ホーム > 環境について > 環境関連情報 > 世界の水危機に対応するために

環境関連情報

世界の水危機に対応するために

第6回世界水フォーラムとWEPA水環境管理アウトルック2012

情報発信日:2012-06-22

はじめに

2012年3月22日付けで環境省は「第6回世界水フォーラムにおける環境省の取組『WEPA水環境管理アウトルック2012』の公表について」と題する報道を行いました。これは2012年3月12日〜17日にかけてフランスのマルセイユで開催された第6回世界水フォーラムにおいて環境省が「水と気候変動適応に関する高級円卓会議」に参加し、(財)地球環境戦略研究機関がサイドイベント「持続可能な未来に向けた水環境パートナーシップ」を開催したこと、及び、同サイドイベントとして「アジア水環境パートナーシップ(WEPA)」参加各国の水環境とその管理に関する最新の基礎情報や、共通する優先課題「生活排水対策」「気候変動と水環境」に関するWEPAでの討議内容、共有された情報をまとめた「WEPA水環境管理アウトルック2012」を発表したことを報じるものです。

日本においては、世界における水危機問題を実感することは難しいかと思いますが「世界の降雨による水資源は60億人分しかない」と言われていますが世界の人口は既に65億人を越えたと推計され、特にアジアにおける人口及びその増加は深刻な水不足と水質汚濁に直面しつつあります。水の用途の70% は農業に利用されますので水不足は食糧不足に直結する問題と言え、例えば中国においては様々な物質により汚染された廃水で農業を行っているとも言われていますし、重金属や有害化学物質を含む水による健康被害が多発していると漏れ伝わってきます。

水不足は、人口の増加による問題に加え、地球温暖化による気候変動がもたらす異常気象によってますます降雨量の偏在化傾向が強まり水不足問題に拍車をかけています。

このような状況において世界の重大な水問題について討議される場として3年に一度「世界水フォーラム」が開催されています。

またこの時期に合わせてアジア水環境パートナーシップ (WEPA: Water Environment Partnership in Asia) が世界水フォーラムから得たデータや知識を基に各国の水環境とその管理に関する最新の基礎情報、優先課題などをまとめ、これを公表しますが、今回は「WEPA水環境管理アウトルック2012」として出版されました。

 

第6回世界水フォーラムの討議概要

開催国であるフランスの在日大使館によると「世界中から140の閣僚級代表団、講演者800人、参加者2万5千人が見込まれ、「第6回世界水フォーラム-解決のとき-」は、すべての人の水や衛生施設へのアクセス、気候変動、食料安全保障など、世界における水をめぐる諸問題の解決に向けた鍵となるステップです。」と報じています。

また、「今回のフォーラムは水の世界的課題に対処するため、12の優先行動課題と数値化が可能な共通目標に応じた3つの成功条件を柱とします。これらの目標およびロードマップは、有望な解決を特定し、共有するための戦略的な行動枠組みとなります。」として、以下を示しています。

プログラムは以下の4つにより構成されています。

1) 12の優先課題と3つの成功条件ごとのテーマプロセス(上記)
2) 4つの地域と2つの大陸横断的地域(地中海、アラブ)からなる地域プロセス
3) 閣僚や国会議員、地方自治体のそれぞれの代表が議論する政治プロセス
4) 草の根・市民参加プロセス

わが国政府としては、2)の閣僚や国会議員、地方自治体のそれぞれの代表が議論する政治プロセスにおける「水と気候変動適応に関する高級円卓会議」に国土交通省や環境省などから出席者を送り、国土交通省の奥田副大臣が「水関連災害」のテーマでは議長を務めたと報じています。

この円卓会議においては各国から以下のような意見が出されたようです。

1) 今後気候変動適応策を主流化させるため、各国関係省庁間や国際、地域レベルにおける水に関するガバナンスの改善が重要。
2) 気候変動に適応するためには水管理の改善が重要であり、民間セクターをそのような取組に参画させるための適切な枠組みを構築する政策が必要。
3) 気候変動が水資源に与える影響は多大かつ多様であり、その影響予測に不確実性を伴わざるを得ないが、それを理由に水関連セクターに関する適応策への投資を怠ってはならない。

 

WEPAアジア水環境管理アウトルック2012(概要版より抜粋して引用)

アジア水環境パートナーシップ (WEPA: Water Environment Partnership in Asia)への参加国は2012年3月現在カンボジア、中国、インドネシア、韓国、ラオス、マレーシア、ミヤンマー、ネパール、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム、日本の13ヶ国です。

