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放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料 #5

放射線の基礎知識と健康影響 #5 <身の回りの放射線>

情報発信日:2014-3-25

はじめに

経済産業省資源エネルギー庁は2014年2月25日付けで政府の原案をとりまとめたとして、最新の「エネルギー基本計画(案)」を発表しました。この内容の詳細については別途紹介したいと思いますが、概要としては、「東京電力福島第一原子力発電所の事故及びその前後から顕在化してきた課題」として、「原子力発電所は事故を起こした場合には深刻な被害が生ずる危険があるが、原子力発電所の停止による化石燃料への依存増大に伴う国富流出、供給不安の拡大、電気料金とエネルギーコストの上昇に伴う経済の国際競争力低下や温室効果ガス排出量の急増などのマイナス要素が大きい為、東京電力福島第一発電所事故に対して真摯に反省し、原子力発電所の安全性に関して再構築して再稼働させることが必要」と結論づけた形となっています。

原子力発電所の再稼働に関しては、国民の意見も「即時全停止、再稼働反対」と「将来的に、再生可能エネルギーの割合を増やし、緩やかに原子力発電の割合を減らす」という両論があります。現実的には「即時全停止」というのは、確かに経済性の面や温室効果ガスの面から考えると難しい課題といえると思われますが、目標として「何年後までには、原子力発電所の稼働をゼロにする」といった目標が欲しいと思われます。

さて、前月は「放射線の線量測定と計算」について述べましたが、今月は私達の「身の回りの放射線」について述べたいと思います。

 

放射線の基礎知識と健康影響 #5

※以下環境省公表の「東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う放射線による健康影響等に関する国の統一的な基礎資料 平成24年度版 ver.2012001(以下「環境省資料」と約します)」を主な資料として記述します。

身の回りの放射線

(1) 自然・人工放射線からの被ばく線量

放射線は、原子力発電所やレントゲンなどの人工的な装置や施設以外の自然界でも発生し、日常生活の中でも知らない間にも放射線を受けています。宇宙や大地から受ける自然放射線による外部被ばくや、食物や空気中に浮遊する自然の放射性物質の摂取による内部被ばくを合計すると年間で2.4mSv(世界平均)になります。 その他、胸部CTスキャン6.9mSv(1回当たり)、胸部単純エックス線撮影0.06mSv(1回当たり)、東京とニューヨーク往復飛行機搭乗〜0.19mSvなどが加算されます。特に日本においては、CTスキャナーの普及やエックス線検査の機会増加などにより医療被ばくの割合が世界的に見て大きいといわれています。特に、胸部CTスキャンを受けると世界平均の自然放射性物質による被ばく量の3倍弱を受けることになることがわかると思います。

 

(2) 時間当たりの被ばく線量の比較

宇宙空間や航空機、高山などでは銀河や太陽などからの宇宙線による空間線量が高くなります。通常の生活の場で受ける空間線量は0.01〜1μSv/時です。

(3) 年間当たりの被ばく線量の比較

2011年12月に原子力安全研究会が20年振りに日本人の国民被ばく線量を発表した結果によると、1年間に日本人の受ける平均被ばく線量は5.98mSvで、うち2.1mSvが自然放射線からの被ばくで、残り3.57mSvはCT検査などの医療用放射線による被ばくで、世界的に見て極めて多い事がわかります。

また、日本においては世界に比べてラドン・トロンからの被ばくが少なく、食品中の鉛210やポロニウム210などの放射性物質による被ばくが多い特徴があります。

注) 上記の国民線量評価では福島第一原子力発電所事故の影響は含まれていません。

(4) 自然からの被ばく線量の内訳

日本人が欧米諸国に比べて経口摂取(食品)による被ばくが多い原因は魚介類の摂取が多いことによると推定されています。

(5) 大地の放射線(世界)

世界には、中国の陽江、インドのケララ、イランのラムサールなど、日本よりも2倍から10倍も自然放射線が高い地域がありますが、これらの地域はラジウム、トリウム、ウランなどが土壌中に多く含まれることが原因といわれています。

現在までのところ、これらの地域に居住する人々に顕著な健康被害の差異は認められていないようですが、今後生涯線量推定や、それに基づく癌過剰線量推定値の推定や非癌死亡率などについての検討がなされる予定です。

(6) 大地の放射線(日本)

日本国内においても大地からの放射線レベルには高低があり、最も高い岐阜県と最も低い神奈川県では年間0.4mSvの差異があります。花崗岩が直接地表に露出している西日本は、関東ローム層で覆われている東日本に比べて1.5倍ほど大地からの放射線量が高くなっています。

(7) 屋内ラドンからの被ばく

屋内においても天然ラドンによる被ばくが起こります。被ばく量は地域差があり、世界平均は397Bq/m3で、木造建築の多い日本では16Bq/m3と低く、ヨーロッパのような気密性の高い石造りの家で生活する地域では高くなる傾向があり、例えばスエーデンでは108Bq/m3と高い値を示す地域もあります。

(8) 身近な放射線源

カリウムは生物に必要な元素なので、ほとんどの食品に含まれています。自然界のカリウムの0.01%は放射性カリウムであり、ほとんどの食品には放射性カリウムが含まれています。放射性カリウムはβ線とγ線を放出しますので、食品を摂取することにより内部被ばくすることになります。その被ばく量は年間で0.18mSv程度、胸のX線検査3回分または航空機により東京-ニューヨークを1回往復した分程度です。

(9) 放射線検査による被ばく線量

屋内においても天然ラドンによる被ばくが起こります。被ばく量は地域差があり、世界平均は397Bq/m3で、木造建築の多い日本では16Bq/m3と低く、ヨーロッパのような気密性の高い石造りの家で生活する地域では高くなる傾向があり、例えばスエーデンでは108Bq/m3と高い値を示す地域もあります。

(10) 被ばく線量の比較 (早見表)

図8 放射線被ばくの早見表 (放射線医学総合研究所ホームページにジャンプ)

 

(11) フォールアウトの影響

まとめ

(1) 自然の放射性物質の摂取による内部被ばくを合計すると年間で2.4mSv(世界平均)になります。
(2) 通常の生活の場で受ける空間線量は0.01〜1μSv/時です。
(3) 1年間に日本人の受ける平均被ばく線量は5.98mSvで、うち2.1mSvが自然放射線からの被ばくで、
残り3.57mSvはCT検査などの医療用放射線による被ばくで、世界的に見て極めて多い事がわかります。
(4) 食物摂取に伴う放射性カリウムによる内部被ばく線量は年間で0.18mSv程度、胸のX線検査3回分または航空機により東京〜ニューヨークを1回往復した分程度です。
(5) 医療・診断用X線による被ばく線量は胃のバリウム検査で3.3mSv/回、X線CTスキャナーでは胸部が9.1mSv/回、上腹部が12.9mSv/回、下腹部が10.5mSv/回と、自然界から受ける放射線量と比較して大きな線量を受けている事がわかります。
(6) 放射線による健康状の影響は1,000mSv/年以上で有意になるとされていますので、自然界及び医療診断から受ける放射線量は僅かなものといえると思います。
(7) 次回は、放射線の人体への影響、人体影響の発生機構などについて述べる予定です。

引用・参考資料

注意

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