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情報発信日:2012-12-21
2010年4月6日、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を事務局として、民間企業・団体と経済産業省からなる官民協議会「スマートコミュニティ・アライアンス:Japan Smart Community Alliance (JSCA)」が設立されました。事務局の発表によると2012年12月10日現在の会員数は401社に達したとのことです。
さて、最近この「スマートコミュニティ」とか「スマートグリッド」という言葉を時々耳にしますが、2010年2月15日付け経済産業省報道資料の「『スマートコミュニティ・アライアンス』の設立」によると、スマートコミュニティとは「電気の有効利用に加え、熱や未利用エネルギーも含めたエネルギーの『面的利用』や、地域の交通システム、市民のライフスタイルの変革などを複合的に組み合せたエリア単位での次世代エネルギー・社会システムの概念」と解説していますが、今ひとつ理解できませんので、今回は次世代エネルギーの効率的な活用を目的とした、「スマートグリッド」と、その「スマートグリッド」を利用した「スマートコミュニティ」について、少しわかりやすく解説してみたいと思います。
温室効果ガスの削減や東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故をきっかけに、太陽光や太陽熱、あるいは風力、地熱などの再生可能エネルギーが注目を浴びています。
従来の電力供給は東京電力や関西電力などの電力事業者が原子力発電所や火力発電所で発電した電気を需要者の使用量に合わせて発電量を調節し、一方的に供給してきました。
しかし、太陽光や風力などによる再生可能エネルギー発電の多くは、既存の電力事業者以外の新規参入電力事業者や需要者自らが発電し余剰となった電力を、既存の電力事業者が買取る「売電」という方式が取られるために、送電網において電気の逆流が発生することになります。しかも、これら太陽光や風力などの再生可能エネルギーは自然現象に依存するため、その発電量は需要量に関係なく気候や天候に左右されるという不安定な状況が生じてしまいます。従って、将来大量の再生可能エネルギーを利用しようとした場合には、既存の電力事業者と連携して需給バランスを最適に制御して再生可能エネルギーを有効かつ無駄なく利用するための制御システムを構築することが必要となります。この制御システムをスマートグリッドと呼びます。
経済産業省のホームページにおいて、このスマートグリッドはコミュニティのコントロールセンターとして設けられ「地域の情報・エネルギー・交通を最適に管理するコントロールセンター」と定義され、(1) 企業・自治体対住民、住民対住民の様々なサービスを管理・提供する拠点、(2) 変動の多い自然エネルギー地域内で有効活用するため、各家庭やオフィスで余った電力を地域内で有効利用、(3) 電気バスや電気自動車の位置情報と充電状態を管理することで、交通管理とエネルギー管理を一体化することを目的とすると記されています。
一方、EICネット環境用語集において、スマートグリッドとは、
情報通信技術によって電力供給者と消費者を結びつけることで従来の集中型電力供給システムの課題を解決することをめざす、次世代送配電システム。「賢い送電網」や「賢い送配電網」「次世代エネルギー供給網」などとも呼ばれる。
従来のような供給側から消費側への一方通行的な中央集中型の電力管理とは異なり、供給側・集中型の発電技術に加えて消費側の分散型エネルギー技術(自然エネルギー、蓄電池、エネルギー需要管理など)をインターネットなどITの最新技術を活かして取り込んでいくことで、エネルギー源の分散化、双方向化、オープン化を実現するもの。こうしたシステムを活用することによって、自然エネルギーの導入を最適かつ低コストで達成することができるとも期待されている。
アメリカではカリフォルニア州の電力危機(2000年夏)やニューヨークの大停電事故(2003年8月)などを受けて高まった老朽化した送配電網の整備などを契機に取り組みが進んだ。一方、安定した送電網を持つ日本では取り組みが遅れている。
と記されており、従来の大規模な中央集中的な電源(エネルギー供給)から消費地に近いところでの分散型電源(エネルギー供給)への移行に対するための送配電網や蓄電システムなどのインフラをも含めたエネルギーの最適制御システムと言えます。
iFinanceにおけるビジネス・産業用語では、「スマートコミュニティとは『環境配慮型都市』とも呼ばれ街全体の電力の有効利用や再生可能エネルギーの活用などを、都市の交通システムや住民のライフスタイル変革まで、複合的に組み合わせた社会システムをいう。これは、公害などの環境問題への配慮と快適な生活を両立するために、ITや省エネなど多岐にわたる最先端の技術を組み合わせた『システムとしての社会インフラ』である」と紹介されています。
