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環境関連情報

2011年改正RoHS指令の動向#3

CEマークの貼付義務

情報発信日:2012-08-27

はじめに

2011年7月1日付けのEU官報において改正RoHS指令が公布されました。今回の主な改正点はいくつかありますが、一番大きな改正点の1つは、従来と異なりRoHS指令適合性製品にはCEマークの貼付(CEマーキング)が義務付けられたことであり、その動向が大きな注目を集めています。 図1に示したCEマークは最近、国内でもパソコンなどの家庭用電化製品にも貼付されることが多くなりましたので「ああ、見たことがある」と言う方々も大勢いるかと思いますが、「まだ見たことがない」と言う方はパソコンの充電器などを見て頂ければ多分見つかるかと思います。さて、今回はこのCEマークにどんな意味があるのか解説したいと思います。

CEマークとは

CEマークとは基本的にEU(欧州連合)加盟国地域などで販売される指定商品に対して貼付が義務付けられるマークで、CEマークの貼付された製品は「各種EU(EC)指令」の必須安全要求事項(ESRs:Essential Safety Requirements)に適合していることを示しています。

公式にはCEという単語自体には特に意味もなく何の略語でもないとされていますが、フランス語のCommunauté Européenne(欧州連合の前身である欧州共同体)やConformité Européenneに由来していると言われています。

CEマークの貼付が義務付けられた該当製品の製造業者(または輸入業者)自身または第三者認証機関が所定の適合性評価を行い、適合している場合には製品自体、包装、取扱い説明書などの添付文書にCEマークを貼付することができ、これらCEマークを貼付することによって、EU加盟国内での自由な流通と販売が可能になります。CEマークはEU加盟国以外でもトルコ、スイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインなどでも必要になります。 、

CEマーク貼付の認証について

CEマークは製品によって、第三者認証機関(NB=Notified Body※)の認証を受ける必要がある場合と、自己適合宣言によって貼付が認められる場合の2通りがあります。


※Notified Bodyのメンバーは政府によって指名され、欧州委員会に通知された組織です。Notified Bodyはこのような知識、経験、独立性と適合性評価を行うためのリソースとして指定された要件に基づいてノミネートされます。

Notified Bodyの主な役割は、ニューアプローチ指令(後述)に定められた条件に対する「適合性評価のためにサービスを提供することであるCEマーク」に対する支援を行うことです。これは通常、各指令に記載されている必須の要件を製造者(または輸入業者)自身がその適合性を評価することを意味します。


・第三者認証の場合

第三者認証機関で認証を受ける場合には、第三者認証機関(NB=Notified Body)に製品と技術文書等を提出してEC型式審査を依頼します。

・自己適合宣言の場合

自己適合宣言の場合には、製造者自身が該当規格への適合性の可否判断、技術文書の整備状況などを評価し、自身が「適合宣言書(Declaration of Conformity)」を作成して自己宣言を行います。現状ではCEマーク貼付が必要な製品の約8割程度は自己適合宣言によってCEマークの貼付が可能と言われており、今回の改正RoHS指令においても第三者認証は不要で、自己適合宣言によってCEマークの貼付が行えます。

「適合宣言書(Declaration of Conformity)」は欧州の公用語(いずれか1カ国語以上。通常は英語が用いられますが、例えばフランス向けであればフランス語、ドイツ向けであればドイツ語が好ましいと言われています)で作成することが求められます。しかしEU域外で製造された商品の場合には「EU域外の当該国の製造者自身」が適合宣言を行うことも可能ですが、むしろEU域内の自社現地法人や現地代理人を指定し、現地人が適合宣言を行った方が良さそうです。

なお、CEマーク認証モジュール指令(93/465/EEC)において、各種製品や機能に対するCEマークの認証方法は定型化されています(適合性審査の「モジュール方式」)。また、EC型式審査を行う公認機関が満たすべき条件は、EN45000シリーズによって規定されているそうです。(EN規格はEU共通規格)

ニューアプローチ指令とCEマーク

EUでは、経済市場が統一され、それに伴って、製品規格や安全規格、その他の諸規則の整合性(ハーモナイゼーション)を図るため、欧州閣僚理事会が加盟国間の技術的貿易障害の撤廃を目指すことを目的として1985年に「ニューアプローチ指令」(New Approach Directives)を採択しました。

このニューアプローチ指令は、玩具や医療機器から圧力機器、ボイラー、電気製品などの工業製品分野まで、非常に広い範囲をカバーしており現在22種類の指令が対応しています(表2)。ニューアプローチ指令の主な目的は、製品がユーザーの安全に対して適切に設計されていることを確認することであり、ニューアプローチ指令が施行されているEU加盟国及び欧州自由貿易地域(EFTA)全体で製品を販売しようとする場合、製造者(または輸入業者)は製品にCEマークを貼付する義務があります。

CEマーキングの要件は、各々の指令間で異なりますし、さらに指令内でも異なります。第三者機関による試験では、システム評価および技術ファイルの評価は必須になりますが、多くの場合には製造者の主張が求められているだけです。しかし、CEマークの貼付義務があるにも関わらず適合宣言がない製品を流通させた場合には起訴の対象とされますので注意が必要です。

この制度の導入によってEU加盟国における個々の認可制度は原則廃止され、指令によって権限を与えられた第三者機関(通知機関)の判断が求められる場合もありますが、原則として製造者の自己適合宣言によるCEマーク貼付によりEU全域においての流通が保証されます。

