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環境関連情報

REACH規則における「制限物質」 #3

ECHAのWebサイトで制限物質リストが改定されました

情報発信日:2016-7-29

はじめに

2015年5月26日付け本コラム「REACH規則における『制限物質』#2」掲載以降、REACH規則附属書XVII「制限物質」のリストが複数回に渡り、改訂されました。

これに伴い、ECHAのWebサイトにおいて、制限物質リストが改訂され、同時に検索機能が設けられるなど使いやすく更新されていますので、主な改訂内容とともにお知らせします。

また併せて、「制限物質」とは何か、登録された場合にはどうなるかなどについて、おさらいをしてみたいと思います。

ECHAのWebサイト“Substances restricted under REACH”における最新情報(2016年6月23日現在)
主な改訂点と特徴

(1)2015年5月26日付け本コラム「REACH規則における『制限物質』#2」以降、4回のEU官報(引用・参考文献参照)によって、附属書XVII「制限物質」に関する改訂がなされました。ECHAのWebサイトにおけるREACH規則の制限物質リストは、現時点までの法改正内容を含めた統合的なリストであり、関連する情報も付加され、さらに「検索機能」が付与され使いやすく改良されています。

(2)検索機能

・物質名、CAS番号、EC番号、附属書XVIIの登録番号から、検索することが出来ます。
・物質名は附属書XVIIの1行目の名前だけが検索に有効です。
・附属書XVIIに収載された全ての物質がCAS番号、EC番号を有していない点に注意してください。
・物質がグループとして登録されている場合には、CAS番号、EC番号がその物質グループの下にあります。

(3)本リストでの検索する場合のリンクと注意事項

・付録:特定の登録番号だけ付録にリンクしています。
・付録1〜6(CMR物質:発ガン性、変異原性、生殖毒性があるとされる物質))の下で制限されている物質についてはCAS番号、EC番号では検索出来ません。
・規格:利用可能な場合には規格に関係する情報へのリンク(ヨーロッパの標準のためのCEN検索エンジン、または国際標準のページ)が貼られています。例として、「ニッケルの放出試験方法等」
・履歴:元の規制及び以降の改正文へのリンク
・Q&A(登録された制限物質に関係したQ&A)は特定の登録物質だけでなく、一般的なQ&Aが含まれますので注意してください。

(4)グループ・メンバー

・いくつかの物質の登録がある場合(すなわち、物質がグループ登録されている場合)グループ登録の範囲内の物質は、『グループ・メンバー』といわれて、表にリストされます。これらの「メンバー」は特定の制限物質として登録されるか、一般的な物質として登録になるかはECHAによって識別されます(カドミウムとカドミウム化合物のように)。但し、この識別がすべての登録物質に対して準備ができているというわけではないことに注意すべきです。

(5)リストから幾つかの物質が削除されましたので注意してください。

・規則(EU) No 552/2009により登録番号33及び39が削除され、規則(EC) No 2037/2000 「オゾン層破壊物質」の下で規制されています。
・規則(EU) No 207/2011により登録番号44及び53が削除された(規則(EU) No 850/2004 「POPs条約」の下で規制されています。

 

REACH規則における「制限物質」とは

(制限物質とは)

制限物質とは、ヒトの健康や環境へ与える悪影響が受け入れられないほどの高いリスクを有する物質の製造・上市及び使用について、EU全域で使用に対する制限条件を付与したり、必要に応じて禁止をしたりする物質で、REACH規則附属書XVII収載の「Restrictions(制限物質)」を言い、現在約60種類またはグループ(約100物質)がリストアップされています。

当初は、EU指令76/769(危険な物質及び調剤の上市と使用に関する制限指令)により使用制限を受けていた約50種類の化学物質が引き継がれましたが、その後約50種類が追加収載され現在に至っています。

(制限物質に関する要件)

新たに制限物質を設定するには、欧州委員会・化学品庁が提案する場合と、EU加盟国が提案する場合があります。当該物質のヒトや環境に与える悪影響が受け入れられないほど高いことが明確になったがリスク管理が不十分であり、その影響がEU全体に及ぶ恐れがあると判断された場合に諸手続きを経て指定されます。

(制限の例)

例1)

登録番号

5

物質名

英名

Benzene

和名

ベンゼン

CAS番号

71-43-2

EC番号

200-753-7

制限条件

1. 玩具または玩具の部品で5mg/kg(0.0005重量%)以上含有禁止
2. 1項に対応しない玩具または玩具の部品の上市禁止
3. 上市または使用の禁止
物質、またはその他の物質の成分や調剤に0.1重量%以上の濃度で含まれる場合 に使用及び上市は禁止

