

では、バルブや継手を設計するに当たって、どのような点をどのようにすれば「環境に配慮した良い設計」と言えるのでしょうか。これをまとめたのが「バルブ製品アセスメントガイドライン」です。最近、色々な企業や工業会、あるいは地方自治体などの単位で、このような製品アセスメントガイドラインを策定して、それに適合する場合に「環境に配慮した製品」であることを示すための「種々の環境表示(マーク)」を行うことが多くなって来ています。

今回は、製品アセスメントガイドライン作成の背景や関係する法律、規格、ガイドラインなどの紹介等、より理解を深めて頂くための最新情報をまとめてみました。 。

 

環境表示・環境ラベルについて

「この製品は環境に配慮した製品です」と消費者にPRするためにカタログや製品本体または梱包に表示されるマークを環境ラベルと呼び、環境省のホームページを見ると種々の環境ラベルが紹介されています。

以下に例をいくつか示しますが、皆さんも、一度や二度は見たことがあると思います。

環境ラベルを表示する場合の方法

環境ラベルを用いて環境表示を行う際、何の根拠もなく闇雲にラベルを用いると、悪質な場合には「景品表示法」により罰せられることがあります。また消費者から「色々なマークがあるけれど、どんな基準に従って、どのように評価したのかわからない」というようなクレームもあります。このため環境表示を行う場合にはJIS(日本工業規格)に示される以下の3つの規格からいずれかを選択し、かつ環境省が示す「環境表示ガイドライン」に従って行うのが一般的な手順と言えます。

詳細は以下のJIS規格を参照してください。

・JIS Q 14020 環境ラベル及び宣言「一般原則」
・JIS Q 14024 環境ラベル及び宣言「タイプI 環境ラベル表示 原則及び手続き」
・JIS Q 14021 環境ラベル及び宣言「自己宣言による環境主張(タイプII環境ラベル表示)」
・JIS Q 14025 環境ラベル及び宣言「タイプIII 環境宣言 原則及び手順」
・JIS Q 17050-1 適合性評価 「供給者適合宣言-第1部:一般要求事項」

【関連規格】

・JIS Q 14006 環境マネジメントシステム 「エコデザインの導入のための指針」
・JIS C 9910 電気・電子製品の環境配慮設計
・JIS C 9914 オーデオ、ビデオ、情報及び通信技術機器 「環境配慮設計」

上表で示した通り、タイプI及びタイプIIIは第三者が介在し、個別の製品ごとに高い認証費用が発生するため、世界的にみても実施されている例は少なく、大半の環境表示は自己宣言によるタイプIIによって行われています。

このタイプIIの自己宣言による環境表示は事業者が独自に定めた製品アセスメントマニュアルに従って行っても構いませんが、環境省が公表している「環境表示ガイドライン」には購入者に対する信頼性を高めるために、複数の事業者または工業会において自主的に取り決めた、評価項目・方法や評価基準を基に従って実施する方が望ましいと記載されています。

 

海外における環境配慮設計の動き

EUにおけるエコ設計指令(EuP指令とErP指令)

海外、特にEU圏においてはエネルギー消費量を大幅に抑えることを目的として「エネルギー使用製品に対する環境配慮設計指令(EuP指令2005/32/EC)」が告示され、その後、対象とする製品の適用範囲を拡大した「エネルギー関連製品に対する環境配慮設計指令(ErP指令2009/125/EC)」が2009年10月31日に告示され、同11月20日に発効しました。

環境フットプリント制度

さらには、全ての製品や組織に対して「製品やサービスの環境負荷を一定の算定基準で数値化し、製品への表示の義務化等」が検討されており、環境フットプリント制度と言われています。環境フットプリント制度は一種のLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)で、現状では製品の生涯における二酸化炭素の排出量だけを意味しており、LCA=カーボンフットプリントとほぼ同義語として使われています。しかし現在EUで検討されている環境フットプリントは、地球環境に影響を与えるのは二酸化炭素以外にもオゾン層破壊物質や生体に有害な物質、微粒子物質など14項目が対象として検討されています。また、製品だけでなく、組織的に事業活動を行う事業者も対象として検討されています。

