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情報発信日:2013-10-25
2013年9月30日付け本コラム「EUにおける最近の環境政策#1」では、「欧州資源効率プラットホーム(EREP)のジョン・ブルトン議長は『製品パスポート(Product Passport)』が循環型経済へ移行するための『重要なイノベーション』だと主張する。製品パスポートは、EREPが6月17日に発表した『資源効率的な欧州に向けた行動(Action for a Resource Efficient Europe)』でその活用が提言されており、今後、この提言を受けた欧州委員会、加盟各国政府など政策当局やビジネス界の動きが注目される」という内容の、日本貿易振興機構(JETRO)の2013年8月9日付け通商公示を紹介し、欧州資源効率プラットホーム(EREP)とは何かについて述べました。
今回はこのEREPが循環型経済へ移行するために重要なイノベーションであると提言している「製品パスポート」とは何かについて解説したいと思います。
EREPが提唱する「製品パスポート」とは、「製品が寿命を迎えた時に、その製品を分解したりリサイクルしたりするために必要な構成部品や材料に関する一連の情報」と定義しています。
EREPのジョン ・ブルトン議長は「製品パスポートの考え方は、ある重要な革新であり、我々の経済発展モデルは、完全な集中的資源の利用に基づくものである」と言っています。
そして、EREPは暫定的な声明において「『現状において種々の製品がどんな資源を含んでいるかの情報が十分ではない』と言う問題に取り組みたい。それは、リサイクル事業者や再使用ユーザーに対して、例えば電子製品に含まれる危険な化学物質などの資源について、明確な情報を得ることが出来れば経済活動としてのリサイクルとリユースがもっと促進出来ると思う」と述べています。
「製品パスポート」とは、その製品を構成する部品の材料が何から出来ているかの情報を、再利用ユーザーやリサイクル業者に明確に伝えることですが、この基本的な考え方は既に存在しています。それは、「Environment Product Declaration:EPD」です。これはISO 14025(JIS Q 14025)「環境ラベル及び宣言--タイプIII--原則と手順」で、製品やサービスの環境ラベル(表示)に関する国際規格です。この規格には、製品の成分と材料の表示を含んでいます。現在この規格に従い、表示を行っているのは、僅かに19ヶ国327製品に留まっていますが、政策面においては、この考え方に大いに刺激を受けました。
環境委員のJanez Potocnikが「EREPの役割は『EU委員会に推薦すべき政策』を提唱することであり、これによりEU委員会がこの考えに従って、今後行動するかも知れません」と言っているように、EU委員会に対して「資源の有効性に対する究極の制限を考慮して、『製品パスポート』のような提案を我々が行って行く必要性がある」と述べています。
EREPのEU委員会に対する他の提案は、
(1) 資源効率に関する目標設定の必要性
(2) 「環境に有害な助成」に対する段階的な廃止
(3) 公的なグリーン調達のさらなる推進
(4) 中小規模の企業に対する資源効率化の為のツールの確立
(5) その他
などがあります。
EREPは欧州資源効率化に対する委員会イニシアチブとしてこの準備を行い、2013年11月に最終的な提案を発表するとのことです。
2013年7月16日付けEurActiveは ”EU group says a ‘product passport’ would open doors to eco-innovation”と題する記事において、「ドイツのニュルンベルグ市で使っていた路面電車とスウェーデンのレジナ鉄道の特急列車が寿命を迎えたが、その車両に使われていた金属、プラスチック、ガラス及び他の材料の90%以上が溶かされて、他の製品に形を変えて再利用することが出来た」という実例を冒頭で紹介し、「これと同じことが、少なくとも理論的にはEU域内における道路、鉄道、工場及び家庭内における無数の製品にとっても同じことが出来る」と述べて、EU諮問委員会であるEREPが、全てのこれらのモノを将来の具体的な資源とみなし、欧州で製造・販売される全ての商品にどんな材料が使われているかを明確にする「製品パスポート」により、製品が寿命となった時、再利用が可能となるように勧告していることを紹介しています。
