ホーム > 環境について > 環境関連情報 > 脱原発・原発ゼロ社会に向けて #1
情報発信日:2012-12-21
地球温暖化防止のための温室効果ガスの排出量削減を目的として、新エネルギー、再生可能エネルギー、あるいは、石油代替エネルギーとか次世代エネルギーと呼ばれる、従来とは違った環境に優しいエネルギーの普及が求められてきましたが、東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故をきっかけとして、さらに安心で安全なエネルギーへの転換が急がれる状況となってきています。
しかしながら、従来のエネルギーに比べると、まだまだコスト面や安定供給面などに課題が山積していることや、雑多な電源ミックスを使用するための制御システム(スマート・グリッド)の構築や送電網の再整備などインフラ問題や太陽光や風力による自然現象に依存する場合の対応としての効率的な蓄電システムなどの問題もあり、なかなかエネルギー転換が進まないのが実情です。
このような状況にはありますが、この先の日本は温室効果ガス排出量の削減と使用済み核燃料の処分問題も含めた原発ゼロへの方向へ進むのは間違いないと思われます。政府としても、種々の政策として法規制・税制優遇処置・補助金交付などによって新しいエネルギーへの転換を目指し、舵を切ろうとしていますので、今回は「従来のエネルギー」と「今後のエネルギー」とはどんなものを言うのか、今後の安心で安全なエネルギーを普及させるためにどんな政策が進められているのかについて解説したいと思います。
従来の石炭や石油あるいは天然ガスなどによる化石エネルギーやウランによる原子力エネルギーなどの地下埋蔵物を資源としているエネルギーは、「一度使ってしまえばなくなってしまう」、いわゆる枯渇性エネルギーであり、且つ温室効果ガスの排出や有害な廃棄物の発生があるため、これらのエネルギーから脱却して、従来とは違ったエネルギーへ転換する必要性が叫ばれています。
今後に期待される新しいエネルギーは「新エネルギー」、「再生可能エネルギー」、「石油代替エネルギー」、「次世代エネルギー」とか色々な呼び名がありますが、それぞれ同じ意味なのでしょうか、それとも別物なのでしょうか。まずは、この辺から解説して行きたいと思います。
まずは、最近、脱原発・原発ゼロという時に代替エネルギーとして頻繁に叫ばれている再生可能エネルギーについて述べたいと思います。
元来、エネルギーとは低いところから高いところには移動しませんので、一度使用されればなくなってしまうため、やがては枯渇してしまいます。従って、従来の石炭や石油、天然ガスあるいは原子力エネルギーに利用されるウランなどは、人類が生存している間に枯渇型してしまうと考えられるため枯渇性エネルギーと呼ばれています。
反面、厳密に言えば同じエネルギーですので、使用すればやがては枯渇してしまうはずですが、少なくとも我々人類が生存している間は枯渇しないと考えられる、太陽の熱や地球の天体運動によって発生する光や風あるいは波や地熱などから取り出されるエネルギーを再生可能エネルギーと呼び、主に自然現象によって生じるエネルギーを言います。
特徴としては、自然現象から生じるため温室効果ガスの発生や有害物質の発生がなく、クリーンで安全なエネルギーであり、かつ半永久的に利用可能であることが利点である反面、自然現象に由来するため、天候や季節、時間などに左右されやすく人為的な制御が難しいことと、エネルギー密度が低いためにコストが高い点が課題です。
新エネルギーとは、本コラム2011年10月27日付け「資源・エネルギーの枯渇と再生エネルギー(1)再生可能エネルギーとは」の中で述べていますが、1997年に制定 (2002年改正) され経済産業省所管の「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(通称:新エネ法)」によって定義されており、その由来から供給サイドでは、(1)自然エネルギー(再生可能エネルギー)、(2)リサイクル・エネルギー、需要サイドでは、(3)従来型エネルギーの新しい利用形態の3つに分類されます。具体的には、1) 太陽光発電、2) 風力発電、3) 太陽熱利用、4) 温度差エネルギー、5) 廃棄物発電、6) 廃棄物熱利用、7) 廃棄物燃料製造、8) バイオマス発電、9) バイオマス熱利用、10) バイオマス燃料製造、11) 雪氷熱利用、12) クリーンエネルギー自動車、13) 天然ガスコージェネレーション、14) 燃料電池、が含まれます。
同法は経済性面で実用化が進まない新エネルギーの積極利用を促進することが目的であるため、すでに実用化段階に入った小規模水力発電、地熱発電、あるいは、まだ研究段階の波力発電や海洋温度差発電などは新エネルギーとして指定はされていませんが、自然エネルギーの範疇に入るといえます。このように、新エネルギーとは日本が独自に定義した言葉で、一部に再生可能エネルギーではない従来型エネルギーの新しい利用形態などのエネルギーも含まれますが、通常はほぼ同義語として使用されています。海外では代替エネルギー(alternative energy)ともいわれています。
