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環境関連情報

REACH規則における高懸念物質(SVHC) #9

第13次SVHC 2物質が追加、合計163物質に

情報発信日:2015-7-21

はじめに

ECHA(欧州化学品庁)は2015年6月15日付けでホームページにおいて、「REACH規則における高懸念物質(SVHC)が収載されているCandidate List of Substances of Very High Concern for Authorisation (高懸念物質の認可対象候補物質リスト)」を更新しました。従来161物質だったSVHCに、2物質を新規に追加しました。

これによって、高懸念物質の認可対象候補物質リストに収載されたSVHCは163種類となりました。

但し、今回のNo.1物質はCAS登録番号を2つ有していますので、実質的には3物質が追加になりました。

 

第12次追加高懸念物質一覧

 

表1 附属書XIV(Candidate List)に第13次追加収載されたSVHC物質(2015年6月15日付け))

物質名

CAS
登録番号

収載理由

主な用途
(注2)

No.

英名

和名、俗称、略称、別名など

1

1,2-benzenedicarboxylic acid, di-C6-10-alkyl esters; 1,2-benzenedicarboxylic acid, mixed decyl and hexyl and octyl diesters with ≥ 0.3% of dihexyl phthalate (EC No. 201-559-5)

1,2-ベンゼンジカルボン酸、ジC6-10アルキルエステル;(0.3%以上のdihexylphthalate (EC No. 201-559-5)を含む場合)

68515-51-5

生殖毒性
(第57条C)

接着剤、潤滑剤、塗料、建築材料、ケーブルコンパウンド、ポリマー箔、ポリ塩化ビニル(PVC)化合物、画材など

1,2-ベンゼンジカルボン酸、混合デシル基、ヘキシル基、オクチル酸ジエステル;(0.3%以上のdihexylphthalate (EC No. 201-559-5)を含む場合)

68648-93-1

2

5-sec-butyl-2-(2,4-dimethylcyclohex-3-en-1-yl)-5-methyl-1,3-dioxane [1], 5-sec-butyl-2-(4,6-dimethylcyclohex-3-en-1-yl)-5-methyl-1,3-dioxane [2] [covering any of the individual stereoisomers of [1] and [2] or any combination thereof]

5-sec-ブチル-2-(2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-5-メチル-1,3-ジオキサン[1]、5-sec-ブチル-2-(4,6-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-5-メチル-1,3-ジオキサン[2]([1]と[2]の個々の異性体、またはその組合せも含む)

なし

vPvB(注1)
(第57条e)

不明(注3)

注1)vPvB 物質(極めて難分解性、高い生体蓄積性を有する物質、及びそれらと同等の懸念のある物質)。
注2)今回収載物質の用途は、ECHA Annex XV report (dossier) に登録されているものです。
注3)No.2の物質の用途については、ECHA Annex XV report (dossier) において「利用に関する情報は秘密である。従って、用途情報は提供できない」と記載されています。別途の調査においても、用途はわかりませんでした。

 

化学物質のよもやま話し

筆者は、専門が有機合成化学ですが、化学物質の名前と言うのは実に厄介極まりありません。名前を聞いても、少し複雑になると構造も思い浮かびませんし、同じ物質であるにも関わらず複数の名前を有しており、場合によっては100個以上の名前を持つ場合さえあります。

おまけに化学物質の種類は天然に存在するものから人工的に合成されたものまで、合わせると数千万種類もあると言われています。おそらく主な物質だけでも数百万種類、そのうち国内外で何らかの法規制の対象となっているのが数十万種類と推定されます。

これを管理すると言うことですから、実に大変な作業と言えます。

そこで、化学物質の名前に関する「辞書」が大変発達していますので、これらを十分に利用することが重要と言えます。

国内における試薬の大手である東京化成工業(株)のホームページに世界の主な化学物質辞書の一覧が掲載されていますので、引用します。

表2 世界の主な化学物質辞書(出典:東京化成工業(株)、愛知大学文学部図書館情報学教授 時実象一)

辞書の名称

料金

対象とする化学物質

化学物質数

CAS Registry
(化学物質登録システム)
(ScFinder)

有料

CAplusの化学文献から索引した化学物質、GANBANK由来の配列や各国の既存化学物質リストに収録された化合物等

有機6,400万種類
配列 (注) 6,200万種類

Reaxys

有料

Bellstein/Gmelln/Patent Chemistry Databaseに収録された有機化学物質

1,000万種類

日本語化学辞書(日化辞)
Web

無料

文献から索引した有機化合物及びその混合物

281万種類

化学物質総合情報提供システム(CHRIP)

無料

国内及び海外の法規制の対象となる化学物質

17万種類

化学品製品情報データベース

無料

国内化学関連企業が製造・輸入・販売する化学製品

 

PubChem Search

無料

NIH(米国国立衛生研究所)、研究機関、試薬メーカー等から情報提供された低分子化合物

2,670万種類

ChemBioFinder.com

無料

PerkinElmer社による化学物質情報

 

ChemSpider

無料

各種情報源から集められた化学物質情報

2,500万種類

ChemlDplus Lite

無料

NIHによる毒性情報を持つ化学物質

39万種類

多くの場合、検索結果には化学構造が記載されていますので、該当物質との照合を行う場合にCAS登録番号と併せて利用すると有効です。また、関連するデータや文献のリンクが付いている場合もあり、より詳細な情報を得るために有用ですので、化学物質辞書の利用に習熟されると有利です。

 

まとめ

(1) 今回、第13次追加物質は2物質ですが、No.1の物質はCAS登録番号が2つありますので、実質的には3物質が追加されました。

(2) 今回は、以前の12回の追加収載に比べて、物質数が少なく、かつ特殊な物質になっていますので、そろそろ追加収載が収束する方向に来ているのかと思われます。

(3) No.2の物質はCAS登録番号を持たず、かつ用途も「秘密」と言うことですので、「不使用」を確認する場合注意が必要です。

引用・参考資料

注意

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