ホーム > 環境について > 環境関連情報 > EUの組織と法体系(RoHS/WEEE指令の位置づけ)
情報発信日:2004-06-03
最近注目を浴びているRoHS指令、ELV指令、WEEE指令、IPPC指令など、「指令」とよばれる環境関連の法律が、EU(欧州連合)から矢継ぎばやに出されていますが、この「指令」とはどのようにつくられ、どんな拘束力をもつ法律なのか、これを理解するためにはEUの組織も含めて理解する必要があると思われますので、この機会に欧州連合の組織と法体系について解説します。
EUは現在15ケ国の加盟国より構成されていますが、米国の州政府と連邦政府の関係のように、EU自身が司法・立法・行政機関を有し、また統一通貨をもつ、1つの国家的な存在として機能しています。
「欧州委員会」とよばれ、加盟国15ケ国から選出された20名(英、仏、独、伊、西が2名、他の加盟国は1名)により構成され(日本の内閣に該当)、出身国政府から独立し、EU共通の利益のために行動し、指令などを含めた法案の提出と行政執行を行なう機関で、職員は2万人といわれています。
立法機関は「欧州議会」と「欧州理事会」との二階建てになっています。
欧州議会は日本でいう国会に相当し、加盟国から約626名が直接選挙により選出されます。予算や法律の審議を行いますが、特定の事項や法律、重要な政治案件については欧州理事会へ諮問するのみで、最終決定権はありません。
欧州理事会は加盟国の首脳や閣僚により構成され、EUの政治レベルでの最高意志決定機関となります。「規則」「指令」「決定」などのうち特定のものは欧州委員会で提案され、この欧州議会での審議を経て、欧州理事会にて決定されます。
EUにおける法律は、その拘束力の強弱により5つに区分されます。以下、拘束力の強い順に説明します。
Regulationは加盟国に直接適用され、各国の国内法と同一の拘束力をもちます。
Directiveは、Official Journal(官報)掲載後3年以内に、加盟国は新しい国内法の制定、現行の国内法の改正、廃止の手続きを行なうことを求められ、その後に国内法として拘束力が発揮されるものです。
ただし、RoHS指令とWEEE指令とでは、成立の背景となるEC条約の適用条項が異なるために、RoHS指令では国内法が指令の内容以上に厳しくなることはありませんが、WEEE指令では国により指令の内容以上に厳しい法律が制定される可能性があります。
これはEC条約の95条と175条に記載されていますが、RoHS指令は目的が単一市場にあり、共同決定手続きにより理事会の特定多数決定で成立したことから、指令より厳しい国内法は制定できないことになっています。一方、WEEE指令は環境保護そのものが目的であり、共同手続きにより議会の諮問後、理事会の特定多数決で成立したことから、指令より厳しい国内法の制定ができるとされています。
Decisionは、対象範囲を特定(加盟国、企業、個人等)して、具体的な行為の実施、あるいは廃止等を直接的に拘束するものです。
Recommendationは、加盟国、企業、個人等に一定の行為の実施を期待することを欧州委員会が表明するもので、拘束力はありません。
Opinionは特定のテーマについて欧州委員会の意思を表明したもので拘束力はありません。
欧州において廃家電は最も急増している廃棄物の一つです。年間600万t(1人あたり20kg)で毎年5%も増加しています。また、その廃家電の90%は何の前処理もされずに埋立または焼却されています。埋立地における鉛の40%、焼却施設における鉛の50%は廃家電に起因しています。これらがRoHS指令、WEEE指令が発せられた背景です。