なお、新エネルギー法とはEICネットの環境用語集には「資源制約が少なく、環境特性に優れた性質を示す、石油代替エネルギーの導入に係る長期的な目標達成に向けた進展を図ること目的に1997年制定。経済産業省所管。」と記されています。
EICネット環境用語集によると、石油代替エネルギー法とは「エネルギーの安定的かつ適切な供給の観点から、石油代替エネルギーの開発及び導入を促進する法的枠組みとして、1980年に制定された。経済産業省所管。」とあり、石油代替エネルギーとは「同法で定める『石油代替エネルギー』とは、第2条に定められた、(1)石油(原油、揮発油、重油等省令で定める石油製品を含む、以下同じ)以外の燃焼の用に供されるもの、(2)石油以外を熱源とする熱、(3)石油以外を熱源とする熱を変換して得られる動力、(4) 石油以外から得る動力を変換して得られる電気―をいう。」と記載されており、さらに石油代替エネルギーの供給目標について「また、『石油代替エネルギーの供給目標』(閣議決定)の策定・公表と、(独法)新エネルギー・産業技術総合開発機構が実施する各種事業を規定している。」としています。
従って、石油代替エネルギーとは、石油以外の石炭、天然ガス、原子力発電のためのウランなども含まれていると解釈され、上述の再生可能な自然エネルギーや新エネルギーなどとは別物と言えます。
新エネルギーと同義語で使用されたり、再生可能エネルギーと同義語で使用されたりと、明確な定義はないようです。
経済産業省資源エネルギー庁のホームページの「次世代エネルギーパーク」から見ますと、主に風力発電・太陽光発電バイオマス発電・中小規模水力発電・地熱発電などの再生可能エネルギー及び燃料電池やコジェネも含めた地球環境に優しいエネルギーを指しているようです。
無尽蔵でクリーンで安全・安心なエネルギーである再生可能エネルギーなど多くの利点を有する次世代エネルギーではありますが、最大の問題点は従来のエネルギーに対してエネルギー密度が低いためにコストが高い事や自然現象に依存しているために供給が不安定であり、思うように利用が進んできませんでした。
このため資源エネルギー庁は「近年、我が国の石油依存度の低下傾向が停滞する中、むしろ中東依存度は高まっていること、さらに原子力発電所立地におけるリードタイム長期化等の諸情勢の変化を踏まえると、風力、 太陽光等の新エネルギーの利用を抜本的に促進し、エネルギー源の多様化を図ることは緊急の課題となっています。 また、地球温暖化対策の計画的な推進・実行が望まれている中、我が国において排出される温室効果ガスのうち、最近では、エネルギー起源のCO2が約9割を占める状況にある」として、電気事業者に対して一定以上の新エネルギーなどにより得られる電気の利用を義務付ける「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(通称:新エネルギー等電気利用法)」を2002年6月付けで公布し2003年4月1日より施行しました。(一部は2002年12月6日より先行して施行)
また、電気事業者がこの新エネルギー等電気利用法に基づき、毎年その販売電力量に応じた一定割合以上の新エネルギー等から発電される電気を得て義務を履行できるように自ら「新エネルギー等電気」を発電する、もしくは、他から「新エネルギー等電気」を購入する、または、 「新エネルギー等電気相当量(法の規定に従い電気の利用に充てる、もしくは、基準利用量の減少に充てることができる量)」を取得することになる制度、RPS制度(Renewables Portfolio Standard)を定めました。
なお、同法で対象となる新エネルギー等とは(イ) 太陽光、(ロ) 風力、(ハ) 地熱(熱水を著しく減少させないもの)、(ニ) 水力(1000kW以下のものであって、水路式の発電及びダム式の従属発電)、(ホ) バイオマス(廃棄物発電及び燃料電池による発電のうちのバイオマス成分を含む)の5種類を指し、設備認定を受ける必要があります。
以上のように、地球温暖化防止のための温室効果ガスの排出量削減が急がれることや、中東の政治情勢の不安や化石燃料の枯渇懸念などによって、偏ったエネルギー源に依存することなく多様なエネルギーに分散依存することが急務となり、政府としても次世代エネルギーの普及促進のために、補助金制度、税制優遇措置、法規制などによりエネルギー政策の転換を進めてきましたが、東日本大震災による東京電力福島第一発電所の事故により、さらにこの動きを加速させる必要性に迫られることになりました。
そのような中で、2012年7月1日より「電気事業者は新規参入の事業者または個人が発電した再生可能エネルギー発電による電力を固定価格で全量買取ることを義務化する」と言う制度がスタートしましたが、これに対しては賛否両論があり前途多難にも思えますが、この件については本コラムの続報で詳細を述べたいと思います。