また、EU委員会の諮問機関であるEREPが「製品パスポートが資源効率を改善・改革し欧州全域で新な仕事を生み出すとしてEU委員会に対して提言した」と述べています。
EREP議長のジョン・ブルトンは「この製品パスポートの考え方が採用されれば、持続可能な社会組織基盤を作る上での重要な構成要因になる」としています。
そして、製品パスポートは利己的なビジネスを変容させることに利用されるだろうし、企業は製品パスポートを競争ツールとして使用することを望み、結局はそれがビジネス標準になると思われるとも語っています。
2013年6月にEREPは上記の一連の提案の実施によって、欧州が資源革新で他国をリードしている間に、最高で24%の仕事を創出し、原料の必要量を減らすことが出来るとしています。
そして、中小企業に対する持続可能な材料供給を支援する計画を政府に提案し、全ての企業に持続可能な供給を標準化するように迫りました。
前述したように、この製品パスポートの考え方を、ISO 14025「環境ラベル及び宣言」に則って既に自主的に実践している企業もあります。それが、この記事冒頭の例にある、ドイツのニュルンベルグの路面電車とスウェーデンの特急電車を解体したカナダの航空機メーカーのボンバルディア社です。そして、その宣言はその製品の生涯使用エネルギー量の推量と製品の資源としての利用を提供します。
このような発表に対する支持者達は「どのような材料が使用されているかを発表しても、それらがどの製品に含まれるかが企業秘密ではないので、企業の競争力が失われることはない」と言っています。そして、欧州が新規の資源の入手のために金属や鉱物、その他の材料を鉱山採掘による輸入依存を減らすことによって仕事とビジネスの可能性が見えて来ると思われます。ある場合、EUの法律または方針は既にそうする場所を提供する状況にありますが、それはまだ限定的なものですので、他の場合には、もっと強い誘因が必要かと思われます。
例えば、欧州のプラスチック産業は、プラスチックのリサイクル市場を刺激するために、EUにおけるプラスチックのゴミ処理を拡大することに対して禁止するように求めています。
EU委員会の環境問題に関する諮問機関である「欧州資源効率プラットホーム(EREP)」が提案している「製品パスポート(product passport)」とは、使用済みあるいは寿命となった様々な製品をゴミとして処理するのではなく、分解して材料ごとに分別し、これを溶かして資源として繰り返し再利用することを目的として、製品を構成する全ての部品の材質を明確にすることと言えます。これによって、限りある資源を有効に使って「資源の高効率化」を図ろうとするものということがわかります。
確かに、使用済みまたは寿命となった製品をゴミとして処分してしまうよりも、分解・分別して再利用することが循環型社会の基礎となりそうに思えますが、製品パスポートによって、該当製品に使用材料一覧を単に添付しただけでは、現実には分解・分別が容易に行えるとは思われません。
現在の電気・電子製品や自動車などは、かなりの数の部品によって組立てられていますので、それら部品一点ごとに材料表示を行ったり、出来るだけ少ない材料による部品を使ったり、共通部品を多くしたり、あるいは分解しやすくしたりするなど、製造業にとっては幾多の難問がありそうに思われます。
このためには、現在当工業会が進めている「バルブ製品アセスメントガイドライン 〜環境に配慮したバルブ製品づくりのための環境適合設計〜」の作成などを、多くの工業会や団体が実施して行くことが重要であると思われます。
今年も、この時期から中国では、大気汚染問題がさらに深刻な状況を見せ始めています。温室効果ガスによる気象変動問題やフロンによるオゾン層破壊問題など、早急に対策を立てなければならない問題であることはわかっていても、「総論賛成・各論反対」「面倒臭い、難しい」などのエゴなどもあり、なかなか対策が立てられないのが実情ですが、地球環境と言っても、中国の大気汚染のように、結局は自分達に降りかかって来る問題ですので、今回のこの製品パスポートに対しても、EUが今後本気で取り組んで来るとすれば、今から準備を始めた方が良さそうだと思います。
この問題については、今後も引き続き注視して行きたいと思います。