第三次環境基本計画
平成18年4月7日に閣議決定
情報発信日:2006-07-05
環境基本計画とは
環境省は平成18年4月7日、第三次環境基本計画が閣議決定されたと発表しました。計画の進捗状況については、今後、中央環境審議会総合政策部会等において、点検を行っていくことになります。
さて、「環境基本計画」とは何でしょうか? 環境省によると「環境基本法第15条に基づき、政府全体の環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱を定めるもの」と定義しています。
【参考】環境基本法(平成五年十一月十九日法律第九十一号)
第15条 政府は、環境の保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全に関する基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。
2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱
(2) 前号に掲げるもののほか、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 環境大臣は、中央環境審議会の意見を聴いて、環境基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 環境大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、環境基本計画を公表しなければならない。
5 前二項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。
環境基本計画の歴史
- 環境基本法
環境基本法は、平成4年6月にブラジルで開催された地球サミットの成果を踏まえ、環境政策の枠組を再構築することに向け平成5年に制定されました。
- 第一次環境基本計画(平成6年12月16日閣議決定)
- 環境政策の理念【循環】【共生】【参加】【国際的取組】
- 環境政策のリストアップと体系化
- 第二次環境基本計画(平成12年12月22日閣議決定)
- 11項目の戦略プログラムの設定による、重点課題の明確化と実行性の確保
- 環境政策の指針【汚染者負担の原則】【環境効率性】【予防的な方策】【環境リスク】
- あらゆる場面への環境配慮への織り込み
- 第三次環境基本計画(平成18年4月7日閣議決定)
- テーマは「環境・経済・社会の統合的向上」
- 2050年を見据えた超長期ビジョンの策定を提示
- 可能なかぎり定量的な目標・指標による進行管理
- 市民、企業など各主体へのメッセージの明確
第三次環境基本計画の目指す社会
- 健全で恵み豊かな環境が保全されるとともに、それらを通じて国民一人一人が幸せを実感できる生活を享受でき、将来世代へも継承できる社会を目指す。そのため、環境に加え、経済的側面、社会的側面も統合的に向上することが求められる。
- 物質面に加え、心の面でも、安心、豊かさ、健やかで快適なくらし、歴史と誇りある文化、地域社会の絆といったものを、わが国において将来世代にわたって約束するとともに、それを世界全体に波及させていくような社会を目指す。
※このように物質面だけでなく「こころ」の豊かさ、健やかさなどを強調しています。
重点施策
- 地球温暖化問題に対する取組み
- 京都議定書の6%削減約束の確実な達成
- さらなる長期的、継続的な排出削減等(中長期目標の策定作業開始)
- 避けられない地球温暖化による影響への適応策
- 物質循環の確保と循環型社会の構築のための取組み
- 資源消費が少ない、エネルギー効率の高い社会経済システムづくり
- 「もったいない」の精神も活かした循環の取組の促進とパートナーシップ
- ものづくりの段階での3Rの内部化
- 廃棄物等の適正な循環的利用と処分のためのシステムの高度化
- 都市における良好な大気環境の確保に関する取組み
- 健康で快適な都市の生活環境を確保するため、良好な大気環境を確保するための取組を推進
- 大気汚染、ヒートアイランド現象対策として、環境負荷の小さい事業活動・生活様式の変革、環境的に持続可能な都市・交通システムの構築等に向けた取組を推進
- 環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組み
- 流域の特性に応じ、水質、水量、水生生物、水辺地を含む水環境等を保全しつつその持続可能な利用を図り、人と身近な水とのふれあいを通じた豊かな地域づくり
- 利水・治水との整合を図りつつ、流域ごとの計画策定を促進。支援流域全体を総合的にとらえ、山間部、農村・都市郊外部、都市部それぞれにおいて、貯留浸透・涵養能力の保全・向上等を推進
- わが国の取組を国際的に発信し、世界の水問題解決に貢献
- 化学物質の環境リスクの低減に向けた取組み
- 化学物質の有害性・曝露に関する情報を収集し、科学的なリスク評価を推進
- 化学物質のライフサイクルにわたる環境リスクの低減や、予防的な取組方法の観点に立った効果的、効率的なリスク管理
- リスクコミュニケーション推進による、環境リスクに関する情報への国民の理解と信頼の向上
- 国際的な協調のもとでの国際的責務の履行と、わが国の経験をいかした積極的な国際貢献
- 生物多様性の保全のための取組み
- 各種の保護地域を中核とした国土レベル・地域レベルでの生態系ネットワークの形成野生動植物の保護管理・外来生物対策の充実
- 自然資源の持続可能な利用のための適切な農林漁業活動、里地里山の保全への取組み
- 市場において環境の価値が積極的に評価される仕組みづくり
- CSR報告書等、商品・サービスの環境に関する情報の提供、企業の環境への取組についての情報開示の促進
- 環境の視点からの経済的インセンティブの付与のための経済的手法の検討
- 環境マネジメントシステム等、企業、消費者など経済主体の環境に取り組む能力の向上
- 環境の視点からのイノベーションのためのSRI等環境投資・政府調達の活用
- 国際市場を視野に入れた取組み
- 環境保全の人づくり・地域づくりの推進
- 環境教育・学習等を通じた環境保全のために行動する人づくり
- 地域コミュニティの活動と一体となった環境教育・学習
- 環境保全の組織、ネットワークづくり
- 地域再生・特区制度の活用によるコミュニティ・ビジネス等の支援
- それぞれのもつ資源や特長を活かした地域づくり
- エコツーリズムの普及、地域の活性化と一体となった活動の支援
- 長期的な視野を持った科学技術、環境情報、政策手法等の基盤の整備
- 第三期科学技術基本計画に基づき、環境分野の研究・開発を重点的に推進
- 環境への取組みに必要な情報が誰でも容易に入手できる基盤の整備
- 戦略的環境アセスメント等行政施策における環境配慮のための手法の確立・推進
- 2050年を展望した超長期ビジョンの提示
- 国際的枠組みやルールの形成等の国際的取組の推進
- 地球環境の保全と持続可能な開発を考えた環境管理の有効な仕組みを東アジア地域を中心に普及
筆者所感
今回の第三次環境基本計画では重点施策のトップに「地球温暖化問題に対する取組み」をあげています。次いで「物質循環の確保と循環型社会の構築のための取組み」として、「ものづくりの段階での3Rの内部化」と「廃棄物等の適正な循環的利用と処分のためのシステムの高度化」があげられていますが、3R、とくにリサイクルの概念が拡大解釈されてゆくと、「リサイクルすること」が目的になってしまい、結果として過大なエネルギーが消費されることになりかねないので、リサイクルは物質循環のより上流の工程で適正になるべきだと思われます。また四番目の項目にあげられている「環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組み」では、近い将来において世界的な規模での水不足が明確な課題になっています。わが国は水資源の豊かな国と思われがちですが、実際には多大な食料を輸入に頼っているため、穀物や果実、食肉など形を変えての水輸入大国であることを自覚し、世界を対象として水の健全な循環に対する技術貢献を行うべきだと考えられます。
引用・出典
注意
- 無断で本情報を二次使用すること及び転載することを禁じます。
- 本情報は環境省ウェブサイトから収集した情報を抜粋したものです。その内容に疑義を感じた場合、本情報の利用者は引用・出典リンク先の情報を調査のうえ、自己判断に基づき、解釈をお願いします。なお、リンク切れの場合はご容赦願います。
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