ホーム > 環境について > 環境関連情報 > ストックホルム条約、ロッテルダム条約、バーゼル条約約定国会議開催
情報発信日:2013-6-19
2013年5月13日付けで経済産業省と環境省は、(1)残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants:POPs)の製造や使用の制限を行うストックホルム条約、(2)「The Rotterdam Convention on the Prior Informed Consent Procedure for Certain Hazardous Chemicals and Pesticides in International Trade (PIC); 国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関する条約であるロッテルダム条約、及び、(3)有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約の3つの有害化学物質に関する条約の約定国会議が、2013年4月30日から5月2日までスイスのジュネーブで行われたことを報じました。加えて、この三条約の拡大合同会議(ExCOPs2)も同時に開催されたと報じました。
ストックホルム条約、ロッテルダム条約、バーゼル条約については本コラムでも何回か取り上げて説明していますので、詳細は引用・参考資料を一読頂ければと思いますが、有害な化学物質を規制する条約や法規制は拡大の一途を辿っていますが、その製造や使用、貿易、廃棄など有害とされる物質のライフサイクルを通じて一貫した規制になっていない場合もあり、関係者が混乱する場面も多くなってきているかと思います。
このような状況において、有害化学物質の「製造・使用を規制するストックホルム条約」、「貿易を規制するロッテルダム条約」、「その廃棄物の国境越えを規制するバーゼル条約」の三つの条約が一つの枠組みとして捉えられることになったことは歓迎されることと言えます。
今回はこの三条約の約定国会議で何が決定されたのかを含めて解説してみたいと思います。
ストックホルム条約(POPs条約)はPCB、DDT、ダイオキシン等、環境中において残留性及び有害性の高い有機合成物質によるヒトの健康被害予防と環境保全を図ることを目的として、これらの物質の(1)製造・使用の原則禁止、(2)非意図的生成物質の排出の削減、(3)廃棄物の適正管理及び処理などを行うもので、2001年5月にストックホルムで採決されたことからストックホルム条約とよばれ、2004年5月17日に発効し、わが国を含む約100ヶ国が締結しています。
本年行われた約定国会議においては、附属書A(廃絶)に難燃剤のヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)が追加されました。
ロッテルダム条約(PIC条約)は、化学物質の危険性や有害性に関する情報が乏しい途上国などへ輸出することによって、その国の人々に対する健康や環境への悪影響が生じることを防止するため、輸出国は、特定の有害物質の輸出に先立って、輸入国政府の輸入意思を確認した上で輸出を行うこと等を規定している条約です。
本年行われた約定国会議においては附属書III(輸出手続きが必要となる化学物質)に新たに4物質が追加されました。
注) 規制内容の詳細については、PIC条約事務局のホームページから会議文書をご覧ください。
バーゼル条約は「処分又はリサイクルを目的とした有害廃棄物の輸出入の事前通告に基づく許可制や、必要な書類の携行、不適正な輸出や処分行為が行われた場合の再輸入の義務などを規定する」ものです。
本年行われた約定国会議においては、以下の合意がなされました。
(1) 有害廃棄物等の環境上適正な管理に関するフレームワーク 我が国がリード国となり、「有害廃棄物等の環境上適正な管理に関するフレームワーク」及び「そのフォローアップ活動に関する決議」が採択されました。
(2) 有害廃棄物等の技術ガイドライン ・我が国がリード国として、水銀廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドライン「水銀廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドライン」について、水銀に関する水俣条約の交渉結果を踏まえ、今後、ガイドラインを更新していくとの決議が採択されました。 ・POPs(残留性有機汚染物質)廃棄物の環境上適正な管理に関するガイドライン 我が国が改訂作業をリードする「PCBs、PCTs若しくはPBBsから成り、これらを含み、またはこれらにより汚染された廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドライン」を含めたPOPs廃棄物の環境上適正な管理に関する各種ガイドラインの作成・改訂に関する会期間の作業計画が決定されました。 ・電気電子機器廃棄物(E-waste)の越境移動に関する技術ガイドライン 「E-waste の越境移動に関する技術ガイドライン」については種々議論が行われましたが、リサイクルと廃棄の境界が明確にならず、継続審議になりました。 ・コンピュータ機器に関するパートナーシップ(PACE) 使用済みコンピュータ機器の環境上適正な管理を目的とした各種活動については2015年までの継続審議。
(3) バーゼル条約附属書IX(非該当リスト)に含まれる廃棄物リストの改正 ・液体用の複合パッケージのリサイクルのための前処理で生じた分離できないプラスティック部分及び分離できないプラスティック・アルミ部分 ・ラベル材料生産に使用された原材料を含むラミネート粘着ラベルの廃棄物を附属書IXに追加するとともに ・紙とプラスティックの混合物等から構成される複合パッケージ ※以上について継続審議
(4) バーゼル条約施行遵守委員会 不法越境移動の法的遵守の効果的な実施を目的とした施行ネットワーク(ENFORCE)の設立に関する決定等が採択されました。
上記、ストックホルム条約、ロッテルダム条約、バーゼル条約の三条約メンバーによる合同会議が実施され、以下の事項が協議及び合意されました。
(1) 三条約共同事務局について 2014-2015年の共同事務局費が承認され、共同事務局が設置されました。
(2) 三条約の連携の評価について 三条約による連携を一層促進するため、締約国、事務局、UNEP(United Nations Environment Programme: 国連環境計画)、及び、FAO(Food and Agriculture Organization of the United Nations: 国連食糧農業機関)が取る具体的な行動の勧告リストが作成されました
(3) 三条約の共同の活動 三条約に共通する、国及び地域レベルでの実施の促進等にむけた活動をさらに進めることとなりました。
(4) 化学物質検討委員会と残留性有機汚染物質検討委員会との連携 両委員会に対して、さらなる協力・連携を進めるための議論を行うとともに、活動の整合性を確保しつつ、ガイダンスを作成することを要請しました。
(5) 水銀に関する水俣条約等化学物質・廃棄物の枠組みとの協力・連携 水銀に関する水俣条約外交会議に対して、同条約を含む四条約の相互の利益になる分野での協力・連携について検討するよう要請しました。
(6) 化学物質及び廃棄物のための資金調達に関する協議プロセス 統合的アプローチを歓迎するとともに、三条約締約国に対し資金調達のためのさらなる行動をとることを要請しました。
(7) ハイレベルセグメント 約80か国の大臣・副大臣級が参加したハイレベルセグメントでは、各国、各地域、世界それぞれにおける化学物質及び廃棄物関連条約のシナジーと実施をテーマとして議論が行われました。 その結果は「適正な化学物質・廃棄物管理に関するジュネーブ声明」として発表されました。※内容は省略
「ヒトや動植物に対して有害である」と認定された種々の化学物質に対する製造や使用に関する規制はますます増加する傾向にあります。これらの規制は地球環境の保全や生物多様性の保護といった意味合いでは歓迎する方向性と言えますが、国や地域、用途や目的、移動や廃棄など色々な場面で一貫性のある規制でないと、多くの化学物質を扱う産業や企業において実務を遂行する場合に完全にこれらを把握するのは、「これら法規制が生きている(度々改正が行われる)」ため、極めて難しい問題と言えます。
特に、バルブ産業のように全ての産業を対象とする場合には、ありとあらゆる法規制に対処する必要があります。このような状況において、従来はバラバラであった、化学物質関連の条約が共通の事務局により運営され始めたことは、大いに評価されるべきと思われます。今後も、ますますこのような動きが進むことに期待したいと思います。