スマートコミュニティとは、前述のスマートグリッドにより単にエネルギー・電力の受給バランスを最適に制御された街というだけではなく、環境に優しく安全で安心なエネルギーの需給インフラを有し、かつ住宅やオフィスなどにおいては省エネ製品が導入されスマートメーターが備えられ、交通は燃料電池自動車や電気自動車などが最適な運行管理により渋滞などのエネルギーロスを排除するなど、情報通信などの先端的な環境・エネルギー管理技術が総合的に運用された未来型環境配慮都市と言えます。
このようなスマートコミュニティ構想は先進国においてはもちろん、発展途上国においても構想が練られている段階ではありますが、都市の計画段階から都市のインフラを含めて総合的な開発が必要となるため、行政だけではなく多くの民間企業や団体の参画が不可欠になります。
また、このスマートコミュニティ構想においては通信や制御を含めて国際的な標準化を図ることによって、新規の産業として海外展開が可能となるため、我国においては経済産業省が主導する形で、冒頭のスマートコミュニティ・アライアンスが設立されました。
冒頭に記したスマートコミュニティ・アライアンスは経済産業省が2010年2月15日付けでその設立を発表し、環境配慮型未来都市であるスマートコミュニティ作りのための各種機器やインフラ構築のための開発や標準化を行うための組合として、事務局をNEDOに置いて、参加企業の募集を開始しました。
設立趣旨はJSCAによると、
地球温暖化に係わる世界的な関心の高まりを背景に、太陽光や風力等の再生可能エネルギーの利用拡大が見込まれる中、これらを安定的に供給し、情報通信技術も取り入れて、より効果的・効率的な系統を可能とするスマートグリッドに世界的な注目が集まっております。
今後、欧米、アジア等を中心に大きなスマートグリッドの市場が生まれ、より包括的なスマート社会をめざした動きが広がることが見込まれます。これらに日本企業が積極的にアクセスしていくためには、 国内の取り組みを加速することに加え、個別の企業では取り組むことが難しい標準化への対応、社会 システムの提言等の共通的な課題に対する官民を挙げた議論の受け皿が必要です。 これらを踏まえ、幅広く関係者の連携を強め、国際標準化の獲得に向けた様々な情報発信やロードマップの作成など、共通的な課題に取り組むための実務母体として、平成22年4月6日に「スマートコミュニティ・アライアンス」を設立いたしました。
本アライアンスは、現在、電気・ガス業、自動車、情報・通信業、電気機器業、建設業、商社、自治体、 大学等、趣旨に賛同する企業・団体(別表)が会員として参加しております。業界の垣根を越えて経済界全体としての活動を企画・推進するとともに、国際展開に当たっての行政ニーズの集約、障害や問題の克服、公的資金の活用に係わる情報の共有などを通じて、官民一体となってスマートコミュニティを推進するために活動しております。
と記されています。
JSCAの発表によりますと、種々の業界からの参加は増加しており2012年12月10日現在の会員数は401社に達しているとのことです。
2012年12月22日付けで、市場調査会社の(株)富士経済は「スマートコミュニティ関連市場を調査」と題した調査結果の概要を自社のホームページに発表しました。
これによると、2012年のスマートコミュニティ関連市場規模は、国内市場が1兆4,683億円(見込み)、8年後の2020年には3.4倍の3兆8,008億円と予測、世界市場は2012年が18兆5,426億円(見込み)、2020年には2.5倍の40兆0,555億円と予測しています。 国内市場の内訳は以下の通り(出所:(株)富士経済)。
上表の具体的な調査対象は以下の通り(出所:(株)富士経済)。
※詳細は、(株)富士経済のホームページ及び同社発刊の調査資料をご参照下さい。
2012年12月16日に行われた衆議院議員選挙において、原発再稼働反対・原発の即時稼働停止を唱えた政党は大きな支持を得られず、安全が確認された原発から順に再稼働し、今後の10年間において方向性を見極めるとした案が現実的であるとして、自民党が大勝しましたが、枯渇性化石エネルギーからの脱却、温室効果ガス放出がなく、安心で安全な再生可能エネルギーへのエネルギー転換は、今後確実に進むと思われます。
そのようなエネルギー転換においては、今回述べたスマートグリッドと呼ばれる、新たなエネルギー最適制御システムが必要だということがわかって頂けたと思いますが、その中には当然ガスや蒸気、あるいは温水などのエネルギーに関連する流体の制御も必要になると推定されますので、興味のある方は、一度スマートコミュニティ・アライアンスと接触してみてはいかがでしょうか。