 

日本国内における環境配慮設計の動き

国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)の制定

国の行政機関や独立行政法人などの機関及び地方自治体などが物品などを購入する場合には、環境に配慮した製品を優先的に購入するように求められています。

消費者基本法&消費者基本計画(平成17年4月策定、平成24年7月改訂)

この中に「『環境ラベルなど事業者等の自己宣言による環境情報の提供に関して、その方法や内容等の望ましい在り方について継続的に検討する』。消費者が環境配慮型製品の選択を容易にすることが出来る環境情報の提供方法及びその内容に関する検討を実施。」と記載されています。

環境配慮設計のJIS規格化

前述しましたが、JIS規格の環境マネジメントシステム14000シリーズの中に、JIS Q 14006 環境マネジメントシステム 「エコデザインの導入のための指針」 が規定されています。さらに、具体的な製品を対象とした以下2つのJIS規格が制定されています。

・JIS C 9910 電気・電子製品の環境配慮設計
・JIS C 9914 オーデオ、ビデオ、情報及び通信技術機器 「環境配慮設計」

この環境配慮設計に関する動きは経済産業省において3R政策と並行して検討が重ねられており、今後拡大して行くと予想されます。

他の工業会の動き

古い資料ですが、経済産業省が製品アセスメントガイドラインについて業界団体にヒヤリングを行い、2004年8月末現在の状況を公表しています(表2)。現在は、かなり増加していると思われます。

表2 業界団体による製品アセスメントガイドライン作成状況(出典:経済産業省、2004/8/31現在)

業界団体名

製品アセスメントガイドラインの動向

(社)日本自動車工業会

1994/7

「リサイクル促進のための製品設計段階における事前評価のガイドライン」作成

2001/12

「使用済物品等の発生の抑制/再生資源又は再生部品の利用に関する判断基準ガイドライン」作成

(社)自転車産業振興協会

1997/6

「自転車の製造に関する製品アセスメント・マニュアルガイドライン」作成

2002/3

「自転車の製造に関する製品アセスメント・マニュアルガイドライン」改定 (3R対応及び電気自転車の追加)

(財)家電製品協会

1991/10

「家電製品・製品アセスメントマニュアル」作成

1994/10

「家電製品・製品アセスメントマニュアル」改定

1998/9

「テレビジョンリサイクルのための設計ガイドライン」作成

2001/3

「家電製品・製品アセスメントマニュアル」改定(3R対応)

2014/5現在

「家電製品・製品アセスメントマニュアル」第4版を公開中

(社)日本オフィス家具協会

1996/4

「オフィス家具の環境対策ガイドライン」作成

1998/4

「JOIFA環境自主行動計画」作成

2001/4

「オフィス家具の環境対策ガイドライン」改定(3R対応)

2001/4

「金属家具製品アセスメントマニュアル」作成

2002/6

「JOIFA環境自主行動計画」改定

2003/5

「中古家具取扱いに関する考え方」を発表、普及のためのセミナー実施

2004/3

「JOIFA環境自主行動計画」の普及状況を追跡調査、「JOIFA環境自主行動計画フォローアップ報告書」発表

(社)日本照明器具工業会

1992/3

「照明器具・製品アセスメントマニュアル」作成

1995/12

「照明器具・製品アセスメントマニュアル」改定

2001/9

「照明器具・製品アセスメントマニュアル」改定(3R対応)

日本遊戯機械工業組合

1998/1

「製品アセスメントマニュアル」作成

2001/7

「製品アセスメントマニュアル」改定(3R対応)

日本電動遊戯機器工業組合

1998/1

「製品アセスメントマニュアル」作成

2001/8

「製品アセスメントマニュアル」改定(3R対応)

(社)電子情報技術産業協会

1995/7

「情報処理機器の環境設計アセスメントガイドライン」作成

2000/9

「情報処理機器の環境設計アセスメントガイドライン」改定(3R対応)

