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情報発信日:2016-8-25
2016年7月21日に期限を迎えたRoHS指令の附属書III「適用除外用途」の見直しについて、欧州委員会から委託を受けて調査・検討を行ってきたOko-Institute e.V.は、2015年9月末までに結論を出す予定でしたが、これが遅れ2016年2月2日(報告書の日付けは1月21日)にパック7として4種類、次いで残り29種類に関する報告書が2016年6月27日(報告書の日付けは6月7日)にパック9として公表され、今回の適用除外に関する調査はこれで全て終了し、欧州委員会の正式な承認を受けて附属書IIIが改訂される運びとなります。
本コラムでは、今回のRoHS指令附属書III「適用除外用途」の改訂に関する概要及び背景などについて、解説したいと思います。
今回の改訂の特徴は、従来と比較して適用除外用途が製品カテゴリーによって細分化された点にあります。これは、調査段階において、あるカテゴリーでは「代替可能」という意見と、他のカテゴリーで「代替不可能」という意見があり、製品カテゴリーごとに適用除外用途の有効期限が個別に設定されました。
RoHS指令では、「技術的に代替が不可能」とされる使用用途においては、使用禁止物質の含有制限範囲を超えることを許容する「適用除外用途」を定めていますが、この適用除外用途には有効期限があり、都度見直しが行われています。見直された内容はEU官報により告示されますが、改訂された部分のみが公表されますので、常に最新のリストを確認して把握しておく必要があります。
2013年1月3日から運用されている改正RoHS指令(2011/65/EU: RoHS2)においては、適用除外用途のリストは附属書III(カテゴリー1〜11全てのカテゴリー用)と附属書IV(カテゴリー8及び9専用)があります。
RoHS指令における適用除外の見直しについて、旧RoHS指令では4年、改正RoHS指令ではカテゴリー1〜7及び10では最長5年、カテゴリー8と9で最長7年と規定されていました。今回の報告書では、カテゴリー8及び9については同様に最長有効期限が7年ですが、カテゴリー1〜7及び10についての有効期限は最長で5年、最短のものは3年に設定されました。
表1 RoHS指令の附属書Ⅰに規定される対象製品カテゴリー(出典:経済産業省)
カテゴリー (附属書I) |
強制適用開始 (第4条3項) |
RoHS指令の対象外とみなされる、修理・再利用・機能向上のためのスペアパーツ・ケーブル(第4条1項) |
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Cat.1 大型家庭用電気製品 | 2006年7月1日 | 2006/6/30までに上市された機器に使うもの |
Cat.2 小型家庭用電気製品 | ||
Cat.3 IT及び通信機器 | ||
Cat.4 民生用機器 | ||
Cat.5 照明装置 | ||
Cat.6 電気電子工具 | ||
Cat.7 玩具、レジャー.スポーツ用品 | ||
Cat.8 医療機器 体外診断用機器(IVD) |
2014年7月22日 2016年7月22日 |
2014/7/21までに上市された機器に使うもの 2016/7/21までに上市された機器に使うもの |
Cat.9 監視及び制御機器 工業・産業用監視及び制御機器 |
2014年7月22日 2017年7月22日 |
2014/7/21までに上市された機器に使うもの 2017/7/21までに上市された機器に使うもの |
Cat.10 自動販売機 | 2006年7月1日 | 2006/6/30までに上市された機器に使うもの |
Cat.11 上記カテゴリーに入らないその他の電気電子機器 | 2019年7月22日 | 言及なし |
2016年6月27日に公開された適用除外用途は29種類と大量であったため、報告書は3分冊で構成されています。
表2 今回改訂に関する報告書と適用除外用途番号(出典:J-Net21 2016年7月22日)
報告書 | 対象の適用除外用途No. |
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ランプに関する適用除外用途 | 1(a〜e), 1(f), 2(a)(1〜5), 2(b)(3), 2(b)(4), 3(a〜c), 4(a),4(b)(I〜III),4(c)(I〜III), 4(e), 4(f), 18(b) |
はんだおよび電気接点に関する適用除外用途 | 7(a), 7(c)I, 7(c)II, 7(c)IV, 8(b), 15, 24, 32, 34, 37 |
合金及びその他の適用除外用途 | 5(b), 6(a), 6(b), 6(c), 9, 21, 29 |
注) 今回の報告書に含まれる附属書IIIの適用除外用途Noはこちらを参照。
今回の報告書のうち、当工業会に関連のありそうな「6(c)合金及びその他の適用除外」部分について述べます。
表3 銅合金中の鉛に関する適用除外の検討結果(出典:Oko-Institute e.V報告書 2016年6月7日)
適用除外No.と現状の内容 | 今回報告書の勧告内容及び有効期限 | ||
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No. | 現状の内容 | 今回の勧告 | 有効期限 |
6(c) | Copper alloy containing up to 4 % lead by weight (合金元素として鉛を重量比4%まで含む銅合金) | <変更なし> Copper alloy containing up to 4 % lead by weight (合金元素として鉛を重量比4%まで含む銅合金) |
カテゴリー1〜7, 10, 11 2019年7月21日まで |
カテゴリー8,9 2021年7月21日まで |
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但し、カテゴリー8のサブカテゴリーにある体外診断用機器 2023年7月21日まで |
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但し、カテゴリー9のサブカテゴリーにある工業・産業用監視及び制御機器 2024年7月21日まで |
今回、6(c)は、いずれのカテゴリーにおいても、従来通りの内容で適用除外は継続されますが、製品のカテゴリーにより、有効期限が異なって設定されました。
