ホーム > 環境について > 環境関連情報 > 重金属とは? その毒性とは?
情報発信日:2011-07-22
2011年6月20日付け朝日新聞の8面に「鉛汚染広がる中国」「子供から高濃度検出」という記事が出ていました。「経済成長が著しい中国において不法操業を行う工場から排出された重金属によって環境が汚染され、周辺住民、特に子供が健康被害に遭っており中央政府は対策強化を表明しているが経済成長を優先する地元企業や地方政府の姿勢は簡単に変わらず大きな問題になっている。」という記事でした。世界のレアースの40%を産出するといわれている中国では地下鉱物資源の開発が盛んで、ネットで「中国・重金属・汚染」などのキーワードで検索すると、多くの記事が見つかり、都合の悪い情報は隠している中国ですが、漏れてくる情報からしても環境汚染の深刻さは相当なもののようです。
一方、EUのRoHS指令、ELV指令や各国の給水器具基準などにおいても、鉛、カドミウム、水銀、六価クロムなどの重金属の規制がますます厳しくなってきていますが、今回は「重金属とは何か?」「人体に重金属が取り込まれるとどうなるのか?」など重金属に関わる問題を明確にしてみたいと思います。
岩波書店の広辞苑によりますと「重金属とは比重4〜5以上の金属の総称。金、白金、銅、水銀、鉛、鉄など。」、三省堂の大辞林には「比重の大きい金属。ふつう比重4以上のものをいう。白金・金・水銀・銀・鉛・銅・鉄・クロム・マンガン・コバルト・ニッケルなど。」と書かれています。
もう少し「重金属」の定義を正確にするために理工学書を調べてみた結果を周期律表1に示します。
一般に金属は比重が4〜5以上のものを重金属、それより比重の小さな金属を軽金属と分類します。「ミネラル」というと身体に取り込んでも健康に良さそう、「重金属」というと身体には有害というイメージがあります。たしかに金属の中には身体に取り込み過ぎると健康に被害をもたらすものが多く存在します。しかし、重金属のすべてが人体に有害かというと、後述するように生体にとっては欠かせない金属もあり、全ての重金属が有害というわけではありませんが、イタイイタイ病の原因となったカドミウムや、水俣病の原因となった有機水銀など、生体に対する有害性を有するものが多いため、さまざまな形で重金属に対する規制が行われています。
重金属は一般に生体内に取り込まれると、体外への排泄が遅く特定の組織に蓄積しやすい性質を持っています。ただし、重金属であっても、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、三価クロム(Cr+++)、コバルト(Co)などのように、生体に必須のものもあり、また有機・無機の化合物の形の違いによっても代謝や毒性が大きく異なる場合があります。たとえば六価クロムは生体にとって猛毒ですが、三価クロムは必須金属ですし、水銀も有機水銀と無機水銀では生体に対する毒性の程度が異なります。
各重金属には現時点で人体に必須とされるもの、必須であるが必要以上に摂取すると有害とされるもの、必須性や有害性が証明されていないものなど、さまざまなものがあります。重金属は人工物ではなく、地球上にもともと存在していた物質であり、通常の環境では人間も含めてすべての動植物に微量は存在しており、重金属の存在自体が危険というわけではなく、鉱山などにおける廃滓(はいさい)などが多量に流出するなど、人為的に高濃度の汚染に晒されることによる影響が問題となります。
人体は代謝・排泄機能を有していますので許容範囲内の摂取であれば体内に蓄積されることはありませんが、高濃度の摂取を継続すると排泄が間に合わず体内に蓄積され中毒症状を起こすことになります。
以下に主な重金属による中毒例を示します。
昔は鉛の毒性があまり知られていなかったため、加工のしやすい金属として給水管、化粧品、顔料、食器などに多用され、多くの中毒者を出しました。
有機水銀と体温計などに使用されている無機水銀とでは毒性が大きく異なりますが、水俣病の原因であるメチル水銀(有機水銀)が有名で、おもに神経系に障害をもたらす。
イタイイタイ病の原因物質として有名。
和歌山毒カレー事件で使われた亜ヒ酸が有名。