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環境関連情報

最新の環境経営手法の国際化の状況

MFCA国際標準化(ISO 14051及びJIS Q 14051)について

情報発信日:2012-05-15

はじめに

近年、多くの大手企業や団体が何らかの環境経営手法を取り入れて活動し、その結果を環境報告書や環境会計報告書として公表していますが、これは「環境負荷低減にまじめに取り組む事(企業)=信頼ができる事(企業)」という図式が一般消費者の間にできあがってきているためです。

一方で、ここにきてこれら環境経営手法を標準化、あるいは国際化して活動結果を共通の物差しで測ろうとする動きが出てきています。その一つに最近日本が主導する形で国際標準化されたISO 14051 (JIS Q 14051)マテリアルフローコスト会計があります。

このように大手の企業や成長企業がライバルに差をつけようと競って環境経営を進めている反面、中小企業の中には「環境活動は大事だけど、そこまで余裕はない」と環境経営を疎かにしている企業もありますが、現在の環境経営とは過去の公害対策のようなネガティブな対応ではなく、環境対応を行うことによって経営にプラスとなるいうポジティブな対応を意味します。そこで今回は、「環境経営手法とは?」「マテリアルフローコスト会計とは?」について述べたいと思います。

 

環境経営とは

日本能率協会コンサルティング(JMAC)のマネジメント用語集によりますと「環境経営とは、企業と社会が持続可能な発展(Sustainable Development)をして行くために、地球環境と調和した企業経営を行うという考え方である」とあり「環境関連規制の対応だけでなく、幅広い環境活動が求められる。それらの活動には、環境マネジメントシステムの導入、事業所内の環境負荷の徹底低減のみならず、提供する製品・サービスのライフサイクル全体、およびサプライチェーン全体の環境負荷低減、環境事業への発展・転換、顧客や市場の環境意識向上の働きかけなどの活動が含まれる」、さらに「これらの活動を具体化していくためには、ISO 14001、環境業績評価、CO2削減技術、MFCA、ゼロエミッション、グリーン調達、ケミカルマネジメントシステム、エコデザイン、LCA、ファクター、エコラベル、エコビジネス探索、環境報告書、環境会計、ステークホルダーダイアログ、など様々な手法の活用が求められる」と記されています。

これを読んで「ISO 14001を取得し、この活動を維持して行くだけでも大変なのに、やっぱり中小企業には無理だ」という経営幹部の方もいるかもしれません。確かに、これら全てを一度に始めようとしたら大手の企業でも難しいかも知れませんので、取組みやすいところから一つずつ取り掛かってはいかがでしょうか? まずは会社の規模や経営状況に応じてISO 14001、エコステージ、エコアクション21などの環境マネジメントシシテムの導入から始めるのが良いかと思いますが、今回は日本が主導して国際標準化を図ったISO 14051(マテリアルフローコスト会計)について説明をして行きたいと思います。

MFCA(マテリアルフローコスト会計)とは

経済産業省から、大企業向けのMFCA導入共同研究モデル事業の委託を受けている(株)日本能率協会コンサルティングによると「マテリアルフローコスト会計(Material Flow Cost Accounting、略してMFCA)は、 製造プロセスにおける資源やエネルギーのロスに着目して、そのロスに投入した材料費、加工費、設備償却費などを“負の製品のコスト”として、総合的にコスト評価を行なう原価計算、分析の手法です。MFCAを使って分析、検討されるコストダウン課題は、省資源や省エネにもつながっていきます」と説明しており、一見「これが環境経営? 何か生産管理か原価低減活動のようだなぁ」と思う方も多いと思われますが、不良品を作ったり、材料を無駄に使う、エネルギーを過剰に使ったり、産業廃棄物を出したり、水や空気を汚したりなど、所謂生産上の無駄な行為はその殆どが環境に対する負荷を増やす行為といえます。

このような状況において、マテリアルフローコスト会(Material Flow Cost Accounting:MFCA)は、生産プロセスにおいて投入される物資の流れに従い、そのプロセスで生じるロスに着目する「環境管理会計」の一つの手法として位置づけられます。ロスや無駄を見える化し、削減・排除することにより投入資源の削減によるコスト低減の効果を生み出すと同時に、省資源、省エネや二酸化炭素排出量の削減などによる環境負荷低減をもたらす、いわば「環境と経済の両立」を追求するためのマネジメントツールと言えます。

図1 MFCAとその効果

図1 MFCAとその効果(出典:Vol.57 No.11 工場管理)

JIS Q 14051(ISO 14051) 環境マネジメント-マテリアルフローコスト会計

-一般的枠組み(概要)

JIS Q 14051は2011 年に第1版として発行されたISO 14051を基に、技術的内容及び構成を変更することなく作成した日本工業規格で2012年に発行されました。

