ホーム > 環境について > 環境関連情報 > 有害物質規制最前線#3 国際化学物質管理
情報発信日:2005-11-20
アスベストによる健康被害が社会問題になっていますが、過去においても水俣病における有機水銀、イタイイタイ病のカドミウム、カネミ油症のPCBあるいはダイオキシン、環境ホルモンなどが健康を損ねる有害物質として社会問題になりました。EUでは2006年7月から実施される化学物質規制「RoHS指令」や、既存の化学物質及び今後商業化される化学物質すべての安全性を見直すことを規定する「REACH規則」など、天然及び人工的な化学物質を管理するための規制がますます強化されつつあります。これらは過去のフロンによるオゾン層破壊の問題のように、大気や水、土壌に大量に拡散することによって「直接的または間接的にわれわれ人類に対して健康を害する物質」と判明してからでは手遅れであり、未然に防止することが重要な課題になっています。
現在、世界では約70,000種類の化学物質が商業的に取引され、また、毎年新たに約1,000種類の化学物質が新規に販売されるといわれており、その売上は合計で1兆5,000億US$で世界のGDPの3.75%にも達します。現状、これらの化学物質の漏洩などによる事故や、不十分な管理による環境への拡散によって、世界で毎年数千人もの人々が死亡したり健康を損なったりしています。
今後は、限られた国や地域、限られた産業で実施されている化学物質規制について、世界共通の考え方による統一した化学物質管理の必要性が高まってきています。
このような国際的な化学物質規制の背景の一つに1992年6月の「地球サミット」で採択された「アジェンダ21」があります。「アジェンダ21」は21世紀に向けての国際的な環境保全行動計画で、開発と環境保護を両立させるため、各国がなすべきことをまとめた行動計画(アジェンダ)です。この行動計画には人口問題、砂漠化の防止措置、大気汚染防止など幅広いテーマが全40章115項目にわたり取り決められています。
アジェンダ21のプログラムに従い推進されている「第3回国際化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)準備会合」が、2005年9月19日〜24日まで、オーストリアのウィーンで開催されました。
この会合は、SAICMの最終的な案文を策定するもので、1.ハイレベル宣言、2.包括的政策戦略(SAICMによって各国が達成を望む内容を記述)、3.世界行動計画(各国の自主的な取組みのツールキットとなる)、という三つの文書をとりまとめる重要な会議となりました。SAICMを成功させるために必要な組織や財政に関する合意が焦点の一つとなりました。実際にどのようにSAICMが機能するのかを定める原則、アプローチについても議論が行われました。なお、この条約は過去における「バーゼル条約」(1989年3月、国連環境計画UNEPがスイスのバーゼルで採択した、有害廃棄物の国際移動を規制する条約で、1992年に日本も批准、アスベスト、医療廃棄物、PCB、水銀など47品目を規制)や、特定フロンやハロンなどオゾン層を破壊する物質の生産と消費を規制する「モントリオール議定書」などを包含するものとなったようです。
「国際化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)」の採択は、各国の閣僚が参加して行われる世界環境フォーラムの直前の2006年2月4日〜6日まで、アラブ首長国連邦のドバイで開催される、国連環境計画主催・化学物質管理のための国際会議(ICCM)で、最終的に採択される予定です。