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環境関連情報

生物多様性について

情報発信日:2010-11-26

COP10(生物多様性条約第10回締約国会議;Conference of the Parties)名古屋

2010年10月18日から29日までの間、名古屋において、COP10(生物多様性条約締約国第10回会議)が開催され、条約に加盟している200近い国や地域の代表が1万人規模で集まり、多くの議論がなされました。

「生物多様性」は21世紀において「地球温暖化」と並んで我々が取り組むべき「2大環境問題」と言われていますが、「生物多様性」は「地球温暖化」の問題と比べて、今ひとつその中身や重要性が分かり難いこともあって、「トキやパンダなどの希少動物の絶滅を防ぐ話し」「我々にはあまり関係の無い問題」だと思っている人も多いかと思います。

そもそも本来の「Biodiversity」を「生物多様性」と和訳したため「トキやパンダのこと」と思われがちですが「生物多様性」の生物=Bioとは後述しますが「生物(微生物や原生動物まで含んだ動植物)、生態系、遺伝子」の3つを意味します。

本稿では、生物多様性の意味、その危機とそれを守ることの重要性を述べて行きたいと思います。

生物多様性とは

COP10支援実行委員会のホームページには「生物多様性とは、あらゆる生物種の多さと、それによって成り立っている生態系の豊かさやバランスが保たれている状態を言い、さらに生物が過去から未来へと伝える遺伝子の多様さまでを含めた幅広い概念です。」と書かれています。

また環境省がCOP10で配布した資料「いのちは支え合う 生物多様性国家戦略2010」によると、「生物多様性とは――『個性』と『つながり』、生物多様性条約では生物多様性を『すべての生物の間に違いがあること』と定義しており、3つのレベルでの多様性があるとしています。地球上の生きものは、それぞれ個性を持ち、それらが森から海まで、そして、食う・食われる、花粉を運ぶと言った様々な関係でつながりあっています。人間は、生物多様性がもたらす価値を将来にわたり上手に利用してゆくことが必要です。」と記述されています。

さらに上述した3つのレベルでの多様性とは

今ひとつ、判り難いですね。もう少し、具体例を出して判り易く説明したいと思います。

現在地球上には科学的に明らかにされている生物の種類は176万種あり、未知のものを含めると3,000万種もが生息していると言われています。これを「種の多様性」、すなわち地球上に多くの生物が居ると言うことです。

また地球上には森林、湿地帯、河川、氷河、氷山、高山、海洋、平地、熱帯、寒帯、干潟、サンゴ礁など実に色々な環境があります。全ての生物は約40億年もの進化を経てこれらの環境に順応することによって、色々な種に分化し、進化して来た訳で、これが「生態系の多様性」(生物が生きるために色々な環境がある)も生物多様性の一面と言われています。

また、これら多くの生物は様々な環境に対応するために、長い年月を経て、高温に強い、低温に強い、乾燥に強い、飢餓に強いなど、同じ生物種で有っても住む環境によって身体の形や行動などが個別に進化し、違ったものとなっています。これを「遺伝子の多様性」と言い、例えば北海道に住む鹿と屋久島に住む鹿では「同じ日本の鹿」でも異なると言うことになります。

地球上には、数多くの生物種がそれぞれの環境に適応し、お互いの関係を保ちながら多様な生態系を形成して、私達との生活や環境とのバランスを保って来ました。この様に自然が長い時間を掛けて作りだした多くの生物の生息状態を「生物多様性」と言います。

この生物多様性は南米のアマゾン河流域の熱帯雨林やオーストラリアのグレートバリアリーフなどの大自然の中だけにあるものではなく、東京湾や我々の近所の小川や公園の池にさえも存在するものと言えます。

生物多様性の危機

現在地球上に生息する生物種は確認されているものが176万種、未確認のものを含めると3,000万種と述べましたが、人口の増加や産業の発達により地球の温暖化が進んでいる様に、人類の活動による生物の生息環境が大きく変化したため、最近の調査では毎年3〜4万種の生物が絶滅していると言われています。

過去において、太陽の活動の変化など自然による気候変動などによって多くの恐竜やマンモスなどが絶滅した時期もありましたが、自然の中で淘汰されて絶滅する生物は1,000年に1種類と言われており、現状の生態系の変化が如何に著しいかが判るかと思います。

全ての生物はお互いに影響し合って生きており、バランスが保たれて生態系が形成されています。

確かにパンダやトキなどの希少種が絶滅したからと言って、直ぐに我々の生活に影響は出難いかも知れませんが、生態系は食物連鎖を形成していますし、植物が減れば酸素の供給量も減少します。

例えば、北海道ではエゾオオカミが絶滅しました。その結果、オオカミを天敵としていた鹿の数がどんどん増えています。この結果、樹木や農作物が食い荒らされることになります。この様な現象が多く起きると生態系の大崩壊へと雪崩式に進む危険性があります。最終的には二酸化炭素による温暖化と同様に人類の生存の危機に繋がる可能性があると言うことです。人間の生活はこの地球上の多くの生物との関係において成り立っている訳で、植物が絶滅すれば酸素の供給はストップしてしまいますし、食料の危機も同様に起こります。

COP10の目的と生物多様性の保全

生物多様性の保全の重要性は理解して頂けたかと思いますが、COP10では以下の点についての議論が行われました。

COP10支援実行委員会によりますと
「生物多様性は多くの生物が地球上のそれぞれの環境に順応し進化した結果として多くの生物が存在している訳ですが生命の「自然な進化や絶滅」と言う時間軸の変化も含め概念です。従って、現在の生物多様性をそのまま維持して守って行くと言うよりは、競争や共生など生物同士の自然な相互関係によって、自由に進化し、または絶滅してゆくダイナミズムが確保されてこそ、生物多様性の保全につながる。」
としています。

また、「地域固有の歴史が育んだ生物がそれぞれに相応しい環境で生き続け、健全な生態系が維持する様に、人間の活動自体を自然に調和させることが重要だと言えます」としています。

まとめ

最近、近所の公園の池で「外来種の凶暴で繁殖力の旺盛な魚が増殖している」と言う話しを聞きました。捕鯨の是非が毎回問われています。都会ではカラスが増えて困っていると言われていますが、カラスを駆除したら今度は、ムクドリが増えて来ました。気付いたら、すずめや鳩を以前よりも見かけません。我々の身近なところでも、そう言われると色々な生態系が微妙に変化している気もしますし、長い年月を掛けて進化して来た生物を遺伝子操作によって人工的に改良したりすることの危険性も妙に気に掛る気がします。

環境問題には算数における「1+1=2」と言う様な明快な解決方法が無い場合が多いように思います。何故ならば、我々は「自動車や機械、電気製品などの文明を捨てた、大昔の様な不便な生活」に戻ることなく、より快適な文化的な生活を求め続けつつ、持続可能な社会を作りたいと言う矛盾を抱えているからです。大切なことは、一人一人が英知を出し合い、喧々囂々の議論の中で、より少ないエネルギー、より少ない資源による、より快適な社会をどうすれば作れるのかを考えることでは無いかと思います。

引用・参考資料

注意

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