(社)ビジネス機械・情報システム協会

1994/1

「地球環境保護を考慮した事務機器製品開発のための指針」作成

2000/3

「製品アセスメントマニュアル作成のためのガイドライン調査報告書(複写機等)」作成(3R対応)

(社)日本ガス石油機器工業会及び(社)日本ガス協会

1993/4

「ガス機器アセスメントガイドライン」作成

1997/2

「ガス機器アセスメントガイドライン」改定

(社)日本ガス石油機器工業会

1993/10

「石油機器アセスメントガイドライン」作成

1998/8

「石油機器アセスメントガイドライン」改定

(社)日本ガス石油機器工業会及び(社)日本ガス協会

2001/3

「ガス・石油機器アセスメントガイドライン」改定(3R対応)

キッチン・バス工業会、強化プラスチック協会浴槽部会、日本樹脂浴槽工業会、日本設備ユニット工業会

2001/6

「浴室ユニット製品アセスメントマニュアル」作成(3R対応)

2003/6

「浴室ユニット製品アセスメントマニュアル」改定

キッチン・バス工業会

2001/4

「システムキッチン製品アセスメントマニュアル」作成(3R対応)

(社)日本電球工業会

1992/7

「ランプ及び安定器・製品アセスメントマニュアル」作成

2002/7

「ランプ及び安定器・製品アセスメントマニュアル」改定(3R対応)

日本自動販売機工業会

1997/8

「自動販売機製品アセスメントマニュアル」作成

2002/3

「自動販売機製品アセスメントマニュアル」改定(3R対応)→「自動販売機製品アセスメントガイドライン」に名称変更

2004/3

「自動販売機製品アセスメントガイドライン」改定(評価表見直し)

情報通信ネットワーク産業協会

2001/3

「携帯電話・PHSの製品環境アセスメントガイドライン」作成

(社)日本エアゾール協会

2002/8

「エアゾール容器の易リサイクル設計ガイドライン」作成

 

まとめ

(1) 急激な人口の増加や産業の発達により、この半世紀余りの間に資源・エネルギーの枯渇や大気や水の汚染、気候変動が進みました。地球環境は危機的な状況に陥りつつあり、色々な意味で早急に環境負荷を低減し持続可能な社会を構築する必要に迫られています。

(2) 環境先進圏であるEUを中心として、エコデザインに関する法律や規定が整備されつつあります。

(3) このような時代を背景として自社の製品が環境に配慮して設計されていることを消費者にPRして差別化を図ろうとする動きが一般化しつつあります。

(4) 自社製品が環境に配慮して設計されていることをラベルやマークでPRすることを「環境表示」と言います。この場合、確固たる根拠もなく闇雲に「環境表示」を行うと、悪質な場合には「景品表示法」により罰せられますので、JISに定められた3つの規格の1つを選択し、かつ環境省が定める「環境表示ガイドライン」に従い実施するのが妥当と言えます。

(5) JISに定められた環境表示手法には、1) 第三者が評価するタイプI、2) 第一者(製造者)が評価し、自己宣言するタイプII、3) 第三者が確認したデータを示し評価は第二者(購入者)が行うタイプIIIがありますが、第三者が介在するタイプI及びタイプIIIは費用面での負担が重いため、タイプIIの自己宣言方式が一般的です。

(6) タイプIIの自己宣言によって、品質表示を行う場合には、どんな項目に対して、どのような評価基準で評価を行ったのかを明確にする必要があり、これを製品アセスメントガイドラインまたは製品アセスメントマニュアルと呼び、多くの場合は公表されており、購入者から請求が有った場合には評価結果も開示が求まられます。

(7) 環境に配慮した設計を行う事は、製品重量の低減や部品数の削減など多くの場合にはコストダウンの要素も多いので、この機会に「バルブ製品アセスメントガイドライン」を用いて環境配慮設計に取組まれてはいかがでしょうか。なお、上述したように製品アセスメントガイドラインは本来品質表示を行うための適合評価書としても利用できるため、当工業会においても、将来において品質表示を行う場合の運用規定などについて検討を行っていますので、今後の方向性については逐次お知らせして行きます。

引用・参照情報

注意

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