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地球温暖化の実際と真の原因とは

環境問題を正しく認識するために

情報発信日:2011-09-22

はじめに

二酸化炭素やメタンなど温室効果ガス放出量の増加が原因とされる地球温暖化問題は地球環境を考えるうえで、最も重要な問題の一つといえます。しかし、最近「二酸化炭素など温室効果ガスが地球温暖化に与える影響は小さく、むしろ太陽の活動の影響によるものが大きい」あるいは「地球は今後、温暖化より、むしろ寒冷化に向かう」などの学説も活発に語られ始め、また東日本大震災による原子力発電所の事故問題から、世界的にも原子力発電所の廃止論議が活発化や火力発電の見直しなどもあり、温室効果ガス排出問題はややトーンダウンした感があります。

このような状況の中で、世界における地球温暖化の実際と真の原因についての議論などについて述べてみます。

 

地球温暖化の実際

<例1>北極海の氷の融解とシロクマの溺死

2011年8月13日(土)の産経新聞に「シロクマ溺死相次ぐ 温暖化→北極の氷解け“漂流”」という記事が掲載されました。

「地球温暖化の影響で夏の時期に北極海の氷が解けたために、シロクマが別の氷に移動する際に長距離の泳ぎを強いられて、子グマたちが途中で相次いで溺れ死んでいることが明らかになった」というもので、地球の気温が上昇して北極の氷が溶けている事実を知ることができます。

<例2>ヨーロッパアルプスの氷河後退

この夏、筆者はスイスのモルテラッチ氷河を訪れる機会に恵まれました。モルテラッチ氷河は、2008年に世界遺産に認定されたレイテッシュ鉄道ベルニナ線のサンモリッツ駅から30分ほどに位置するモルテラッチ駅から徒歩で訪れることができます。ベンニナ線が開通した100年前には氷河の先端は駅の側まで迫っていたそうですが、現在では駅から2kmほど歩いた場所まで後退してしまっています。駅から氷河の先端までの道の途中、約20〜30年おきに氷河がどの辺りまであったかを示す標識があり、計測を始めた1878年から現在までの氷河後退の記録を実際に目にすることができます。

図1 写真は1970年に氷河の先端がここに有った事と1900年からの70年間に
氷河が1,318m後退したことを示す標識。
写真の奥はモルテラッチ氷河の先端(写真は筆者提供)

この標識に大変興味がわいたので、年代を横軸に氷河の後退距離を縦軸にグラフを作ってみました。

図2 スイス モルテラッチ氷河の経年後退距離(筆者作成)

モルテラッチ氷河後退を記録する標識は1970年以降、筆者が見逃したのかそれとも測定されていないのか、2010年の約2,000m後退までの空白区間を点線で示しましたが、計測が始まった1900年から現在までを見ると、地球温暖化が騒がれ始めたここ数十年の間で、氷河の後退が急速に進んでいるという事実は認められませんが、確実に地球の温暖化が進んでいる事実は見てとれるかと思います。また、気象庁による下記「世界の年平均気温偏差」のグラフを見ても、モルテラッチ氷河の後退記録を開始した1900年頃から世界の気温が上昇傾向にあることが見てとれるかと思います。

図3 世界の年平均気温偏差(気象庁HPより)

一方で、C.D. Keelingのグループによるハワイ Mauna Loa における大気中二酸化炭素濃度の連続観測データをグラフとして以下に示します。

図4 △CO2の積分値(CO2濃度)と二次関数による近似曲線(HP『環境問題』を考えるより)

さらに、世界の平均気温偏差年増分と大気中CO2濃度年増分を同じグラフに乗せた下記のデータが「二酸化炭素が地球温暖化の犯人である証拠」として有名なグラフであり、このグラフを巡って種々の議論が交わされています。

図5 大気中CO2濃度年増分/世界平均気温偏差年増分(HP『環境問題』を考えるより)

