ホーム > 環境について > 環境関連情報 > REACH規則における高懸念物質(SVHC) #12
情報発信日:2017-2-27
ECHA(欧州化学品庁)は2017年1月12日付けで、Webサイトにおいて「REACH規則における高懸念物質(VHC)が収載されている附属書XIV収載物Candidate List of Substances of Very High Concern for Authorisation (高懸念物質の認可対象候補物質リスト)」を更新しました。
今回、6物質が事前に候補物質として提示されていましたが、4物質がSVHC物質として附属書XIVに追加収載され、これによりSVHC物質は173物質になりました。
表1 今回附属書XIVに収載された物質
物質名 | CAS番号 | 収載理由 | 主な用途 | |
英名 | 和名 | |||
4,4'-isopropylidenediphenol | 4,4’-イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA) | 80-05-7 | 生殖毒性(第57条c) | ポリカーボネートを製造する際のモノマーや、エポキシ樹脂の原料。抗酸化剤、あるいは重合禁止剤としてポリ塩化ビニルの可塑剤に添加。 |
4-Heptylphenol, branched and linear [substances with a linear and/or branched alkyl chain with a carbon number of 7 covalently bound predominantly in position 4 to phenol, covering also UVCB- and well-defined substances which include any of the individual isomers or a combination thereof] |
4-ヘプチルフェノール、分岐および直鎖 [フェノールの4の位置で炭素数が7の直鎖および/または分岐したアルキル鎖が共有結合している物質、各々の異性体やその組合せのいずれかを含むUVCB物質、およびwell-defined物質(組成等が分かっている物質)を含む] |
なし ※注1) |
環境に重大な影響を及ぼすと懸念されると同等のレベル(第57条f) | 潤滑油の添加剤 |
Nonadecafluorodecanoic acid (PFDA) and its sodium and ammonium salts |
ノナデカフルオロデカン酸(PFDA)及び以下のアンモニウム塩とナトリウム塩 | 335-76-2 | 生殖毒性(第57条c)、PBT(第57条d) ※注2) | 可塑剤、潤滑剤、界面活性剤、湿潤剤、防腐剤 |
Ammonium nonadecafluorodecanoate | ノナデカフルオロデカン酸アンモニウム | 3108-42-7 | ||
Decanoic acid, nonadecafluoro-, sodium salt |
ノナデカフルオロデカン酸ナトリウム | 3830-45-3 | ||
p-(1,1-dimethylpropyl) phenol |
p-(1,1-ジメチルプロピル)フェノール、4-tert-アミルフェノール、4-tert-ペンチルフェノールなど | 80-46-6 | 環境に重大な影響を及ぼすと懸念されると同等のレベル(第57条f) | 衛生材料、農薬、化学物質合成中間体 |
注1) 「4-ヘプチルフェノール、分岐および直鎖」は、定義された複数の化合物を指すため、一義的にCAS番号が決められませんので、要注意です。
注2) PBT (第57条d)=難分解性で高蓄積性および毒性を有する物質
表2 今回収載が見送られた物質
物質名 | CAS番号 | 主な用途 | |
英名 | 和名 | ||
4-tert-butylphenol | 4-tert-ブチルフェノール | 98-54-4 | 接着剤、印刷インクやワニスに用いられる油溶性フェノール樹脂の原料、ポリカーボネート樹脂の分子量調節剤、各種合成樹脂の改質剤、香料や界面活性剤の原料 |
Benzene-1,2,4-tricarboxylic acid 1,2-anhydride (trimellitic anhydride) |
1,2,4-ベンゼントリカルボン酸1,2-無水物(トリメリット酸無水物)、無水トリメリット酸 | 552-30-7 | 可塑剤、ワニス、塗料、トナーバインダー |
上記2物資については、1部の国の反対があり、全会一致とならず収載が見送られました。
(1) ECHA(欧州化学品庁)は2017年1月12日付けで、Webサイトにおいて「REACH規則における高懸念物質(SVHC)が収載されている附属書XIV収載物Candidate List of Substances of Very High Concern for Authorisation (高懸念物質の認可対象候補物質リスト)」を更新し、従来169物質だったSVHCに4物質を新規に追加しました。これによりSVHC物質は173物質となりました。
(2) 2016年9月時点でSVHC候補として提示されていた6物質中、2物質は収載が見送られました。
(3) 今回新たに収載された4,4’-イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)は、同時に2016年12月12日付けEU官報(2016/2235)において、66番目の制限物質として附属書XⅦに収載され、「2020年1月3日以降、0.02重量%以上の濃度で当該物質を含む感熱紙の上市を禁止する」としました。
(4) 今回新規に収載された4,4’-イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)は広く使用されており、その他の規制情報を以下に示します(情報元はChemical Safety PRO)。
・ビスフェノールA(BPA)は、ポリカーボネートプラスチックやエポキシ樹脂の製造に広く使用されている化学物質です。BPAは現在、EU CLP Regulation(EC)No 1272/2008(CLP規則)の下でも、生殖毒性カテゴリー1Bに分類されており、乳幼児のための多くの消費者製品で禁止されています。
・部品や成形品に0.1%(w/w)以上の濃度でBPAが含まれている場合は、REACHの下で次の義務を果たす必要があります。SVHCに関する情報伝達の義務 - REACH第33条、ECHA-REACH第7条(2)への部品や成形品におけるSVHCの通知。
・BPAを含む哺乳瓶は2011年6月1日から欧州で禁止されています。米国では2012年および2013年にFDAが食品添加物規制を修正し、哺乳瓶、シッピーカップ、乳児用調合用包装材などへの使用を禁止しています。
・現在、BPAベースの食品接触材料は、フランスを除くヨーロッパでのすべての用途に使用されています。フランスは2015年1月以来、すべての食品接触材料においてBPAの使用に関する全国的な規制を実施しました。
・2016年3月14日、欧州委員会は、世界貿易機関(WTO)に対し、ビスフェノールA(BPA)の特定の移行限度(SML)を0.6mg / kgから0.05mg / kgに引き下げる提案を通知した。加えて、食品接触材料または物品に適用されたワニスまたはコーティングにおいて、同じSMLをBPAに導入することも提案しました。
(5) 今回新たにSVHCとして追加された4-Heptylphenol, branched and linear(4-ヘプチルフェノール、分岐および直鎖)にはCAS番号が付されていませんが、これは示された定義の元に存在する複数の化合物を示すためです。しかし、潤滑油などの添加剤として使用される場合が有る様ですので、注意が必要です。
(6) 次回の更新は2017年6月頃と見込まれます。