今回、適用除外が継続された背景を見ますと、一部のカテゴリーで鉛フリー銅合金への代替が可能であるとする意見がある一方で、ウオームギヤ、ギヤ、ブッシュ、コンタクトピン、ネジ、スプリングなどにおいて、滑りや強度などの点で代替不可能とする意見が出されました。この結果、全ての用途において代替可能であるとの結論が出されず、今回はそのまま延長されることになりましたが、将来的にはより詳細な用途別の検討が必要であるとの理由から、カテゴリー1〜7, 10, 11では有効期限が最短の3年に設定されたようです。
しかし、報告書において、代替不可能とする利害関係者の間で代替化に向けた計画がないことから、次回の見直し時に利害関係者から代替化に向けた計画や情報に基づく正当な適用除外用途の延長申請理由が提供されない限り、適用除外は廃止するべきであると述べられており、次回の検討時には適用除外用途が延長される可能性は低いと思われ、また適用除外用途が延長される場合でも用途が極めて細分化されて限定されたものになると思われます。
表4 【参考】その他(6(a) 機械加工用の鋼材中および亜鉛メッキ鋼板中に合金成分として含まれる
0.35wt%までの鉛)及び6(b) (アルミニウムに合金成分として含まれる0.4wt%までの鉛) の調査結果
((出典:Oko-Institute e.V報告書 2016年6月7日))
適用除外No.と現状の内容 | 今回報告書の勧告内容及び有効期限 | ||
---|---|---|---|
No. | 現状の内容 | 今回の勧告 | 有効期限 |
6(a) | 機械加工用途の鋼材および亜鉛メッキ鋼中の、合金元素として重量比0.35%まで含まれる鉛 | <変更なし> I) 機械加工用途の鋼材中の合金元素として重量比0.35%まで含まれる鉛 |
カテゴリー1〜7,10 2019年7月21日まで |
<変更> II) ホットディップ溶融亜鉛めっき鋼中に重量比0.2%まで含まれる鉛 |
カテゴリー1〜7、10、11 2021年7月21日まで |
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<変更なし> III) 機械加工用途の鋼材および亜鉛メッキ鋼中の合金元素として重量比0.35%まで含まれる鉛 |
カテゴリー8、9 2021年7月21日まで |
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但し、カテゴリー8のサブカテゴリーにある体外診断用機器 2023年7月21日まで |
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但し、カテゴリー9のサブカテゴリーにある工業・産業用監視及び制御機器 2024年7月21日まで |
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6(b) | アルミニウムに合金元素として重量比0.4%まで含まれる鉛 | <変更なし> I) 切削機械加工を伴わない部品製造で使用するアルミニウムに合金元素として重量比0.4%まで含まれる鉛 |
カテゴリー1〜7、10、11 2019年7月21日まで |
<変更なし> II) 機械加工で使用するアルミニウムに合金元素として重量比0.4%まで含まれる鉛 |
カテゴリー1〜11 2021年7月21日まで |
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<変更なし> III) アルミニウムに合金元素として重量比0.4%まで含まれる鉛 |
カテゴリー8、9 2021年7月21日まで |
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但し、カテゴリー8のサブカテゴリーにある体外診断用機器 2023年7月21日まで |
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但し、カテゴリー9のサブカテゴリーにある工業・産業用監視及び制御機器 2024年7月21日まで |
適用除外No.6(c)同様の鉛関係の6(a)及び6(b)でも概ね適用除外が継続されましたが、用途が細分化された上、適用除外の有効期限も細かく設定されました。特に、意図した含有と意図しない含有については明確にすべきとの意見が具申されています。
(1)2016年7月21日に期限を迎えるRoHS指令の附属書III「適用除外用途」の見直しについて欧州委員会より委託を受けて調査を行い2015年9月末までに結論を出す予定でしたがこれが遅れ、第一次4種類について2016年2月2日に、第二次29種類について、期限目前の2016年6月27日に報告書が公表されました。これによって、今回の調査は全て終了し、今後、この報告書の勧告を受けて欧州委員会が改正案を作成し、附属書III改訂手続きに進むことになります。正式に決定された場合にはEU官報にて公表されます。
(2)今回の改訂の特徴は、従来と比較して適用除外用途が製品カテゴリーによって、細分化された点にあります。これは、調査段階において、あるカテゴリーでは「代替可能」という意見と、他のカテゴリーで「代替不可能」という意見があり、製品カテゴリーごとに適用除外用途の有効期限が個別に設定されました。
(3)当工業会にとって、重要だと思われる適用除外用途「銅合金中の鉛含有量は4%」は従来通り据え置かれましたが、カテゴリー1〜7及び10、11の有効期限は2019年7月21日までの3年間と最短である一方、カテゴリー9のサブカテゴリーにある工業・産業用監視及び制御機器は2024年7月21日までの最長8年間と大きな違いが示されました。
(4)今回、銅合金中の鉛含有量が4%に据え置かれて背景には、一部の用途において代替可能とする意見があった一方で、ウオームギヤ、ギヤ、ブッシュ、コンタクトピン、ネジ、スプリングなどにおいて、滑りやすさや強度などで代替不可能とする意見が出たことによって、全ての用途で代替可能という結論に至らなかったことが報告書に示されています。
(5)今回の報告書では延長されましたが一方で「代替不可能とする利害関係者の間で代替化に向けた計画がないことから、次回の見直し時に利害関係者から代替化に向けた計画や情報に基づく正当な適用除外用途の延長申請理由が提供されない限り適用除外は廃止するべき」と結論づけられ、有効期限が3年に設定されました。従って、次回の検討時には適用除外用途が延長される可能性は低いと思われ、また適用除外用途されても極めて細分化された用途になるものと思われますので、今から代替の為の準備を開始した方が良いと結論します。