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情報発信日:2010-01-22
EUにおける環境配慮設計は、従来の「エネルギー使用製品に対する環境配慮設計指令(EuP
従来のEuP指令では「使用することによって直接エネルギーを消費する製品」、具体的には洗濯機、冷蔵庫、ヘアドライヤーなどが対象となっていましたが、ErP指令ではその序文に「建築に使用される窓ガラス、断熱材、シャワーヘッドや水栓(tap)など水を利用する製品のように直接エネルギーを使用しない製品も対象とする」旨の記載があり、一般住宅設備機器の大半がErP指令の対象となるものと思われます。しかし、ErP指令はEuP指令を置き換えるものでは無く、適用範囲を拡大するための追加指令的な意味合いが強いものと思われます。但し、人または物品の輸送手段として使用される自動車や航空機、船舶等の製品については適用が除外されます。
ErP指令もEuP指令同様に枠組み指令ですので、この指令が発効しても対象製品毎に規制内容を制定する「実施対策令」や実施対策例に対応した機器毎の「整合規格」が出来ない限りにおいて、規制は実施されませんが、実施対策令や整合規格の整備状況を継続して調査・分析して事前に対応する必要があると思われます。
「欧州委員会は域内におけるエネルギー消費量の大幅な削減を狙っており、当初はエネルギーを消費する機器の効率向上のみを考えていたようですが、例えば住宅用の暖房機器の効率だけを高めても建物の断熱が不十分で有る等、機器の利用者の知識や使用方法が適切でないと、省エネ効果が十分に発揮出来ないということから、エネルギー消費に関連する全ての製品を対象にしたというのが実情のようです。ErP指令には前述のように例えばシャワーヘッドや水栓なども含まれますが、「エネルギー損失を低減し、エネルギー効率が改善された」とするための、評価項目、評価方法、判定基準をどのように決めるのか今後注視する必要があります。
ErP指令の目的はEuP指令同様に設計段階において、対象とする製品の原料調達から使用済みまでのライフサイクルを通したエネルギー効率の向上に配慮することを求めています。
具体的に、個々の製品に対してその製品のライフサイクルを通して、エネルギー効率の高い製品とするための環境配慮設計を行うためには、以下のパラメータを考慮した「実施対策令」が必要で、下記の製品ライフサイクルの各段階で環境への影響を判定する必要があるといわれています。
1. 製品ライフサイクルの各段階
(1) 原料の選定・調達段階
(2) 製造段階
(3) 梱包、輸送、流通段階
(4) 設置・保守段階
(5) 使用段階
(6) 使用済み段階(製品が耐用年数に達し、廃棄前の段階)
2. 製品ライフサイクル各段階での環境負荷評価
(1) 資源(材料、エネルギー、水など)の消費量予想
(2) 大気、水、土壌への排出量予想
(3) 物理的影響(騒音、振動、悪臭、放射、電磁場など)による汚染予測
(4) 廃棄物の発生予測
(5) 材料・エネルギーの再利用・リサイクル・回収の可能性(EU指令 2002/96/EC)
3. 環境への負荷低減の可能性を検討する場合には、以下のパラメータを使用
(下記以外のパラメータが必要になった場合は逐次追加)
(1) 製品の重量・容積
(2) リサイクルで再生した原料の再使用
(3) 製品のライフサイクルを通したエネルギー、水、その他資源の消費量
(4) 健康と環境に有害と分類された物質の使用量
(5) 適切な使用とメンテナンスに必要な消耗品の数量と内容
(6) 再使用、リサイクルの容易性(材料、部品の使用数量、標準部品の使用、解体の所要時間、解体に必要な
工具類の複雑性)
(7) 中古部品の組込
(8) 部品または製品全体の再使用、リサイクルを妨げる技術の回避
(9) 製品寿命の延長(最低保障寿命、予備品の最長在庫期間、モジュール方式の使用、アップグレード性、
修理の可能性)
(10) 廃棄物、有害廃棄物の発生量
(11) 大気への排出量
(12) 水への排出量(重金属、酸素バランスの悪影響を及ぼす物質、残留性有機汚染物質)
(13) 土壌への排出量(特に、製品の使用段階における有害物質の漏洩、流出、廃棄物として処理される際の
浸出の可能性)
EuP指令に基づいて発行された既存の規則(実施対策令)については、今回の改正による変更はありませんし、現行の規則は引き続き有効ですが、これらの規則に対する枠組み指令となるのは、新指令であるErP指令2009/125/ECです。
新規に対象となった製品の枠組み指令はErP指令であり、これに基づき「実施対策令」や「整合規格」が策定されていくことになります。
今回のErP指令の発効では自動車や航空機、船舶などの輸送用機器は対象外で、住宅設備機器の多くが対象となるものと予想されますので、今後は住宅設備機器関係の規制が強化されそうです。引き続き、「実施対策令」や「整合規格」の策定動向に注視していきたいと思います。