適用除外

1. 指令98/70/ECの対象となる自動車燃料
2. 現行の法律で定められた量を超えるベンゼンの放出が見込まれない工業プロセス
3. 0.1容積%以下の消費者が使用する為に上市される天然ガス

例2)

登録番号

63

物質名

英名

Lead and its compounds

和名

鉛及びその化合物

CAS番号

7439-92-1

EC番号

231-100-4

制限条件

1. 個別の部分で0.05重量%以上の濃度で含む宝飾成形品は上市及び使用の禁止。
2. 上記1項について
(1)「宝飾成形品」とは、以下の様な宝飾品、模造宝飾品、髪飾りを含む
①ブレスレット、ネックレス及び指輪
②ピアス装飾品
③腕時計、腕に装着するもの
④ブローチ、カフスボタン
(2)「全ての個別部品」は、宝石の個々の構成部品だけではなく、宝石が作られている材料も含みます。
3. 上記1項は、宝石を上市するか、使用される場合の個々の部品に適用されます。
4. それらの成形品中の鉛(金属として)またはその接触できる部品が0.05重量%以上の濃度で含み、その成形品または接触できる部品が、通常の使用において、子供の口に入る事が予見される場合において、上市及び一般市民に供給される成形品として使ってはならない。
この項は一辺の長さが5cm以下あるいは取り外しが可能で5cm以下になる部品を有している成形品を考慮しています。

適用除外

制限条件1項について以下は適用除外
①69/493/EECの付属書Ⅰで定義されたクリスタルガラス
②消費者が触れない時計の内部部品
③非人工的または復元された貴重な石または半貴重な石(鉛や鉛を含む化合物や混合物で処理されない場合)
④エナメル(最低500℃で鉱石を溶融しガラス化または焼結して出来るガラス混合物)
⑤2013年10月9日以前の上市品と1961年12月10日前に生産される宝石品
制限条件4項について以下は適用除外
⑥成形品または接触出来る部品において、コーティングの有無にかかわらず、通常の使用または予見出来る使用において2年間、成形品または接触出来る部品からの鉛の溶出速度が毎時(0.05μg / g / h に等しい) 0.05μg /cm² を越えない事が確実である場合。
⑦制限条件1項に関して上記⑥である宝飾品
⑧指令69/493/EEC附属書I(カテゴリー1、2、3と4)で定められるクリスタル・グラス
⑨CNコード7103で確立された規制(EEC) No.2658/87 による非人工的及び復元された貴石や半貴石(鉛や鉛を含むコンパウンドや混合物で処理されない場合)
⑩エナメル(最低500℃で鉱石を溶融しガラス化または焼結して出来るガラス混合物)
⑪南京錠を含む鍵と錠
⑫楽器
⑬濃度0.5重量%を超えない黄銅からなる成形品
⑭筆記用具のチップ
⑮宗教上で使われる成形品
⑯携帯用錫炭素電池、ボタン電池
⑰以下の範囲に含まれる成形品
・94・62・EC(包装及び包装廃棄物指令)
・(EC)No.1935/2004(食料品と接触する事が意図されている材料及び成形品規則)
・2009/48/EC (改正玩具指令)
・2011/65/EC(改正RoHS指令)
⑱制限条件4項に関して2016年6月1日以前に上市された成形品。

その他

①制限条件の1項に関して、委員会はこの登録に対して、2017ね10月9日までに鉛の移動を含む新しい科学的な情報に照らし評価を行い、適切で有ると判断すれば、この登録を修正します。
②制限条件4項のコーティング完全性の必要要件及び適用除外⑪⑫⑮⑯について、委員会は2019年7月1日までに鉛の移動を含む新しい科学的な情報に照らし評価を行い、適切であると判断すれば、この登録を修正します。

 

まとめ

制限物質は、認可対象物質以上にヒトの健康や環境へ与える悪影響が受け入れられないほどの高いリスクを有する物質であり、基本的には製造や上市、使用が制限され、場合によっては禁止の対象となる物質です。

多くの化学物質は閾値を超えて使用したり、無闇に環境中に放出した場合には、ヒトの健康を害したり環境に悪影響を与えますが、全ての化学物質は無意味に存在するわけではなく、我々人類に対して何らかの利便性や恩恵をもたらすものです。そのため、「毒性や環境への悪影響がある化学物質は全て製造も使用も禁止」としてしまうと、我々の生活が立ち行かなくなってしまうため、それぞれの化学物質の特性を熟知し、管理して上手に付き合って行くことが、重要であり、現実的なものと言えます。

そういう意味では、REACH規則は化学物質に対する経済性や利便性、有害性を天秤に掛けて、上手に付き合って行こうとする意図が見えるような気がします。

引用・参考文献

注意

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