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環境関連情報

有害物質規制最前線#15

REACH規制への対応準備

情報発信日:2006-09-28

欧州REACH規則への対応の必要性

EU域内で生産・輸入・使用されるすべての化学品について登録・評価・認可を義務づけるREACH規則が、順調に進むと2007年施行、2008年以降に実効に移る可能性が強くなってきました。化学品に対する規制なので「原料メーカの問題」と考える向きもありますが、実際には使用者・成形品にも適用されますので、部品・部材メーカなどは、原料メーカが所有する安全データを正確に順次受け継ぎ、川下に伝達するシステムを構築する必要に迫られると予想されています。このシステムは電気電子機器業会や自動車工業会関連では、RoHS指令及びELV指令対応のために確立していますが、REACH規則はすべての産業に適用されますので、RoHS指令やELV指令に無関係であった企業も無関心でいることができなくなる可能性が強いといえます。

しかし、「REACH規則は欧州の規制ではないのか?」と疑問をもたれる方も多いと思いますが、欧州へ輸出を行っている企業は「欧州向けと国内向け製品を区別して生産することは非効率である」と考え、RoHSでみられるようにすべての製品をREACH対応のシステムに切り替えます。したがって、部材、部品(アーティクル)メーカも否応なく、この対応を余儀なくされることになります。

また厄介なことは、「指令」と異なり「規則」はそのまま欧州加盟国の国内法として適用されますので、施行から実効までの準備期間が短いという特徴があります。

最上流の原料・素材メーカから最下流のセットメーカまで化学品情報を正確に伝達する仕組みを構築するには、自社の調達先企業すべてを巻き込むことが必要となるため、多くの時間と労力が必要になりますので早くからの準備が必要と考えられます。

しかしながら、部品や部材メーカがあまり危機感を感じていないために、経済産業省が「ガイドライン」を作成したり、大手の最上流の原料メーカ及び最下流のセットメーカが中心になってREACH対応の組織をつくり、部品・部材メーカを巻き込んで化学品の情報を正確に伝達するシステムを早期に構築し、国際競争力を高めようとする動きを見せはじめています。

化学品情報の把握と伝達の必要性とJAMP

本年(2006年)7月1日より、欧州RoHS指令に基づく電気電子機器における有害化学物質の使用制限がスタートしました。この対応のために川上産業である素材・原料メーカでは、これらの化学物質の情報伝達に従来のMSDS制度を補完して、化学物質の情報を川下に伝達する業界統一の制度としてMSDSplusを策定し、その普及と推進に努めています。

一方、RoHS指令によって直接の影響を受ける電気電子機器産業など川下のセットメーカでは、グリーン調達調査共通化協議会等を設けて、部品の調達先に対する化学品の情報伝達の仕組みづくりを行ってきました。

しかしながら、最上流の原料や素材メーカと最下流のセットメーカの中間に位置する部品・部材メーカ(アーティクルメーカ)には、製品に含有する化学品の情報を適切に把握して管理及び公開する(川上から受けとり川下に流す)仕組みをもたない企業がほとんどです。しかし、現在EUにおいて成立を目指しているREACH規則では、「一定量の化学物質を製造・輸入・使用する場合には、その化学物質の登録、および、必要に応じて使用用途ごとのリスク評価を義務づける」としています。このREACH規則は、RoHS指令における電気電子機器やELV指令における自動車産業など特定の産業を対象とした法規制ではないため、すべての産業が対象となりますが、現状の仕組みでは対応できない企業が多く、RoHS指令以上の大きな混乱が予想されます。

このような状況下、最上流に位置する大手の原料・素材メーカと最下流に位置する大手セットメーカ企業までのサプライチェーンにおいて、中間の部材・部品メーカに化学品に関する情報を伝達する統一した仕組みが必要であり、この仕組みを早急に構築して、情報を速やかに流すことが国際競争に勝つために必須であると考えられており、このたび、JAMP(Japan Article Management Promotion-consortium)アーティクルマネジメント推進協議会が設立されました。

JAMPとは

JAMPは、サプライチェーンの最上流に位置する大手の化学系素材・原料メーカと最下流のセットメーカ17社が発起人となり、2006年9月11日に設立され、本日現在すでに59社・団体が参加しています。

部材・部品(アーティクル)に含有される、川上の原料メーカより提供された化学品の情報を、正しく川下のセットメーカに伝達する仕組みを構築して、化学品規制が強まるなかで国際競争力を強化することが、主要な活動目的になっているようです。

JAMPの具体的な活動

JAMPのウェブサイトによると、当面の具体的な活動としては、

としています。

JAMPの説明会

JAMPの説明会が2006年10月27日、大阪で開催されます。詳細はJAMPのウェブサイトを参照してください。

製品含有化学物質情報伝達に係る基本的指針

一方、経済産業省においても「産業構造審議会化学・バイオ部会リスク管理小委員会製品含有化学物質情報伝達WG」において、2006年4 月に、化学物質情報を管理するための情報伝達フォーマットの統一化促進や、中立的な立場での仕組み等の運用及び普及のための国際標準化の必要性などについてまとめた「製品含有化学物質情報伝達に係る基本的指針(ガイドライン)」を公表しています。

REACH規則対応

実際にREACH規則がどの程度の影響をもたらすかは正確にはまだ把握されていませんが、上流の原料・材料メーカが大きな影響を受けることはもちろんのこと、その原料や材料を加工する部品・部材(アーティクル)メーカも業種・業界を問わず、多かれ少なかれ影響を受けると予想されます。重要なことは「REACH規則は業種、製品を特定しないため、すべての産業が影響を受ける」だろうということです。

「備えあれば憂いなし」といいます。これからもREACH規則に関する情報は逐次発信してゆく予定ですが、対応には、前述したとおり、相当な時間と労力が必要と予想されますので、早めの対応をされたほうがよいかと思います。

情報源・出典・参考情報

注意

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