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環境関連情報

有害物質規制最前線#12

RoHS指令におけるメッキについて

情報発信日:2006-08-31

RoHS指令の解釈

2006年7月1日に発効したRoHS指令には、第7条に「別途定める小委員会(TAC)にて補助される」として、実施における詳細な部分に多くの曖昧な事項があります。しばしば解釈をめぐり議論される問題の一つにメッキがあります。RoHS指令第4条予防には「...電気・電子機器が鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDFを含まない...」と記載されているだけで、規制物質の含有許容濃度である閾値や分析の単位など、具体的な記載はありません。その後のTACにて検討が行われ「機械的に分離出来ない均一材料」を単位として、カドミウムが100ppm以下、鉛、水銀、六価クロム、PBB、PBDEは1,000ppm以下でなければならないと決定されました(2005年8月18日付欧州委員会決定2005/618/EC)。

「機械的な分離」の例としては、Unscrewing(緩める)、Cutting(切断)、Crushing(押し潰し、粉砕)、grinding(研削)、Abrasive process(研磨)が挙げられています。

これから解釈すると、メッキは母材から研磨により削り取ることができますので、機械的分離が可能ということで母材とメッキ層は個々に規制物質の含有を確認する必要が生じます。

ここで問題となるのは「たしかにメッキは母材から研磨などにより剥離することができるが、母材とメッキ層だけをどのように完全に分離し分析するのか」という問題があります。たとえば「RoHS指令の適用除外材料となっている銅合金の青銅CAC407」に「ニッケルクロムメッキを施した部品」があるとします。母材はメッキ前の状態で分析が可能ですが、メッキ層だけを「適用除外であるために鉛を基準値以上に含む母材のCAC407」から、どのように「母材の鉛」を混入させずに剥がしたらよいか? という問題があります。
※説明が下手ですが「母材からメッキ層だけを完全に剥がすのは難しい」ということです。

RoHS指令におけるメッキ部品の適否確認

メッキとは、金属または非金属の表面に金属の薄膜を形成するもので、化学的または電気的な方法で行われます。原理的には種々の金属皮膜を形成することが可能ですが、メッキの目的が装飾や防錆であるため、一般的には金、銀、亜鉛、クロム、ニッケル、銅などの金属が用いられます。

RoHS指令の規制対象になっている金属は、カドミウム、鉛、水銀、六価クロムの4種類だけですので、一見するとクロム系のメッキにだけ注意すればよいように感じますが、実際には鉛やカドミウムなどのRoHS指令の規制対象物質が、メッキ液の安定剤や光沢剤などの目的で添加されている場合があります。たとえば、無電解ニッケルメッキには鉛が含まれる場合が多々ありますし、亜鉛メッキには、クロメート処理とよばれる六価クロムを含む皮膜が仕上げ処理で形成されますので、RoHS指令に対応する場合には無毒な三価クロメート処理に変更する必要があると思われます。

このように、メッキ層に意図的かつ明らかにRoHS指令での規制物質が含まれることが予想される場合には、ガラス板のようにメッキ層だけを剥離させやすい材質に、別途対象メッキを施した後にメッキ層だけを剥離させて分析する手法が取れますので、この方法で確認を行うことが可能となります。

RoHS指令におけるクロム系メッキ部品の適否確認

ここでは、クロム系メッキとは一般に「硬質クロムメッキ、工業クロムメッキ、装飾クロムメッキ、ニッケルクロムメッキ」などとよばれるメッキとします(ただし上述のクロメートは除外します)。

なぜ、クロムメッキだけを他のメッキと分離して考えなければならないのでしょうか? 金属は通常イオン化しますが、クロムの場合にはイオン化せず、純粋な金属クロムの場合には(通常あまり使いませんが)ゼロ価クロム。イオン化すると二価クロム、三価クロム、四価クロム、六価クロムの4つの形態をとります。この中で六価クロムだけが猛毒になりますが、他の形態の場合には毒性はほとんどないという点に注意が必要です。

通常のクロム系メッキは、かなり高濃度の六価クロムを含むメッキ液より形成されますが、メッキ層自体は金属クロムになりますし、六価クロムは水にかなりよく溶けますので、メッキ後の水洗によってメッキ層への六価クロム残留はほとんどないと推定されます。

しかし、一方では「メッキ層の微細クラックにメッキ液が残留する可能性がある」「形状が複雑になるとメッキの不完全部位が生じてその箇所はクロメートになる」「曲がった管のような形状では洗浄水の残留により六価クロム汚染がある」という説もあります。

では、クロム系メッキの場合に適否をどのように判定すればよいのでしょう?

少なくともメッキ層は金属クロムですのでそれ自体は問題なく、多くの企業におけるグリーン調達基準書での解釈でも多少の温度差はありますが、クロム系メッキの使用に対しては肯定的な見解が示されています。

実際に棒状、板状など単純な形状の部品における六価クロムの残留を測定してみると検出限界以下でした。部品形状が複雑な場合で心配があれば、測定は「JIS H8625 電気亜鉛メッキ及び電気カドミウムメッキにある六価クロムの定量法」に基づき、残留量を確認しておくと安心かと思われます。

六価クロムメッキと三価クロムメッキの違い

三価クロメートと六価クロメートは皮膜自体の成分が異なります。しかし、三価クロムメッキと六価クロムメッキは多少の光沢などの違いはありますが、最終的なメッキ皮膜はどちらも同じ金属クロムであり、工程中で六価クロムを含むメッキ液から生まれたか、三価クロムによるメッキ液から生まれたかの違いのみといえます。

参考情報

注意

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