WEPAアジア水環境管理アウトルックはWEPAパートナー各国の水環境に関する基礎情報、優先課題に関するWEPAでの討議や知識共有の結果などをまとめた、WEPAの主要な出版物で、原則として3年に1回、世界水フォーラムの時期に合わせて作成・公表されます。

以下、「WEPAアジア水環境管理アウトルック2012」の概要です。

1.アジア地域の水環境は大きな圧力とリスクにさらされている

・過去20年間でアジアは世界の急成長の焦点となり、GDPは120% 増を記録
・世界の総人口の6割を占める
・急激な人口増加、都市化、経済成長、持続可能でない開発の実施
・水量、水質、水系生態系に大きな影響

2.持続可能な発展のためには水環境管理の確実な実施が必要

・ひとたび汚染された水や破壊された生態系は回復に多大な時間と労力が必要
・アジアの多くの国は既に水環境管理の目標設定を行い管理の枠組みを構築しているが、人口密集地域の有機汚濁、湖沼や貯水池・河口域などの閉鎖性水域における富栄養化は現在も深刻な問題
・水環境が悪化している地域の水管理強化、人的活動により水環境への影響の最小限化など地域毎での水環境保全政策を迅速に立案し確実に実施することが必要

3.水環境管理分野の課題とその解決に向けた取り組み

WEPAパートナー国は、水質管理上の目標を達成するために、以下の取り組みを進めていく。

・社会・経済状態や水環境の現状に見合った法規制、基準設定の見直し(例:産業構造や排水の水質に基づく排水基準等)
・水環境管理戦略、流域レベルでのアクションプランの策定を通じた、地域の水環境管理の強化
・政策立案のための科学的根拠の強化・改善 (例:限られた予算内で行なう効果的な水質モニタリング、データ保管体制の改善)
・汚染源管理の強化 (例:適切な生活排水処理の促進や汚染総量規制制度の導入)
・水質管理への汚染者負担原則の導入、市場メカニズムを活用した法令遵守のインセンティブ付与
・水環境管理に従事する国、地域レベルの組織の強化と技術的な能力開発推進
・民間企業、市民、コミュニティの水環境保全に対する意識啓発と参加促進

4.今後の優先課題

(1) 生活排水管理の推進に向けて

アジア地域では、特に都市部における生活排水が未処理または適切に処理されず公共用水域に放流されることにより深刻な水質汚濁が生じている。多くの国や流域ではBOD負荷の大半が生活排水によるものであり、生活排水による水質汚濁の防止が必要。

(2) 気候変動に備える

中長期的に見て気候変動による水環境への影響が懸念されるが、現状では科学的な根拠に不明な点が多いが世界的な異常気象の多発などがあり、以下の点が懸念される。

・水温上昇や流域減少に起因する水質悪化
・洪水時災害時に流出する土砂やの未処理の汚水に起因する汚染リスク及び健康リスク増大
・気温・水温の上昇や降雨量の減少などによる水系生態系への影響
・水の消費量や消費パターンの変化などによる間接的影響

 

まとめ

世界の水に対する問題は、水の絶対量の不足と水質汚濁の二つがあります。特に、アジア地区やアフリカ地区における水不足や水質汚濁はますます深刻度が高まっています。しかし、水は本来一度使って汚濁しても太陽に温められて水蒸気となって空に昇り、雲から雨や雪となって浄化されて再び地上に還元されます。しかし、人口が増え、産業が発達するなどの理由によって自然の水循環だけでは量的にも質的にも追いつけなくなってきていることに加え、地球温暖化の影響による異常気象の頻発により、その降雨量が益々偏在化傾向を強めていることにより、水事情は今後益々悪化の一途をたどることは疑いのない事実です。

このような状況に対応するために、ダムによる貯水、排水の処理・再生、海水の淡水化など様々な施策が練られていますが、国境を越える河川を有する国々では上流国に作られたダムにより下流国が水不足に陥ったり、上流国での汚染が下流国へもたらされたり、などの問題が増加傾向にあり将来は国際紛争に発展することが危惧されます。

日本においては、国際河川を持たないことや、比較的水不足の経験がないため「水問題はあまり関係のないこと」と思われがちですが、実際は食料自給率が40% 代にあるため自国で消費している量と同等程度の水を輸入しているのと同じと計算されていますので、もしも日本が食料を全て自給しようとした場合には明らかな水不足になると計算されます。

今後、世界の水事情が更に悪化すれば外国の農業事情も同時に悪化しますので、他国へ食料を輸出する余裕が無くなることも考えられますので、将来に備える自国の農業を復興する事が重要だと言えます。

 

引用・参照情報

注意

情報一覧へ戻る