大きな特徴として以下の3つがあげられています。

目次及び概要は以下の通り。

(1) 適用範囲
・MFCAの一般的な枠組みについて規定する。
・MFCAの下で組織内におけるマテリアルフロー及びストックを物量単位(例えば質量、容積)で追跡し定量化し、またマテリアルフローに関連するコストも評価する。MFCAは、組織の製品、サービス、規模、構造、場所、並びに既存のマネジメントシステム及び会計システムにかかわらず、マテリアル及びエネルギーを使用するあらゆる組織に対して適用可能である
(2) 用語および定義
(省略)
(3) MFCAの目的および原則
・MFCAの目的は、次に示す方法によってマテリアル及びエネルギーの使用を改善することを通じて、環境及び財務の両面においてパフォーマンスを強化しようとする組織の努力を喚起支援することである。
- マテリアルフロー及びエネルギーの使用、それらの関連コスト、並びに環境側面に関する透明性の向上。
- プロセス工学、生産計画、品質管理、製品設計、サプライチェーンマネジメントなどにおける組織の意思決定の支援。
- マテリアル及びエネルギーの使用に関する組織内での調整及びコミュニケーションの改善。
(4) MFCAの基本要素
・物量センターという考え方 インプットとアウトプットを物量単位で定量化及び貨幣単位で算定するために選択したプロセスの一部または複数の部分であり、マテリアルフローとエネルギーの使用を定量化。次にマテリアルコスト、エネルギーコスト、シシテムコスト及び廃棄物管理コストを算定する。
・マテリアルバランスという考え方 物量センターに入ったマテリアルやエネルギーが製品となりアウトプットされた場合の差異がロスという考え方で、ロスが全くない場合にはインプットとアウトプットが等しくなるはず。
図2 物量センターにおけるコスト計算例(出典:JIS Q 14051)
(5) MFCAの実施手順
・一般的なPlan-Do-Check-Act(PDCA)サイクルで継続的な活動として行う。
・経営層が参画してタスクフォースのような形で立ち上げる。
(6) 附属書A:MFCAと伝統的原価計算の違い
・MFCAとCCA(伝統的な原価計算)の大きな違いの一つはマテリアルロスのコスト及びプロセスの非効率性の取り扱い方にあります。CCAではロスを含む全てのマテリアルコスト及び加工コストは製品コストとして配分されますが、MFCAではマテリアルロスをコスト対象として扱いマテリアルロスに対するコスト及びマテリアルロスに関連する全ての加工コストを算出します。さらに加工コストはエネルギーコスト、システムコスト及び廃棄物管理コストに分類されます。
(7) 附属書B:MFCAのコスト計算及び配賦
(省略)
(8) 附属書C:MFCAの事例
(省略)

MFCの最大の目的は隠れたロスを「見える化」することにあります。製品のコストには正のコストである「実際に製品に成った材料に要したコスト」と負のコストである「材料ロス、廃棄物などに要したコスト」の二つがありますが、一般に負のコストについては、見えてはいますがあまり正確に原価計算に組み込まれることは稀です。そして、見えている負のコストは「氷山の一角」とも言われ「洗浄剤、接着材、塗料などの補助材料、補助資材などのロス」は殆ど見えていませんし、さらには加工機械のアイドリングや空気を削っている時間など「加工費のロス」は、全く見えないロスと言えます。

MFCAは、原材料のロスを、物量とコストで「見える化」する手法です。従来の歩留まり管理や不良管理では、上述のように一部のロスしか把握できていません。MFCAの考え方を用いることによって、これらの従来は見えなかったロスが「見える化」され、原材料やエネルギーロスの削減、使用量の削減へと繋がることになります。

MFCAを導入することにより、省資源及び省エネなどによって環境負荷低減とコストダウンの両方が同時に達成できる手法として、さらには温室効果ガスの削減など一石三鳥のレバレッジ効果が期待されると言われています。従来は「環境活動と経済活動は合い反する活動」と見られがちでしたが、継続的改善によるコスト低減活動が環境改善に寄与することになり、真の環境経営を行うためのツールとしての可能性を有している事がおわかり頂けるかと思います。

実際の幾つかの場合の計算事例が附属書Cにあるので、参照してみてください。

まとめ

従来、公害対策の延長線に置かれた環境負荷低減活動は利潤を追求する経済活動とは相矛盾すると考えられてきました。しかし、環境経営という考え方は、公害防止という過去における狭義の環境対応とは異なり製品の製造のための原材料調達、設計、生産プロセス、物流、製品性能、廃棄など全ての事業活動を通して環境負荷を低減するという意味を有するようになってきました。即ち、製品を設計する場合に使用材料や部品は少なく、使用時のエネルギーは少なく耐久性は高く、あるいはリサイクルのしやすさを高めたりする環境配慮設計を実施する、生産工程においては材料ロスやエネルギーロスも少なくする改善の実施や廃棄物の低減、効率的な物流システムの構築など一見すると原価低減活動のように見える活動全てが結果的には省エネ、省資源、二酸化炭素排出量削減などの環境負荷低減活動になることをご理解頂けたと思います。

このような状況において、生産プロセスにおけるコストに対する考え方について、従来の伝統的な会計手法や原価計算の手法においては、加工における歩留まり、加工による材料ロス、排水処理、排気処理、廃棄物処理、エネルギーロスなど負のコストに対しては、製品の原価に按分して加算する形式で処理を行ってきましたが、MFCAにおいてはこれらをインプットした材料やエネルギーと製品としてアウトプットされてきた材料やエネルギーを定量的に把握し、生産プロセスにおいてロスした材料やエネルギー及び結果として出てくる産業廃棄物など全てを負のコストとして定量的に把握して行こうと考えます。これらの材料やエネルギーのロスを定量的に把握して継続的に低減活動を行うことは原価低減に繋がり経営的な利潤を生むと同時に省資源、省エネ及び二酸化炭素や汚水の排出量低減にも繋がることになり環境負荷低減活動になることであり、経済産業省も産業技術環境局環境政策課においてMCFAの導入に関しては積極的に企業に働きかけを行っていますし、今年に入って種々団体により各地で説明会が開催されていますので、機会があったら説明会に参加されてはいかがでしょうか。

引用・参照情報

注意

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