地球温暖化と温室ガス犯人説

現在、「地球は温暖化に向かって進んでおり、その主犯は二酸化炭素などの温室効果ガスである」とする説は、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が主になって主張するもので、一般的に「定説」として広く受け止められています。IPCCは、1988年に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)が共同で立ち上げた機関で、世界中の科学者から気候変動に関する論文を集め、2500人にのぼる専門家の査読を経て報告書にまとめられました。

その第4次報告書では地球上の種々の現象を例にあげて、
(1) 気候システムの温暖化には疑う余地がない(unequivocal)
(2) 20世紀半ば以降の世界平均気温の上昇は、その大部分が人間活動による温室効果ガスの増加によってもたらせられた可能性が非常に高い(very likely)、と述べ地球温暖化の原因は温室効果ガスである
(3) 世界の平均気温は2100年に1.8〜4.0℃上昇する
と予測しています。

「地球温暖化の真犯人は二酸化炭素にあらず」論から「地球寒冷化」論まで

一方、地球は誕生から今日まで少なくとも4回の大規模な氷河期と、多くの小氷期を経てきており、いちばん古い7億5000万年〜7億年前までのスターティアン氷河期、及び、6億4000万年前までのマリノア氷河期においては、赤道まで氷河に覆われたともいわれています。また4億6000万年〜4億3100万年前までのアンデス-サハラ氷河期と、3億6000万年〜2億6,000万年前までのカルー氷河期においては、生物の大量絶滅が起きたといわれています。氷河期と氷河期の間は間氷期と呼ばれますが、間氷期中においても数100万年単位で比較的温暖な時期と寒冷な時期が交互にやってくるとされています。そして最後の氷河期は約1万年前に終わったとされており、典型的な間氷期が1万年以上続いており、今後は地球が温暖化とは逆に寒冷化に向かう可能性があるという説もあり、この辺から地球寒冷化論が出てきていると思われます。このように地球が氷河期と間氷期を繰り返す原因は前述した大気の組成(二酸化炭素とメタン)の変化、太陽の活動周期、太陽を回る地球の軌道要素(銀河を回る太陽の起動も関与)、大陸の配置など種々の要因が複雑に関与していると考えられています。

図6 過去45万年間の気候変化と氷床量の変化<横軸は単位千年前>(氷河期 ウイキペディアより)

また、米国国防総省が2003年に調査した温暖化の影響による気候変動を想定した安全保障についての報告書では、地球温暖化による海流の変化によって北半球では2010年から気温が下がり始めて2017年には平均気温が7〜8℃も下がり、逆に南半球では急激な気温上昇が起こり、降雨量が激減することによる大規模な干ばつが発生するとしており、米国国防総省の報告だけに大きな話題を呼んでいます。

 

まとめ


(1) 地球は過去数10年〜数100年の単位で見ると、平均気温は上昇しているのは間違いない事実である。
(2) 近年の地球温暖化の原因はIPCCによる調査から「二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスが主因で有る」とする説が定説となっている。
(3) しかし、過去地球は大規模な氷河期を4回、氷河期と氷河期の間の間氷期においても100万年の単位で見ると高温期と寒冷期を繰り返している。
(4) 地球が温暖化と寒冷化を繰り返す原因は人間の活動による二酸化炭素やメタンなど温室効果ガスの排出量の増加だけでは説明しきれない部分もある。
(5) 地球が温暖化するデメリットばかりが語られているが寒冷化するデメリットの方が深刻だと思われる。
(6) 地球が全体的に温暖化しても地域によっては逆に寒冷化する可能性もある。

筆者は最近、「環境問題は多くの要素が絡み合った非常に複雑な問題であり、簡単に答えが出せないことが多く、正しい解決策は今後の歴史のみが知りうるだろう」と思うと同時に、多角的な視野から問題点を眺めることが重要であると感じています。この辺に関しては別の機会に述べたいと思います。

 

引用・参照情報

注意

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