ホーム > 環境について > 環境関連情報 > 急速に進む地球の砂漠化について
情報発信日:2011-08-25
地球の急速な人口の増加と産業の発展に起因する環境問題として、(1)エネルギーや資源の枯渇問題、(2)水や食料の不足問題、(3)温室効果ガスによる気候変動の問題、(4)生物多様性の問題、など多くの重大な環境危機が迫ってきていますが、(5)急速に進む地球の砂漠化問題も、もう一つの「重大な環境問題」といえます。
砂漠化とは、もともとは人間を含めた動物が暮らし、植物が繁茂した豊かな土地が気候の変化などの自然の要因または人為的な要因によって荒廃した土地に変化したもので、砂漠は最初から草木も生えない痩せた土地であったわけではありません。
かつて地球上に最初の文明が起こったとされる世界四大文明の遺跡地域(エジプト文明、メソポタミア文明、インダス文明、黄河文明)は、奇妙にも現在はことごとく砂漠化していますし、世界最大の砂漠であるアフリカのサハラ砂漠も調査の結果、かつては緑が生い茂る豊かな土地であったことがわかっているそうです。
そしていま、世界の砂漠化はかつてないほどの速度で進行しており、その実情と対策などについて述べたいと思います。
人工衛星からの地上の写真を眺めてみると、地球上には至るところに茶色になった砂漠が見てとれます。そして、何と陸地の1/4が何らかの形で砂漠化の影響を受けており、その面積は実に日本の約100倍弱に達し、また世界の人口の1/6が砂漠・砂漠化によって何らか影響を受けているといわれています。
さらに、毎年60,000km2(東京ドームの128万個分=四国と九州を合せた面積)が新規に砂漠化し、特にアフリカにおける砂漠化面積は15,000km2 /年と全体の1/4を占めており、このまま放置すればアフリカどころか地球全体が砂漠化してしまう恐れがあるといっても過言ではありません。
太古の昔より、人間は永くに渡り木を切って、それを燃料にしたり住居の材料にしたりして生活上の便利な再生可能材料として使ってきました。また、牧草を育て家畜を飼って食料にしてきましたし、木を切った跡地は農耕地として利用してきました。今でも、化石燃料に変わる再生可能エネルギーとして草木や農作物などの植物を利用しようという試みがなされています。
しかし、水資源のコラムでも述べましたが、人口が増え、産業が発達することによって自然の再生力を越えての利用を行えば、そのバランスは極端に崩れてしまい、もはや再生不可能なものとなってしまう危険性が生じてしまいます。
砂漠化の原因は、気候の変動など自然の影響によるものもあり、人間の営みによる、植物の減少だけが必ずしも要因ではありませんが、世界四大文明の遺跡がことごとく砂漠化している現実をみても、文明の発達や人口の増加が砂漠化に大きな影響を与えていることは間違いないといえます。
以下に、砂漠化の要因を整理してみます。
表1 砂漠化の原因
20世紀後半から顕著になってきた人口の急激な増加によって種々の環境問題が発生していますが、人口の増加を抑制することは極めて困難といえます。この人口の増加により農耕地拡大や工場・住宅建設のため、さらには途上国における燃料調達を目的とした森林伐採はさらに加速しており、降雨量を増やすことは不可能ですので、ある意味では温暖化より深刻な問題ともいえます。
日本は国土の多くが山地であるためか、国土の67%が森林であり、世界の砂漠化に対して実感がわきませんが、中国における森林面積は国土のわずか13%ほどしかなく、砂漠が首都の北京近郊まで迫ってきている状況にあります。
前述したように人間は太古の時代から木を切って生活してきました。しかし、「切った分だけ植えて育てる」ということをしないかぎり、貯金を取り崩していくのと同じで自然の恵みが供給に追いつかなくなるのは明白であり、再生可能なバイオマスとはいえません。
地球の森林は、今のスピードだと、今後100年間でなくなってしまうという予測があります。
木材の需要があるにも関わらず、供給が追いついていない。そのために森林が減って行き、 結果「森林破壊」という状況になっていくのです。
2000年から2004年の5年間において、年間3000km2の森林が消えているとの調査報告があります。
森林の消失が即砂漠化とはなりませんが、年間で東京都の面積の30倍強に相当する計算になります。 伐採した木材の用途にはいくつかの用途がありますが、日本では建築関係が約40%、紙が40%で、80%を占めるそうで、住居、家具、紙など我々にとっても木は必需品であり、なくてはならない存在といえます。
人為的な要因による砂漠化を防止する対策としては、基本的に無計画な森林破壊と過耕作や過放牧を抑制して灌漑と植林を推進することにありますが、途上国における燃料として伐採する木材など人間の基本的な営みを阻害する場合もあり、難しい問題も含んでいます。
このような状況において1996年12月に「砂漠化対処条約」が発効し、現在世界179カ国が参加しています。
この条約は、砂漠化が深刻なアフリカなどの地域について、干ばつや砂漠化に対処するために設けられた条約で、日本も1998年にこの条約に加盟しました。この条約は、砂漠化に直面する主に資金面の乏しいアフリカを中心とした国々が具体的な対策案を参加国に提案し、それにかかる資金を援助するという内容になっています。
余談になりますが、サハラ砂漠が存在するためにシロッコ風とよばれる暖かい風が地中海を渡り、高緯度にあるヨーロッパを温暖な気候にしているとされており、多分実現はしないでしょうが、サハラ砂漠を緑化することはヨーロッパの気候を変動させてしまう可能性があると考えられ、砂漠の存在が必ずしも全て「悪」ではないことも付け加えておきたいと思います。
20世紀末から21世紀にかけての地球人口の急激な増加である「人口爆発」は、水や食料の不足に始まり、エネルギーや資源の枯渇、生態系の破壊などあらゆる面で地球環境に対して深刻な危機を作り出していると思われます。
人間は太古の昔より、川や井戸の水を使い、木を切って使い自然の恵みを享受してきました。水はどんなに使って汚しても、木はいくら切っても使っても、自然のもつ再生能力によって補われてきました。しかし、人口の急激な増加によってそのバランスが今、崩れ始めています。
化石燃料のように一度使ってしまえばなくなってしまう資源と、水や植物など計画的に大切に使えば再生する資源とでは根本的な違いがあります。
国連によると現在の地球の人口は約67億人と推定されています。単純にこのままの勢いで人口が増加すると、2050年には90億人と現在の約1.5倍になると計算されますが、「水も食料も70億人分しかない」といわれており、砂漠化などが進めば、さらに状況は悪化することになりますが、「大都会で便利な生活を送っている人々」が「アマゾン川流域の大森林で暮らしている人々」に対して「森林を守れ」という権利がはたしてあるのかどうかが、この問題の深刻さを物語っているのではないかと思います。