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情報発信日:2010-01-22
環境報告書とは企業や地方自治体などの事業体が、環境に配慮して行った活動内容を環境業績としてまとめ公表する報告書のこと。主にISO14000などの環境マネジメントシステムを用いて行った環境経営の成果を外部に公表するもので、最近は第三者評価を受けて信頼性を高めているものも多く見受けられるようになっています。
話はいきなり横道に逸れますが、2009年12月7日から18日までデンマークの首都コペンハーゲンにおいて、国連気候変動枠組み条約第15回締結国会議(COP15)が開催され、会期中は、2013年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組み(ポスト京都議定書)についての話し合いが行われましたが、温室効果ガス削減目標値を巡って、先進諸国と途上国の利害が激しくぶつかり、妥協点が見つからない状況で尻切れトンボの様な結果に終わったのは大変に残念でした。
京都議定書により温室効果ガス排出量削減に責任を持つ先進諸国の排出量は、世界全体の30%弱といわれていますので、温室効果ガス排出大国である米国、中国及びインドなどが条約に加わらないと、意義が薄くなると思われますが、米国や中国が温室効果ガス排出削減に反対し消極的な姿勢を示しているかというと、種々の情報から、「責任を持たされる枠組みには反対」の姿勢を示してはいますが、自主的な取り組みとしては「かなり真剣に環境改善や温室効果ガス削減」に取り組んでいる様子が伺えます。
話しを戻しますが、企業や事業者においても最近は温室効果ガス、産業廃棄物、排水、化学物質などといった環境負荷物質の排出量低減に定量的な目標を定めて積極的に取り組み、その成果を環境報告書にまとめて公表する例が増えてきています。「環境問題は取り組みたいけれど、こんな経済不況の中で金銭的にも人的にも余裕が無い」と考えている経営幹部の方々も多いかと思います。
では、なぜ米国や中国が国際条約の締結には反対をしているにも関わらず自主目標を定め積極的に環境問題に取り組んでいるのでしょうか。また、なぜ多くの企業や事業体が環境に配慮した経営に、熱心に取り組むようになってきたのでしょうか。
環境配慮促進法は正式には「環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律」と呼ばれ、2004年6月に制定された法律で、事業活動を行う場合は、環境保全に関して適切に配慮を行い、その結果を環境報告書として公表することを求めるものです。特に独立行政法人と国立大学には、環境報告書の作成と自己評価に加え第三者の評価を受けることを義務付け、地方公共団体や民間企業などには、環境報告書作成と公表を努力目標としています。
個別企業の場合でも、国の場合の取組みで有っても規模に違いは有りますが、環境に配慮した事業活動は一見経済的な負担が大きく、不利益をもたらすようにも思えます。しかし、米国や中国が国際的な気候変動枠組み条約には反対の態度を示しながらも、自主目標を定めて懸命に環境負荷低減に取り組んでいるのには訳が有るからです。化石燃料は有限であり、長い目で見れば枯渇による価格高騰は明らかであり、エネルギー効率を無視し二酸化炭素を大量に排出してモノを製造していたのでは、近い将来に国際的な価格競争に勝てなくなるからです。今後はエネルギー消費の結果物である二酸化炭素の排出量を早急に削減し、エネルギー効率を高める必要に迫られているからに他なりません。
また産業廃棄物も排水も「捨てるためのコスト」が掛かります。環境負荷低減活動である、二酸化炭素、排水、産業廃棄物などの排出量削減や製品の部品点数削減、重量低減など、いずれも実はコストダウン活動そのものなのです。有害化学物質の使用削減・管理問題は企業のブランド力の向上、社会的・法的リスクの低減などによる、競争力強化に繋がります。
確かに、環境負荷物質の排出量削減や製品の改良などには、場合によっては大きな投資が伴うことも有りますので、短期的な視野で見ると「コストアップ要因」に見えるかも知れませんが、長期を見据えた経営幹部の決断が必要になるのだと思います。欧州の統合的な化学物質規制である「REACH規則」には「No data, No market」と書いてあります。自社製品に含有するカドミウム量を知らずに輸出を行おうとして相手国から「自国の法律に違反する」と言われて大損害を被った大手企業の例は有名ですが、極めて近い将来において自社製品に含有する化学物質の把握・管理を行わずに製品を出荷することは、品質管理を行わずに製品を出荷するのに等しい、恐ろしい行為になることも理解するべきだと思います。
環境経営システムには、ISO14000だけでなく、2009年11月にも発信しましたが環境省が推進しているエコアクション21などのように、年間10万円程度の費用で運用できる、簡易的な環境経営システムもあります。但し、環境経営システムは認証を取得するだけでなく、継続的に運用をして前述の利益に結びつけていかないと意味が無いことを付け加えておきます。