CEマークは、このようにその製品が該当する全ての指令の全ての必須要求に適合していることを示すものとして貼付されます。

(出典1出展2)

上記の指令(現在22種類)には、各々の製品が遵守すべき基本事項(必須要求事項)が規定され、それを具現化するためにEN規格(EU統一規格)が整合規格として定められています。なお整合規格の一覧は、指令ごとにEU官報(Official Journal)で公表されていますので確認が必要です。また製品によっては、複数の指令に該当する場合もあるので注意が必要です。

CEマーク適応対策手続き (以下JETROの資料他より引用

CEマーク適合対策の手続きは、おおむね以下の作業に大別されます。

(1)当該製品に適用される指令の確認
(2)適合性評価基準の選択
(3)適用規格や技術文書の作成
(4)製品製造あるいは技術ファイルの作成
(5)適合性評価(必要であればNB ( Notified Body) による検査) 適合性評価は、検査、品質保証、型式検定または意匠審査、またはこれらの組み合わせにすることができます。
(6)適合宣言書作成
(7)CEマークの貼付

市場監査と罰則 (以下JETROの資料より引用)

EU加盟各国では管轄当局が市場監査を実施しており、罰則規定もあります。監査内容は以下の通り。

(1)製品に正しいCEマークが貼付されているか、
(2)適合宣言書に関係情報がすべて含まれているか、
(3)製品に関して誤解を招く情報がないか、
(4)製品が本当に関係技術基準に適合しているか、 などです。

欧州では環境規制の一環として、製品設計時における環境負荷低減のための環境配慮設計に関する規制を検討していますが、従来のEuP指令(エネルギー消費型製品の環境配慮型設計に関する枠組み指令)が2009年11月に廃止され、ErP指令(Energy-related Products、エネルギー関連製品)に移行しましたが、同指令の対象製品にもCEマークの貼付が義務付けられています。

そして、2011年7月1日に、本コラムのテーマである改正RoHS指令(電子・電気機器における特定有害物質の使用制限に関するEU指令;2011/65/EU)がEU官報に公示され、製造者(または輸入者)の義務として、2013年1月以降に上市(placing-on-the-market)される該当機器へのCEマークの貼付が段階的に導入されることになりました。

なお、製品が設計上の欠陥によって、人体への障害や物損等が生じた場合には、その製品にCEマークが貼付されているか否かに関わらず、製造物責任法(PL法)の問題が発生する可能性はありますので「CEマークを貼付しているから安心」と言うことではありませんので注意が必要です。

JETOROよりCEマークの詳細についての相談には、下記の専門機関が紹介されていますので、参考までに記載します。

<関係機関>

その他

CEマーク表示製品は、場合によって「一般製品安全指令(GPSD:General Product Safety Directive)」の適用を受けることもあります。この指令は「製品が市場流通において危険な事態を発生させた場合に販売業者に対して情報の提供と危険防止措置を行う義務」を定めたもので、2001年に法改正されEU委員会による「危険な消費者製品に対するEU緊急警告システム」が定められています。

また、この指令は医薬品及び食品以外の消費者向け製品に対するシステムで、消費者の安全や健康を脅かす危険性がある場合には該当事業者は「販売の中止、市場からの排除、リコール、警告など」の措置を行う義務があり、監視当局はこれをEU委員会に通知します。EU委員会はこれを加盟国に通知し、これに基づき加盟国は自国市場に当該製品が流通していないかを調査し、流通していた場合には適切な措置を行わなければなりません。

まとめ

EUによる加盟国の経済市場が統合されたことによって、従来各国が有していた種々の製品規格や安全規格を統合することにより、加盟国間の技術的貿易障害を撤廃することを目的として1985年にニューアプローチ指令が採択されました。

このニューアプローチ指令は玩具や医療機器を始めとして圧力機器やボイラーなどの工業機器までを幅広く網羅するもので現在22種類の指令が施行されています。

EU及び近隣の国において自社製品を流通させるためには、当該製品がどの指令に適合しているかを判断して(場合によって複数の指令に該当する場合があります)、該当指令の要求事項に適合させることが必要であり、適合した場合にはその証としてCEマークを貼付することが義務付けられます。CEマークを貼付した製品はEU域内及び近隣諸国においてその流通を妨げられる事はありません。逆に、対応指令があるにも関わらずCEマークの貼付を行わずに流通させた場合には起訴対象と成ります。

各指令に適合しているか否か、CEマークの貼付が可能か否かは第三者認証が必要な場合と自己宣言が可能な場合がありますが、どちらを選択するかは各指令に記載されています。現状、8割は自己宣言が可能だと言われています。今回の改正RoHS指令も第三者認証は不要ですが、市場監査が行われCEマークが貼付されているにも関わらず指令に適合していないことが発覚した場合は刑事罰の対象になります。

一方、仮に指令に適合していても実際にユーザーに対する事故が起きた場合はPL法の対象に成りますので、CEマークが貼付は「必要最小限の安全性確認がなされている」と捉える必要があるかと思います。

ニューアプローチ指令によるCEマークの対象となる指令は現在22種類ですが、今回の改正RoHS指令の様に今後も逐次追加されることが予想されますので、EUで自社製品を流通させる場合にはJETROなどを通じて情報を収集することが重要かと思われます。

引用・参照情報

注意

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